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카테고리 없음 2022. 7. 20. 16:34

疲れたサラリーマンが疲れたOLを襲ったら、お互いを満たす関係になりました。





何もかも疲れ果てた先にだって、癒しはある。逃げ場所はある。

もっと癒されて良い、逃げて良い。そして何より、すっきりして良い。





日々の生活で抱えたイライラとムラムラを、この作品で少しでも晴らして頂けたら嬉しいです。





この作品に登場する二人は緩やかに幸せになります。





目次





第1話 憂いと性欲に塗れた帰り道。

第2話 こんなことをするつもりではなかった。

第3話 初対面の人とトイレで交わる。

第4話 襲われた女性の心境。

第5話 待ち焦がれた再会は満員電車の中で。

第6話 電車内でのまぐわいに溺れる。

第7話 会社をサボってショッピングモールで……。

第8話 ショッピングモールの通路で。

第9話 再びトイレで……。

第10話 会社での二人。

第11話 愛の家で……。

第12話 ベッドでだらだらと興じるまぐわい。

第13話 朝までの過ごし方。

第14話 浴室で貪る肢体。

第15話 アナルで繋がる。

第16話 アナルに溺れる。

第17話 先に進むためには。

第18話 愛を陥落させる。

第19話 どろどろに蕩けていく。

第20話 陥落。

第21話 愛し、壊し、慈しみ合う。

最終話 月明かりの下で二人は微笑む。





『第1話 憂いと性欲に塗れた帰り道。』





 瀬口彰浩(せぐちあきひろ)は疲れきっていた。





 頭を埋め尽くすのは、いつも仕事、仕事、仕事。





 録画しておいたアニメを見る余裕さえなく、たまに友人から遊びに誘われても、休日はほとんど事切れたかのように身体が動かないため気晴らしの外出さえままならない。





 終電ぎりぎり、或いは終電をとうに過ぎた時間にタクシーで帰る日々。仕事に溺れて、仕事の夢を見て、また仕事に行く。





 いつからか、仕事中に舌打ちをするようになっていた。性格が温厚な彼は仕事が出来るというタチではないものの、先輩・同期・後輩問わず一定の信頼を得ている。けれど、溢れに溢れた仕事量は彼にしたくもない行為をさせてしまう。





 誰かがミスをしたときに舌打ちをする訳ではない。むしろ同僚と関わるときは彼はいつもの自分を取り戻す。冷静に状況を分析して、きちんと解決策を提示するか、もしくは自分で出来ないことは他の誰に相談すると良いかをきちんと提示する。





 しかし、相談を終えて新たな仕事の指示が書かれたメールが来ると、彼は隠すことも出来ずに舌打ちをする。仕事で従業員を拘束することが大事とでも勘違いしているのか、齢六〇を過ぎた社長は今も現役で働き続けていて、懇意にしている会社から安い報酬で仕事を受け、価値観の違う下の世代に決して定時で終わらない仕事を振り続ける。





 忙しくても未来があるなら頑張れるかもしれないが、ここ数年会社の成績は下がるばかりで、彰浩の給料もほとんど上がっていなかった。そんな状況下でも仕事は増え続け、頼りにしていた先輩や同期・後輩が次々と辞めていく。





 社長は辞めていく社員を見送るときは笑顔でいながら、会社に戻れば「いいか、お前らはあんな腑抜けのようになるなよ」と鬼のような形相で言ってみなを怯えさせ、その直後に笑顔でみんなにコーヒーを振る舞っていた。新入社員はホッとした顔でコーヒーを受け取っていたが、ブラックだったのを見て顔が引き攣っていた。





 あんなのがアメとムチとでも思っているなら、今すぐ中学生からでも人生をやり直せ、この脳筋が――と、彰浩は心の中で毒吐く。コーヒーを配ってプレッシャーだけかけていく余裕があるなら、もっと給与を増やせ、拘束時間を減らせ。だからこの会社に人が残らないんだ……と、彰浩は毒吐き、同期と飲みながら愚痴っていた。





 しかしその同期はいつの間にか転職先を決めていて、彰浩と愚痴を交わした二ヶ月後に会社を辞めた。転職先はそこまで給料は良くないが、ほぼ毎日定時で上がれていると聞いた。ああ、それは天国だな……と思いながら、彰浩は使い古したキーボードを叩き続ける。





 金曜日の夜。





 終電を逃した彰浩は途方に暮れていた。給料の使い道もなく安月給ながらもそれなりに貯金のある彰浩は、いっそその辺の風俗で朝まで遊ぼうか……とも考えた。しかし時折興味と性欲で行く風俗も、本当に疲れているために女性と一緒にいる時間は常に眠気と闘っているような有様だった。





 そのため今の状態で行っては女性に失礼か……と思い、それなら無理やりにでも帰って、明日の朝にでも風俗に行こうかと思い至る。休日とはいえ、朝なら好みの女性を指名できる可能性も上がるかもしれないと淡い期待を抱きながら。





 ふらついて車道に転がらないように注意しながら、彰浩はタクシーを探す。しかしいつもなら駅前に数台は停まっているタクシーがまったくいない。





 時間帯を鑑みるに、仕事終わりに飲んだ人がタクシーを使っているのか……? と彰浩は思い至る。同じように仕事に苦労している人が使っているのだ、文句は言うまい……と、彰浩はふっと息を吐いて笑った。





 誰にも見られることのない柔らかな笑みは、寂しさを膨張させる。大学を卒業する際に彼女と別れてから六年、仕事が恋人などという気は毛頭ないにも関わらず、それどころか仕事に殺されかけている今の状況に彰浩は不意に泣きそうになった。





「……今日は、歩いて帰るかな……」





 普段なるべく言わないようにしている独り言を、このときは自分に言い聞かせるようにして呟いた。





       ×  ×  ×





 五月末の夜風は、寒さを感じる一歩手前の涼しさだった。半袖のワイシャツ姿の彰浩は、疲れと歩きによる火照りのためか風の温度がちょうど良く思えて頬を緩めた。





 歩いて一時間程度の道のりは、普段なら間違っても辿りたくない。間違いなく次の日の仕事に影響が出るからだ。





 しかし明日は土曜日で、起きたら風俗に行こうと決めている。本当に満足がいったことなどほとんど無いが、何かに期待するという感覚が久しく抜け落ちていた彰浩にとっては、妙な高揚感を湧き立たせてくれるありがたい場所であった。





 自宅のアパートまであと五分もすれば着くというときに、ふと公園が目に入る。郊外と呼べるこの辺りにふさわしく中々広い公園で、休日は家族連れでにぎわうことも多い。もっとも彰浩は土日共に寝ていることが多いので、この場所に踏み入れたことも数えるほどしかなかった。





 夜の公園は静かそのものだが、不思議と怖くない。なんとなくトイレに行きたくなった彰浩は、多目的用もあるトイレに足を踏み入れて用を足し、糖分が欲しくなって自販機でココアを買い、ベンチに腰掛けた。





「……ふう……」





 なんとはなしに吐いたため息は、あと少しで家に着くという安心感と、この先何十年にも渡る未来への不安が混ざり合っていた。前者はほんの一時的なもので、後者はずっと付きまとうものだ。





 考えても仕方ないとは分かっていても、彰浩はつい考えてしまう。それでも、いつまでもこんなことを考えていては仕方ないと思い、彰浩はスマホを手に取った。





 明日はどこの風俗に行こうかと考える。自宅に呼ぶのはなんだか恥ずかしいし、かといってホテルにわざわざ行くのも少々値が張る。それならば多少遠出して店舗型の店に行くのが良いか……と思い、隣県の風俗街を漁り始める。





 好みの女性を探して、プレイ内容を調べていると、スラックスのチャックの付いた部分がむくむくと膨らんできた。





 ああ、一番我慢するのが大変なのは、今日寝るときと明日の行きの電車の中かもしれない……などと考えながら、彰浩は少しリラックス出来ていることに気付く。





 随分と現金なもんだな、と自分自身に苦笑していると、疲れがまわってきたのか大きな欠伸をした。誰も見ているわけではないが、手で口を覆う。





 ぐらりと眠気がきて、いよいよこれは帰らないとまずいな――と思って腰を上げようとしたとき。





「……ん?」





 ベンチに座る彰浩の目の前を、一人の女性が通り過ぎた。

 女性は彰浩と同じくらいかそれ以上に疲れた顔をしていた。





 化粧は薄く、目の下のクマを隠しきれていない。しかし彰浩には、目のクマ以上に涙袋の大きさに目がいった。

 髪は肩にかかる程度のセミロングで、街灯に照らされた黒髪は僅かにブラウンが混じっている。





 半袖のワイシャツとタイトスカートに身を包んだ肢体は目に毒なほどぱつぱつに張り詰めていた。太っているとは言えないが、むっちりとした身体は暴力的なほどの魅力がある。





 男が好み、女に嫌われるような、そんな体型。





 よく見ればだいぶ歩いているのか、汗で額に髪が貼り付いていた。

 女性は彰浩の視線に気付いたのか、ふらふらと歩きながら振り返った。





 自身が不審に思われないように、そして男に妙な行動を起こさぬように牽制するような会釈をして、街灯の下から消える。





 次の街灯に映し出された身体はやはり艶めかしく、ワイシャツが背中に貼り付いて、うっすらとブラジャーが透けていた。





「……エロ……っ」





 彰浩は呟いて、反射的に音もなく立ち上がっていた。つい先程まで画像で見ていた女性たちのことを根こそぎ忘れ、数メートル先を行く女性に近付いていく。





 ナンパの経験はなかった。けれど、どうしても今、この女性と関わりを持ちたいと思っていた。

 眠気や深夜の昂揚からか、不思議といつもより気が大きい。こんな夜中に男に話しかけられたら迷惑だろうといつもの彰浩なら思うところだが、このときはそんな風にまるで思わなかった。





『第2話 こんなことをするつもりではなかった。』





 なるべく驚かれないように、そっと声を掛けよう。あまり近すぎるときっと怖がらせてしまう。

 いや、待て。別に近くで話しかけてもいいんじゃないか? きっと良い匂いがするし。





 なんなら肩に手を置いてもいいかもしれない。いいじゃないか、職質をする警官の真似事をすれば。絶対にスベるだろうけれど、それでも少しくらいはコミカルに映るかもしれない。





 彰浩の思考がどんどん歪んでいく。しかし己の思考の変化に彰浩は気付いていない。夥しい疲労と抑圧された欲求に本能が揺り動かされ、彰浩はどんどん女性に近付いていく。





 女性は気付かない。ふらふらと公園の出口に向かっていく。

 彰浩はどんどん近付く。止まることがない。





 よし、まずは肩に手を置いて――と考えながら、気が付けば彰浩は。





「むぐ……っ!?」





――左手で女性の口を塞ぎ、右手で豊満な乳房を揉みしだいていた。





右手のひらに感じる極上の柔らかさと、左手のひらに当てられる柔らかな唇と熱い吐息に陶然とした彰浩だが、ほんの数秒で我に返った。





(お、俺は何をして……こんなの完全に警察沙汰じゃないか! 今すぐ謝らないと……っ!)

「むっ、むぐっ、んぐっ、んんん……っ」





 頭では冷静に思いながらも、女性が弱々しく身体をくねらせる様に彰浩は見惚れてしまい、すぐに手を離せない。女性は本当に疲れ果てているのか、彰浩を振りほどくにはまるで足りない力でしか抵抗してこない。





もう少しだけ……と豊かな乳房の先端を人差し指で押し込むと、彰浩よりも二回りは小さい女性は身体をくにゃりと曲げた。





 もしかしたら相当敏感で、感じているのかもしれない。

 しかしそれも自分に都合の良い妄想だと彰浩はぶんぶんと頭を振る。





(ばか、何をやってるんだ俺は。今すぐやめて……やめないと……)





 理性が最大音量で警鐘を鳴らす中、彰浩の手は女性の身体を蹂躙していく。口を塞いでいた手で上下の唇を割り開き、熱を帯びた口内を弄ぶ。





 首筋に顔をうずめていっぱいに息を吸うと、目がくらむほどの甘い匂いがした。たっぷりとかいた汗がたまらなくいやらしく、スラックスの中の勃起が更に増す。





右手でワイシャツのボタンを三つ開けて、豊満な谷間に手を突っ込む。ブラジャーの中に手を差し入れて柔肉に指を沈めると、指の隙間から肉がこぼれた。





「んん……ふぅっ、んっ、んっく、んふぅぅ……っ」

(……あれ……?)





 彰浩は、女性の反応が徐々に変化していることに気付いた。

初めは当然出来うる限りの抵抗をしていた。口に手を入れるときは指に噛み付かれることも覚悟していた。





 しかし今は悩ましく身体をくねらせるだけで、口から漏れるのもくぐもった喘ぎ声のようなものだけだ。

 彰浩は、女性の口を塞ぐ手をそっと離した。そしてよろめく女性を引っ張り、ほとんど明かりのない林に連れ込む。





 誰からも見えることがない状況を作ると、女性のワイシャツのボタンを全て外し、背中越しに両手で、ブラジャーの上からたわわに実った乳房を揉みしだいた。





「ふ……っ、んっく、うぅ……んうぅぅ……っ」





 女性は口を自分の手で塞いでいた。助けを呼ぶよりも、自分の痴態を見られるということの方が恥ずかしいのかもしれない。彰浩は薄暗がりで喘ぐ女性の艶姿に興奮して、膨らみきったスラックスを女性の尻に押し当てた。二つの巨大な丘の谷間に勃起を押し付けられて、女性は恥ずかしそうに身を捩らせる。





 いいのか……? このまま最後までいっていいのか……?

 降って湧いた僥倖に彰浩が心を震わせていると――女性の声に、泣き声が混じっていることに気が付いた。彰浩は乳房を揉みしだく手を止めて、女性の発する言葉に耳を澄ませた。





「……ひっく、ひっく……なんなの……なんなのよもう……わたし、こんなのばっか……もうやだ……っ」

「…………」





 全てを諦めたような言葉を涙と一緒にぽろぽろとこぼす女性に、彰浩はどうしたものかと悩む。事情は知らないが、この女性は既に身も心もぼろぼろなのは分かる。

 これ以上傷付けるな……と警告する声と、いや、もうこの女性は抵抗してこない、だからめちゃくちゃにしてしまえ……と煽り立てる声が脳内でせめぎ合う。





 彰浩は悩み、その結果――女性を気遣いながら、自分の欲求を果たすことにした。





「……あ……っ?」





 左手を女性の左腋から滑り込ませ、女性の右の乳房を優しく揉み、左肩に顔をうずめ、右手で女性の頭を撫でた。女性の髪は汗をしっとりとかいているもののさらさらで、撫でる度に柔らかい匂いが鼻腔をくすぐる。





「あ……んん……うんん……っ」





 知らない男に襲われているにも関わらず、女性は彰浩を受け入れていた。まるで恋人のような抱きしめかたをされて、なされるがままになっている。

 彰浩は、女性の首筋にちゅっと口付けをした。





「うぁ……っ」





 女性の身体がぴくりと波打つ。艶めかしい反応に気を良くした彰浩は、しっとりとした肌に舌を這わせていく。灯りがないのではっきりとは見えないが、きっとこの首筋も真っ白な処女雪に似た色合いなのだろう。誰も見ていないところで純白を汚していくという背徳感が、彰浩の官能を益々高めていく。





「うっ、あぅっ、はぁぁっ、やぁぁ……っ」





 女性は彰浩の手や舌の動きに、逐一悩ましい反応を見せる。むっちりとした尻肉がぐいぐいと押し付けられて、張り詰めた肉竿はがちがちに勃起していく。





 ああ、もう我慢出来ない――と思った彰浩は、女性から手を離した。突然拘束を解かれた女性が、ゆっくりと振り向き見上げてくる仕草にどきりとしながら、女性の右腋から腕を滑り込ませて右の乳房を揉みしだく。

 甘やかな嬌声を聞きながら、彰浩はゆっくりと歩き出した。乳房を愛撫されながら、女性は酔っ払っているかのようによたよたと歩いていく。彰浩の強引な行動にも、女性は何も言わなかった。





 彰浩の目的地は、先程用を足したトイレだった。迷わず多目的トイレの扉を開く。つい先程男子トイレから出る際、扉の開いていた多目的トイレがかなり広かったのをぼんやりと覚えていた。





 女性を便器にすとんと座らせ、彰浩は女性の顔を見る。

 初めてちゃんとした灯りの中で見る女性の顔は、思っていた以上にたまらなかった。





 失礼を承知で言えば、誰もが羨む美人……というほどではない。

 けれど、「そそる」という表現がしっくりくる、とても扇情的な顔だった。綺麗というよりは可愛い。それも、彰浩にとってはたまらないほど好みだった。





とろんとした垂れ目は愛らしさの塊のようで、快感に蕩けた今の表情は息を呑むほどいやらしい。普段のおっとりとした姿を見ていれば、そのギャップに益々興奮するだろう。左目の下の泣きぼくろがまた色っぽい。





 鼻の形は普通で、特に印象に残るほどではない。けれどその普通さが、今はかえっていやらしい。

 極め付けは唇だった。ぷっくりとした厚めの唇はひどく扇情的で、我を忘れてむしゃぶりつきたくなる。人目を気にしているのかグロスは薄めにしか塗られていないが、控えたところで抑えられる程度の魅力ではなかった。





今、この場所で。

この人を、抱きたい。

彰浩は、強く強く思った。





「……明日、仕事はある?」





 ここまでの行為のこと、或いは自己紹介など、あらゆる段階を飛ばして彰浩は女性に尋ねた。

ぼうっと座っていた女性は、彰浩の目を見てゆっくりと首を振る。





「……ない。何にもない」





 寂し気に呟く女性に、彰浩は苦笑いして「わかった」と答える。しっとりとした髪を撫でると、そっと口付けをした。





「ん……っ」





 女性は何に抵抗もしてこない。それどころか、彰浩の肩に手を添えた。彰浩は女性の耳を撫で、耳の中に指を挿し入れる。同時に唇の割れ目から舌を挿し込み、くちゅくちゅと舌を絡めた。





「ん……ふぅっ、んん……っ」





 女性は彰浩の舌遣いに積極的に応じてくる。思わぬ反応に彰浩は驚きながらも、口内粘膜の交わりを深めていく。唾液を女性の口に流し込むと、こくこくと飲み込む音がした。





 彰浩が口付けを激しくしていけばしていくほど、女性は身体を悩ましくよじらせ、一生懸命に応じてくる。健気だなと感じると同時に、嗜虐心をどんどん刺激されていく。





 口付けをしながら、彰浩は女性の乳房を掴んだ。量感たっぷりの双丘はワイシャツとブラを挟んでも十分な柔らかさが伝わる。谷間に手を差し込むといやらしい温もりが迎えてくれた。





「はぷ……っ、ちゅっ、んふぅぅっ、んっ、んふぅぅ……ちゅるっ、ちゅぴっ、ちゅろろっ、ちゅぷりゅ……んふぅぅ……んふぅぅ……っ」





 女性の仕草は被虐的でありながらも積極的で、彰浩の背中に腕を回し、強く抱きしめてくる。彰浩は腰を屈めて舌を交わらせ、豊満な乳肉を下から掬うように揉みしだく。





 彰浩は、今までの恋人にこんなねちっこい行為をしたことはなかった。本音を言えばねちっこい方がすごく好きなのだが、ちょっとでもその気を出すと今までの恋人たちは軒並み引いてしまっていた。彰浩は生まれてからずっと、粘度の高い行為に憧れていた。





 今までの女性たちに比べて、目の前の女性は彰浩の欲求をどこまでも受け入れていく。飲みきれない唾液は女性の口から漏れでて、二人分がブレンドされた唾液が顎をしたたり、胸の谷間に流れ込んできた。女性は薄目を開けていて、虚ろな目で焦点が合っていない。目の前の行為にただただ溺れていた。





 彰浩は我慢出来ずチャックを下ろそうと思い、一旦唇を離す。すると女性は彰浩の身体をぐいと引っ張り、すぐさま口付けをした。逃がしたくないらしい。彰浩は諦めて、そのままチャックを開けた。スラックスの中でパンツをずらし、猛り切った肉竿をぶるんと外気に晒す。





「……わ……っ」





 女性が彰浩の肉竿を見て、思わず唇を離した。漏れ出た声に彰浩は少し嬉しくなる。





「そのブラって、ホックはどっちに付いてる?」

「? ……前だけど……」





 女性は首を傾げながらも質問に答える。女性の答えに頷いた彰浩が躊躇うことなくワイシャツのボタンを全て開けると、女性は頬を赤らめながらも彰浩のことを見つめ続けた。





 ブラをそっと外すと、量感たっぷりの乳房がぶるんと零れ出た。生身の乳房は想像以上にいやらしい。女性はまだ若いが、あまりのサイズのためか若干垂れ気味で、それが却って生々しく卑猥だ。薄紅色の乳首はぴんと張り詰めていて、溢れ出る興奮の度合いを示していた。





 彰浩はフリルの付いたピンクの下着をじっと見つめ、その内側に徐に鼻を押し当てた。汗と甘い匂いがたっぷりと染み込んだ匂いに陶然としていると、





「……下着、好きなの?」





 引いた様子もなく、女性がそんなことを聞いてきた。





「……いや、こういうのは初めて。君がすごくいやらしいから、つい」





 あけすけな彰浩の言葉に、女性は顔を逸らして「……ふぅん……」と呟いた。セミロングの毛先をくりくりと指でいじり、彰浩をちらちらと見上げてくる。あ、すごく可愛い……と彰浩は思った。





「……それより、ねえ」





 女性はどこか拗ねた表情で呟くと、彰浩に両手を広げた。





「耳、もっと触って? わたし、耳弱いの」





 淡々と告げる女性の言葉が、肉槍の硬度をねじ上げた。





『第3話 初対面の人とトイレで交わる。』





 彰浩は女性の耳に触れた。

 小ぶりで形の良い耳を、やわやわと撫でていく。





「あ、あぁ……っ」





 女性の表情が見る間にとろけていく。半開きにした口からは熱っぽい吐息が漏れ、肉感たっぷりの身体が小刻みに震える。





「う……っ?」





 女性の手が肉竿にそっと触れた。女性は彰浩の目をじっと見つめたまま、青筋立った肉棒を愛おしそうに撫でさする。





「耳、もっと……お願い、舐めて、いっぱい舐めて……」





 女性の声が蠱惑的になり、疲れと興奮で掠れた声でおねだりしてくる。彰浩は返事もせずに女性の顔を横向きにして、左耳にむしゃぶりついた。耳たぶを唇で挟んでしごき、小さな耳穴を固めた舌で穿つ。





「お……あぁ……ひっ、あぁぁ……っ」





 動物的な声を漏らし、艶めかしい肢体が打ち震える。女性という生き物はこんなにも卑猥なのかと彰浩は驚きながら、夢中で耳をしゃぶる。外気に晒された豊満な乳房を両手で下から支えるように揉みしだく。やわやわと揉み、乳肉全体を揺らし、乳頭をつまむ。





「あ、あっ、うくっ、ひっ、あぁぁぁ……っ」





 涙声になった女性が、身体を断続的に波打たせる。





「足、開いて」





 彰浩の言葉に、女性は戸惑いながらも従う。便座の上で女性がぱっくりと足を開くと、タイトスカートからフリルの付いたピンクのショーツが現れた。乳肉に指を沈めながら、いやらしい下着を身につけた下半身を見つめ、今度は女性の右耳をたっぷりと舐る。





「あ、おぉぉ……き、気持ち、いい……っ」





 女性の焦点が合わなくなり、恍惚とした表情で遠慮なく気持ちを晒す。愛撫を重ねるたびに女性から恥じらいや遠慮がなくなっていくのを彰浩は感じ取り、益々興奮していく。





「どこが気持ちいい?」





 問いかけながら、女性の耳にふっと息を吹きかける。「ひぐ……っ」と可愛らしい声を上げて身体を震わせると、女性は快楽と羞恥に染まった顔を彰浩に向けた。





「……み、耳も……胸も……すごく気持ちいい。わたし、こんなにいやらしく触られたことないから……」

「……今まで君が相手してた男は、どれだけつまらなかったんだろうな」

「……本当にそうかも……んむっ!? ふっ、んっ、んふぅぅっ、んちゅるる、れる、れろっ、んふぁぁ……っ」





 乳頭を引っ張られながら唇を奪われても、女性はとろんと蕩けた瞳で口内粘膜の交わりに応じる。彰浩も、女性も、言葉にはせずとも、共通の認識を持ち始めていた。





――この人、すごく良い……っ。





 自分のねちっこい欲望に際限なく応えてくれて、その上自分も驚くような反応を見せる女性に彰浩は興奮した。

 彰浩は上を向いて自分の唇を貪る女性の喉にたっぷりと唾液を流し込みながら、猛った肉竿を豊満な柔肉の谷間に押しつけた。双丘を両側から押さえつけ、疑似性器と貸した肉谷に自らの欲望をうずめていく。





「んふぅぅ……ちゅぱっ、はぁぁぁ……すごい、熱い……それに硬くて……んはぁぁ……んむっ、ふぅぅ……っ」





 女性の表情は益々とろけて、喜悦に染まりきっている。ゆっくりと肉丘への抽送を繰り返す彰浩の手に自分の手を重ね、肉竿へ柔らかい圧をかけながら、自分の柔乳をこねくり回していく。





 彰浩は自分で乳鞠を揉むだけでは単調な動きと快感しかなかったが、女性の手により上下左右に自在に乳肉が動き、様々な方向から肉竿を締めつけられて、たまらない気持ち良さに腰をがくつかせた。





 ずちゅっ、にちゅっ、じゅぷっ。





 まるで性交をしているようないやらしい水音が、多目的トイレの中に響きわたる。がちがちに勃起した肉竿をすっぽり包みこむほどの豊満な乳肉の中では、鈴口からこぼれ出した先走りの汁と、女性の顎から垂れ落ちる二人分の唾液がたっぷりと混ざり合っていた。





「んむっ、んん……うっ、うっ、くぅっ、うぁ……っ」





 彰浩が唇を離して快感に呻くと、女性は嬉しそうに目を細めた。





 二人の手が重なったまま、彰浩は女性の胸を犯す。張りのあるとは言いがたい乳房は、その柔らかさがかえって暴力的なまでの快感を生み出す。





 挿入すれば亀頭をまんべんなく牝肉が締め付けて、肉棒を抜けばすぐさま隙間を埋めようと乳肉が元の形に戻る。そこをまたかき分けて挿入して、ぐちゅぐちゅといやらしい水音を立てる。一心不乱に繰り返す行為は、目も眩むほど気持ちが良い。





「……ぷはっ、……もう、出る、出る……っ」





 口を離して彰浩が切実な声音で言うと、女性は穏やかに目を細めて頷いた。





 ずちゅっ、にゅちっ、じゅくっ。

 じゅぐっ、じゅぼっ、じゅぶりゅっ。

 じゅっぐじゅっにぢゅっぶじゅっじゅぶぶ……っ。





 乳肉の谷間を犯しながら、餌をねだる雛鳥のように顔を上げて物欲しそうにする女性の唇を味わう。彰浩は、ほんの数十分前までは想像も出来なかったような卑猥で幸せな行為に心を震わせながら――下半身を決壊させた。





「んぐ……っ!」





――びゅるっ、びゅぶぶぶりゅっ、びゅぶぶっ、ぶびゅるるる……っ。





「んふぅぅんっ!? んっ、ふぅっ、んんん……っ!」





 肉竿が大きくどくんと脈打って、豊かな谷間に鉄砲水のごとき白濁流をぶちまける。女性は射精の勢いに驚きながらも、連続して脈打つ肉竿を乳鞠でしごき続けた。彰浩は女性の手の動きになされるがままに、立っていられなくなる直前まで射精し続けた。





 ようやく脈動を終えた肉竿が、肉穴から引き抜かれる。汗と唾液と精液が混じった糸が亀頭と乳房の間にてろりと伸びた。





「……ぷはっ、すご……っ、こんなに出されたことない……っ」

「……俺も、こんなに出したの初めてだ……っ」





 お互いに興奮で息を荒げる。お互いに顔は上気していて、息を荒げていた。放心状態の彰浩をよそに、女性は白濁にまみれた両の乳房を下からすくい上げると――まるで犬が水を飲むかのように、ゆっくりと舐め始めた。





「んっ、ちゅるっ、んふぅん……っ、うんん……っ、やらしい味する……っ」

「……っ」





 目の前で繰り広げられる痴態に、彰浩はごくりと息を飲む。豊満な乳肉が持ち上げられると小さな池が出来て、それを女性は一滴残らず舐めとっていく。細い喉がこくりと鳴るたびに、肉竿は官能の波により再び硬度を取り戻していく。舐めとられなかった白濁は、女性のへそを伝い黒のタイトスカートを汚した。





 舐められるかぎりの白濁を舐めとった女性が、顔を上気させて彰浩を見上げる。顔の目の前には再び勃起した肉竿がいきり立っていて、女性の鼻が小さくすんすんと鳴るたびに恍惚とした表情を見せた。





 数十分前までは完全な初対面で、未だに互いの名前さえ知らない。

 なのに、唇を重ね、互いの身体をまさぐり、射精をする・されるの関係にまで至っている。

 それでもなお、ここで終わるという気配は微塵も無かった。





 彰浩が女性の腋に手を差し込み、ひょいと持ち上げる。女性は「きゃ……っ」と可愛らしい声を上げて、頬を赤らめた。彰浩が女性を横によけて便座に座る。





 彰浩が座り、女性は彰浩に向かい合う形をとる。彰浩が何も言わずとも、女性はスカートとぐっしょり濡れたショーツを脱ぎ捨て、足を淫らに広げた。彰浩の首に腕をまわし、淫猥に濡れそぼった膣口を亀頭にぴとりと当てて、至近距離で見つめ合った。





「……俺、瀬口彰浩っていうんだ。君は?」

「……愛(あい)、豊瀬(とよせ)愛」

「ん、可愛い名前だね」

「……ありがと」





 取ってつけたような自己紹介と雑談を交わして、愛がゆっくりと腰を沈めていく。薄桃色をした襞が肉槍に押し広げられ、ゆっくりと飲み込んでいく。





「あ……あぁぁぁ……んはぁぁ……っ」





 深く息を吐きながら、ゆっくりと、決して止まることなく腰が下りてゆく。愛の膣内は何十何百もの襞が蠢いて肉竿をしゃぶってくる。ざわざわと肉竿を撫でられて、彰浩はまるで風の強い夜の森の中にいるような気持ちになった。





 怖いくらいに気持ち良い。

 気持ち良いくらいに怖い。

 正と負の感情が入り混じり、得体の知れない興奮に彰浩の歯の根が小さく鳴った。





「あ……っ」





 愛の尻が彰浩の太ももにぴたりとくっつくと、肉槍の先端が子宮口にぐりっと押しつけられた。愛が小さく呻いた瞬間、





「――あぁぁあぁぁぁっ!!」





彰浩の目の前で愛がおとがいを反らし、白い喉を見せつけて全身を痙攣させた。





「うぐ……っ!?」





 挿入しただけで激しく絶頂した愛は、強烈すぎる力をもって肉竿を締め付けた。射精しないように耐えていた彰浩の下半身をいともたやすく決壊させ、子宮口に押しつけられた肉槍の先端から先ほど以上の濃度を持った白濁が噴き出す。





「あふあぁぁぁっ!? あつっ、あっ、うあぁっ! ひっ、うぐっ、あふぁぁぁぁ……っ」





 身体の最奥に射精されたことにより、愛の身体には更に深い絶頂が刻まれ、射精の脈動を繰り返している肉棒をぎちぎちと締め付ける。彰浩は愛同様におとがいを上げて、気絶しそうなほどの快感に打ち震えた。





 ようやく二人の絶頂が収まり、トイレの中には男と女の荒い呼吸音だけが静かに響く。





「……どうしよう、気持ち良すぎて腰抜けちゃった」

「……はは、俺もそんな感じ」





 二人は力ない笑みを浮かべてお互いを見つめる。牡の性器と牝の性器は、笑い合っている今も静かに互いを貪っていた。





「……あんまり動かなくていいからさ、もうちょっと続けていい?」

「……ん、いいよ。腰、上げることは出来ないけど、前後させるくらいなら……」





 愛が言うと、彰浩の肩に手を添えて、ゆっくりと腰を前後にスライドさせ始めた。ずちゅ、にちゅ……っといやらしい結合音が鳴り響き、たまらない快感に彰浩は震える。





「う……わ……これ、すげえいい……っ」

「そう……? よかった、でもこれ、わたしまたすぐイっちゃ……うぁぁぁぁ……っ」





 彰浩がぶるりと震えて、愛の子宮に大量の精子を叩きつける。鉄砲水のごとく噴き出す白濁に、愛は目を瞬かせて絶頂に達した。





「はぁ、はぁ……ごめん、まだ収まんない。こんなの初めてだ……っ」

「は、すご……う、んんっ!? やんっ、まだするの……? あ、うっ、んっく、ふぅっ、んふぁぁぁ……っ」





 彰浩が甘えるように愛を強く抱きしめ、愛も可愛らしい声を漏らして彰浩の欲求に応じる。結合部からは牡と牝の性液が大量に溢れ出ているが、二人の行為はまだまだ終わらない。





 ――この後。彰浩と愛は、明け方まで夥しい量の精液と愛液を交わらせながら過ごした。





『第4話 襲われた女性の心境。』





 明け方まで狂ったように交わった二人は、立つのもやっとの有様だった。仕事の疲れと性交による疲れで肉体的にはくたくたになっていたものの、二人ともすっきりした顔つきになっていた。





「連絡先……交換してもいい?」





 着衣を整えた彰浩が、少し弱気な口調で愛に問いかけた。スカートにたっぷりと付着した精液と愛液を拭った愛が、大人びた笑みを浮かべる。





「どうしたのよ、そんな弱気で。急に冷静になっちゃった?」

「いや、まあ……ヤってるときも思ってたけど、君ってほんと可愛いなって思って。今日だけで終わりたくないって思ったんだけど……いざ言おうとしたら、急にビビっちゃってね」





 頬を掻きながら顔を逸らす彰浩に対して、愛は悪戯っぽい笑みを浮かべて軽く口づけをした。





「もう、今さら気にしなくていいでしょ? あなた、わたしの中何回に出したと思ってるの?」

「う……いや、その、そういうのとはまた別腹っていうか……そもそも、俺は訴えられてもおかしくないことをしてたわけだしね。気後れしちゃうっていうか」

「はあ……もう」





 愛はため息を吐いて視線を下ろす。彰浩が履いているスラックスのチャック部分を見つめると、仄かに頬を赤らめた。





「あれだけわたしのことをめちゃくちゃにしたんだから、もっと自信持ってよね。……そういえば、彰浩くんっていくつ?」

「ああ……精進するよ。ん、歳? 二八だけど」

「あ、同い年なんだ」

「え、そうなの? なんか嬉しいな」





 他愛もない共通点に、彰浩は屈託のない笑みを浮かべる。愛はぱちくりと目を瞬かせて、ふいと顔を逸らした。





「……連絡先、LINEでいい?」





 顔を逸らしたままの愛が、彰浩にスマホを突き出す。子どもっぽい仕草に彰浩はくすりと笑みを浮かべると、自分のスマホを取り出した。





「ん、ありがと」





 彰浩が礼を言い、IDを交換する。





「……次、いつ会えるかな。正直、明日どころか今日にでもまたしたいんだけど」





 彰浩の言葉に、愛は目を見開く。目を泳がせ、少し厚めの唇を震わせた。





「……そ、そんなにストレートに言われると思わなかった……。わ、わたしもエッチは好きだから、頻繁にするのは構わないっていうか大歓迎なんだけど……なに、もうしたいの?」





 愛の問いに対して、彰浩は愛の手首を掴み、自分の股間に触れさせた。いつの間にか張りつめていた肉竿に触れて、愛の顔が一気に紅潮する。





「う、うそ……っ」

「帰る前にもう二、三回しない?」

「あ、やぁ……っ」





 彰浩が熱のこもった声音で囁きながら、愛に己の欲望をまさぐらせる。愛は顔を逸らしながらも、張りつめた肉棒から指と目を離せないでいた。





「だ、だめ、これ以上は……っ」

「なんで? 愛さんだってハマってたでしょ? しようよ、ぐちょぐちょにしてあげるから」

「ち、ちがうの、今これ以上しちゃったら、わたし、普通の生活に戻れなくなりそうで……だから、土日は休ませて? お願い。わたしもしたいんだけど……」

「……そっか。ごめん、強引すぎたね」





 愛の言葉に、彰浩はしゅんとした様子で手を離した。愛は張りつめたスラックスにごくりと喉を鳴らしながら、「ううん、いいの。こっちこそごめんね」と言葉を返した。

 二人でトイレを出ると、寝不足の身体に柔らかな五月の日差しが染み入った。





「それじゃ、次いつ会うかはで後で連絡とって決めようか」

「え? いいけど……別に、今決めてもいいよ?」





 愛の言葉に、彰浩は苦笑いを浮かべて愛の手をきゅっと握った。





「……今は、これ以上愛さんと話してると犯したくなるなって思って。現に今も、もう一回トイレに連れ込んでめちゃくちゃにしたいくらいだから」

「……っ」





 言いながら指を絡めてくる彰浩に、愛はごくりと喉を鳴らした。





「……そっか。……わたしも、そんなことされたら抵抗せずにのっちゃいそうだな。じゃ、今日はもう解散しよっか」

「うん、そうしよう。……じゃあ、また」

「……なあに、この手は?」

「……ごめん、つい」





 彰浩が愛を後ろから抱きしめ、腋の下に腕を回して胸を揉んでいた。愛はお姉さんのような口調で愛を窘めるが、下着を脱いだ状態でワイシャツ越しに乳頭を責められ膝が笑う。

 内ももを伝ってヒールまで愛液が伝ったところで、「もう、誰かに見られちゃうでしょ」と、子どものようにはしゃぎながら身体を離した。





「……もう、エッチ」

「ごめんごめん。……じゃあ、帰って一回寝たら連絡するね。おやすみ」

「ん、わかった。楽しみにしてる。おやすみ」





 そう言って、二人は別れた。





       ×  ×  ×





「……はあ、すごいことしちゃったな……」





 さして新しくもないマンションの三階にある自室に帰ると、愛は小さな声で呟いた。独り言は極力避けるようにしているが、それでもこれは別物……と思って呟いた言葉だった。





 豊瀬愛は疲れきっていた。





 事務仕事をしている愛は、今の会社に入ってから一年半ほどになる。仕事をそれなりの要領でこなし、ごくごく無難に生きていた……つもりだった。





 けれど、仕事場に独身男性が多くいることもあり、女性同士の嫉妬ややっかみが絶えない場所であることが災いして、愛は終わることのない軋轢に巻き込まれることになった。





 他の職員への気遣いのつもりで、立場や性別関係なくみんなが疲れているであろうタイミングでお茶を出すと、同年代以上の女性陣に「またあの人に媚びを売ってる」「恥ずかしくないのかな」などと毎日囁かれる。





 今の職場に来る前に彼氏と別れて、しばらく恋愛はいいやと思っているにも関わらず男性社員から頻繁に声をかけられ、最初からばっさり断るのも気が引けて一度食事に行けば「どうやればあんな風に男を釣れるのかしらね」「あのいやらしい身体つきでアピールしてるんじゃない?」とわざわざ聞こえる場所で陰口を言われる。





 かといって男性の誘いを断ればすぐ噂になり「何を偉そうに」「男なんてよりどりみどりとでも思ってるんでしょうね」と罵られる。





 お局様のような立ち位置にいる独身四〇代女性の先輩からは常に仕事で小言を言われ、定時で上がっても無理やり安い居酒屋に連れていかれ、自分への説教という名の罵詈雑言を延々と聞かされる。





 何を言っても、何をやっても、全てが愛の望む方向とは逆になってしまう。気を遣えば遣った分だけ、気を遣わなければ遣わなかった分だけ、憎悪にも似た感情の刃が愛の柔肌に突き刺さる。





 悪意のある視線というものは、自分の心と身体を蝕むものだと愛は知っていた。





 高校までは女子高で、女性同士のギスギスというものはあれど、ここまで追い詰められることはなかった。大学に入って初めて「あ、自分は男の人の目に留まりやすいのか」と気付いた瞬間を今でも覚えている。





 入学式で知り合った友達と適当に選んで行ったサークルの新歓では、隣にいる友達を差し置いてサークルの先輩たちがこぞって愛に話しかけていた。





 服の上からでもはっきりと分かる胸の膨らみに、見た目だけ成長したケダモノたちはこぞって愛に面白くもない話を振り、その間中艶めかしい身体を視線で舐り、犯し続けた。





 サークルの女性の先輩からは敵意のこもった目で見られ、隣にいた友達はいつの間にかいなくなっていた。そのサークルに入ることはなく、初めて出来た友達も友達ではなくなってしまった。





 彼氏が出来たこともあったが、みんな初めは愛の身体に釣られたわけではなく、あくまで内面に惹かれたといってアプローチをしてきた。男を見る目が育っていなかった愛はその言葉を真に受け、多少の時間を経てから付き合うようになった。





 けれどいざ裸になれば、みんな気遣いの欠片もないケダモノと化した。愛は感度が良かったが、それが却って災いした。男は乳房や膣口への愛撫で愛がかなり反応していることを良いことに、己の逸物で愛を好き放題犯した。





 何の遠慮もなく己の大事な場所を食い荒らされて、愛はどの男とのどの行為の時も泣いていた。それを男は、いつだって「俺はこいつを泣かせるほど感じさせることが出来る」と勘違いしていた。





 愛が男と付き合う時間は、そのほとんどがプラトニックな関係で、肉体関係を結んでからの時間は至極短かった。





 愛が別れを切り出すと、男は決まって「え、なんで? あんなに気持ち良さそうにしてたじゃん」と引きつった笑みと共に捲し立てて、最後は「このビッチが」と吐き捨てていた。

 別れた男は決まって愛との連絡を絶ち、コミュニティが一緒のときは愛と会っても無視し続けた。





 就職しても、みんな社会人の皮をかぶっているだけで、男は犯したい女に勃起しながら近付くだけのケダモノで、女は嫉妬の感情を撒き散らかす壊れた空気清浄器のようなものだと思うようになった。





 つらい、つらい、つらい。





 仕事場でも、プライベートでも、愛に居場所はなかった。

 高校の友達はみんな幸せな結婚や同棲生活を送っていて、眩しいくらいの光を放っていた。きっと相談にも乗ってくれるだろうとは思う。





 けれど、まるで光を厭う蛾のように、愛は友人との連絡を絶っていた。今の自分を、いつ壊れてもおかしくない自分を、柔らかな光を纏った彼女たちに見られたくなかった。





 きっとわたしは、このまま何の幸せも掴めないまま年老いていくんだ――

 愛は、この先何十年とある人生を、絶望と共に俯瞰していた。





 ……でも……。

 愛は、ベッドに飛び込んで寝転がり、己の唇をそっと撫で、それから己の豊満な乳房にそっと触れた。





「ん……っ」





 まだ、余韻が残っている。彼の指の熱を、はっきりと覚えている。





 ――あの人は、彰浩くんは、違った。

 愛はそう確信していた。





 お局様に終電さえ無視して散々嫌味な言葉を浴びせかけられて、瀕死の状態で歩いて帰っていたとき――愛は、ベンチに座るサラリーマンを見つけた。





 深夜に一人で外を出歩いているという恐怖もあり、愛は軽く会釈をして彰浩の顔をちらりと見た。自分と同じく、終電を逃した人だろうか。年は同じくらいのようだが、疲れているせいか実年齢よりも上に見えた気がした。それはわたしも同じか……と、愛は再び前を向いたときに自虐的な笑みを浮かべた。





 あとちょっとで家に着く――と思った瞬間、愛は口を塞がれると同時に、胸を思い切り揉まれた。

 初めは驚愕。

 次は混乱。

 そして、恐怖。

 その後に湧いたのは――突然襲われたという状況にも関わらず、激しく反応してしまう己への嫌悪感。





 気が付けば、泣いていた。

 もうやだ、と自分が口にしたことに、愛は衝撃を受けていた。

 それは、独り言として発することはあっても、誰にも漏らすことが出来なかった言葉だから。

 自分を襲っている――言ってしまえば犯罪者に対して、そんな言葉を、独り言だとしても漏らしてしまったのだ。





 愛は、ますます死にたくなった。消えたくなった。

 どうせこんな言葉を言ったところで、男の手が止まることはないだろう。助けを求めて大声を出すことはしないと判断して、もっと手荒に扱われるかもしれない。





 そんな絶望に打ちひしがれていたが、男の行動はちょっと違っていた。

 行為をやめた訳ではない。手を離して土下座で謝ってきた訳でもない。

 自分の身体をまさぐる行為を――やめた訳でもない。





 けれど、愛がはっきりと分かるくらいに、男は気遣いを見せた。技量に優れている訳ではないが、愛の頭を撫で、乳房に触れ、キスをする、一つ一つの仕草が……とても優しい。





 初対面の自分に対して、真夜中にいきなり襲い掛かってきた人。

 なのに、愛は男に身体を許した。

 自暴自棄とも少し違う。確かな安らぎを感じていた。





 気が付けば、愛は男とキスで舌を絡め、特に敏感な部位が耳であることを打ち明け、男の性器を乳房で挟み、あまつさえ噴き出した精液を舐め取った。





 今までフェラチオをすることはあっても、精液を飲んだことなどなかった。なのに男の精液は、美味いとは思わなかったもののひどく興奮して、いくらでも舐めたくなった。





 そして、繋がった。





 性行為自体により身体的な疲れは溜まるが、その何倍、何十倍もの勢いで精神的な疲れが消し飛んだ。

 今までの恋人と行為に及んでいるときに、そんな感覚に陥ったことは一度としてなかった。





 公園のトイレという特殊な場所でいきなり交わっているにも関わらず、まるで理想の恋人に自宅のベッドで抱かれているような安心感を抱いていた。





「……あー、今度はフェラもしてあげよう。可愛い反応してくれそうだな」





 口の中に指を突っ込み、にゅぷにゅぷと抽送して、愛は熱っぽい声で呟いた。

 出来るなら、このままどちらかの家に行って、土日を丸々使ってぐちょぐちょになりたかった。





 けれど、そんなことをしたらきっと狂ってしまう。心身ともに幸せ慣れしていない自分の生活が、いとも簡単に崩れ落ちてしまう。だから彰浩の誘いを泣く泣く断った。





「……次、いつ会えるかな……」





 仰向けになって淫裂に這わせた指をくちゅくちゅと言わせながら愛は呟く。この独り言も、まだ顔を一度しか見ていなくて、早くも記憶の中で薄れてきている男に届けたかった。





「あっ、うぁっ、んくぅ……ふぅぅ……あぁぁぁっ!」





 淫蜜に溢れた割れ目に沈めた指で膣内を抉ると、愛の身体に甘い痺れが駆け抜け、仰向けの身体がびくりと反り返った。ベッドの上にいやらしい牝の匂いと荒げた吐息の音が満ちる。

 しばらく絶頂の余韻に浸った後、愛はシャワーを浴びるためによろりと立ち上がった。





 土日に会わないとは言ったものの、彰浩は出会ったときの様子を見るにかなり忙しそうだ。下手をすれば一週間後まで待たないといけないかもしれない。その時間は楽しみであると同時に、たまらない苦痛でもあった。





「……あ……っ」





 シャワーを浴び、リビングに戻って着替えを済ませると、LINEに着信があった。何年ぶりか分からないくらいにどきどきしながらスマホを覗くと、彰浩からメッセージが届いていた。





『愛さん。出勤するときに使ってる路線と時間を教えて。それで月曜日の朝に、どの車両に乗るか教えてほしい』

『いいけど、何するの?』

『それはお楽しみ、ってことで。やってみてドン引きするようだったらすぐ謝るよ』

『なにそれ。とりあえず楽しみにしてる。電車のこと伝えるのはちょっと寝てからでいい? 眠くて眠くて』

『ありがと、それで大丈夫。それじゃおやすみ』

『おやすみ』





 彰浩の提案が一体何のか分からないまま、ほんの一分程度のやりとりを終える。

 スマホをローテーブルに置いた愛は、ふと姿見に映る自分の顔を見た。

 笑ってしまうくらい、頬が緩んでいた。





「ああ、そっか。わたし……」





――豊瀬愛は、不意に自覚した。

 今、自分は、恋をしている。

 歪な形で出会った彼を、心の底から求めているのだと。





『第5話 待ち焦がれた再会は満員電車の中で。』





 翌週の月曜日。





 愛は、人と人がごった返す駅のホームにいた。クールビズの期間に入り多くの人はジャケットを脱いでいて、一見とても爽やかに見える。しかし顔を見れば大抵の人が、また新たに始まる憂鬱な一週間を思って世を儚んだような顔をしている。





「……はぁ」





 男女問わず鬱々とした人たちの中、愛も同じように浅くて少し長めのため息をついた。

 また同僚の悪意ある視線に耐えなければならないのか、これはいつまで続くのか――諦めたくはないが、いっそ何もかも諦めた方が早いのかもしれない。





 ……でも、どうしたら良いんだろうなぁ……。





今の愛にとっては、諦めるというのも何を指し示すか分かっていなかった。ただただ、目の前の状況に困惑し、疲れきっていた。土日の二日間はたっぷりと寝たにも関わらず、会社に行くと思っただけで心身が悲鳴を上げる。





「……誰か……」





 助けてくれないかな――と呟きかけて、愛は緩く首を振って、少し悲しそうに笑った。

 そんなことを言っても、何も変わらないのだ。





 また、救いのない日々が始まる。そしてほんの僅かな隙間のような休日は、次にやって来る平日への不安で押し潰されてしまう。

 もうやだ……と絶望の言葉が口から漏れかけたところで、バッグの中にあるスマホが震えた。





『今どこ?』

「あ……っ」





 メッセージの送り主は彰浩だった。何の味気も無い四文字の言葉が、今の愛にはこの上ない救いに思える。





 土曜日は夕方まで寝た後、トークアプリで自分が普段どの駅でどこ行きの路線で何時に乗り込んでいるかの話をして、その後は寝るまで気ままな会話をしていた。





 どちらから始まったとも分からない会話は日曜日にまで持ち込まれ、日曜日の夜は電話をした。早くも記憶が薄れかけていた彰浩の声は、覚えていたものよりも少し温かかった。それが愛にとっては無性に嬉しかった。





 愛が彰浩に返信をしたところで、電車がホームに着いた。入口の脇に避けて、無気力な人の奔流を見届ける。電車に乗る直前にスマホの画面を見ると、「わかった」とだけ返信が来ていた。





 何をするんだろう……?





 彰浩と連絡を取り合っている間も、愛は彰浩が月曜朝に何をするつもりなのかを何度も尋ねていた。しかし彰浩はするりと質問を躱して、さっさと次の話題に移っていた。焦れったいとは思ったが、サプライズを隠されているような気持ちになって、愛はちょっとだけワクワクしていた。





 電車に乗り込み、すし詰めになった車内に蓋をするようにドアが閉まる。

 いつもなら、自分を地獄に運ぶ魔列車のように思える場所が。

 今の愛にとっては、夢の国へ連れていってくれる馬車のように思えた。





       ×  ×  ×





 一定のリズムで車内が揺れ、時間感覚が薄まった頃に扉が開く。人波が流れ出てまた同じような人波が雪崩れ込んでくるのを二回眺めた頃、愛は少しだけ焦っていた。





(……彰浩くん、まだかな……)





 愛が電車に乗っている時間はかなり長いが、それでも焦るものは焦る。先週の金曜日は終電で途中の駅で降りざるを得なくなったが、愛の通勤は一時間半に及ぶ。その間中ずっと待ち焦がれているのはかなりきつい。

 三駅目で人が入れ替わり、車内の密度が一層増したところで――望まぬ変化が不意に訪れた。





(やだ……うそ……っ)





 愛の豊満な尻を包むタイトスカートに、手の甲らしきものが当たっている。一度や二度程度なら偶然で済まされるかもしれないが、電車の揺れに合わせて触れていたものが徐々に揺れに関係無く触れるようになってきて、指の背も触れてくる。





(やだ、やだ、怖い……っ)





 愛は過去に痴漢をされた経験はあったが、大抵は次の駅ですぐ逃げ出していた。しかし次の駅は愛がいる位置とは逆のドアが開く上に、今よりも更に混み合うと分かっている場所だった。





 迂闊に出ても次の電車に乗れるかも分からず、そんなことをすれば会社に遅刻しかねない。もし遅れようものなら、いくら釈明をしたところで散々罵られるのは目に見えていた。





 痴漢の手は徐々に動き始めて、今度は手のひらで尻をさすりだした。





(やだ、やだ、やだ……っ)





 愛は吊り革を握る手に力を込めて、唇を真一文字に引き結んで俯く。きつく瞑った目には涙が滲んでいた。





(なんでわたしがこんな目に……あれ?)





 楽しみにしていた時間が地獄に変わって途方に暮れていると――不意に、尻をまさぐる手が離れた。





「愛さん、おはよう」

「~~~~っ!?」





 思わず悲鳴を上げそうになった。

 振り返ると、背後にいたのは彰浩だった。先週は着ていなかったはずのジャケットを片手に持っている。





「……趣味悪い」

「……ほめん(ごめん)」





 愛が怪訝に目を細めて、彰浩の頬をつねる。手を離すと、彰浩は気まずそうに頬をさすった。





「驚かせようと思ったんだけど……最初から声をかければ良かったね」

「当たり前でしょう、もう……それで、何をする気なの?」

「ん、今の続き」

「え?」

「だから、今の続き」

「……え?」





 彰浩の言葉に、愛は固まった。





       ×  ×  ×





 混乱する愛をよそに、彰浩は淡々とジャケットを愛の腰に巻き始めた。腰骨の上で結んで、タイトスカートをすっぽりと覆うようにする。





「愛さん、会社にはちょっと遅刻しよう」

「え、何言って……っ」

「きついだけでしょ? だから、気持ち良いことをして、それでスッキリしてから行こうよ。どう?」

「……っ」





 彰浩の提案は唐突にしか思えなかったし、大抵の人なら何を言ってるんだこいつはと一蹴するような話だった。

 けれど、愛は。





「……ん、まあ、良いんじゃない……?」





 少し震えた声で、彰浩の提案を受け入れた。

 それがどれだけ滑稽なことかは分かっていても、あの夜に味わった快感を思い出すと、身体の中が焼け焦げるような幸福感が満ちていく。

 今の愛には彰浩の誘いを断るほどの気力も倫理観も残っていなかった。





       ×  ×  ×





 彰浩の右手が、愛の腰に巻かれたジャケットを捲り内部へと侵入してくる。





「ん……っ」





 先程と同じように、タイトスカート越しに豊満な臀部がまさぐられる。行為自体は同じなのに、相手が彰浩と分かっているとまるで嫌悪感がなく、喜びが湧くばかりだ。





 彰浩の手は腰骨から足の付け根まで何度もゆっくりと往復し、愛の艶めかしい肢体にゆっくりと性感を塗りつけていく。見た目のイメージよりもごつごつとした彰浩の手に、自分が男の手で嬲られているという実感が湧く。





 愛は周りにバレやしないだろうかという緊張と、自分の尻を愛でる手に対する興奮で頭がおかしくなりそうだった。





「ん……くぅ……っ」





 五本の指が、徐々に尻肉に食い込んでいく。日々の疲れを解きほぐすような優しくも卑猥な手つきが、徐々に牝を犯すための手つきへと変容していく。





 ジャケットに包まれたむっちりとした尻を、愛は知らず知らずの内に彰浩のいる後ろ側へと突き出していた。





(え……うそ……っ)





 彰浩の左手がジャケットの内部にするりと入り込むと、パツパツに張りつめていたタイトスカートをずるりと捲り上げた。臀丘を車内のぬめりとした空気が撫でて、愛はぶるりと震える。





 愛は目の前の車内広告を緊張した面持ちで凝視する。緊張と不安と期待と喜びが混ざり合って、今の自分がどんな表情をしているのか想像さえ出来なかった。





 白のすべすべとした生地のショーツを、彰浩の両手が撫で上げる。スカートを捲り上げた左手がそのまま痴漢行為に加わり、一気に倍になった性感に愛はたまらず下半身をくねらせた。





 大きくて少し垂れ気味なことにより、濃密な色っぽさを湛えた愛の尻は、今まで多くの男の視線に焦がされてきた。今はその尻を、ほんの三日前に会ったばかりの男に堪能され、蹂躙されている。



 愛の脳内に白い稲妻が駆け抜けて、色鮮やかに爆ぜてゆく。綺麗に揃った白い歯が、かちかちと小さく鳴った。





「ん……あっ、うんん……っ」





 まるでパンをこねるように丹念に、好きな女の子をいじめるようにねちっこく尻を揉まれて、愛の声がとろとろに蕩けていく。甘ったるい嬌声の間隙には、彰浩の微かに荒げた息遣いが聞こえてくる。





 彰浩の両手がショーツの腰骨辺りの部分を掴んだ。そのままぐいっと引っ張られて、ショーツが淫裂にまるでTバックのように食い込んだ。





「ひ……っ!?」





 突然の事態に愛が身体を折り曲げると、彰浩は愛のお腹に優しく手を添えて愛の上体を起こした。愛にとっては自分の身体を労る優しさにも見えたし、卑猥な行為を水を差すなという意思表示にも思えた。





 彰浩の両手がTバック状になったショーツの前後を掴み、ぐいぐいと上に引っ張り上げてくる。





(ひっ、ひぃっ! ひぁぁっ!? だめ、だめ……っ!)





 同時に引っ張られると肉感たっぷりの割れ目にショーツの生地がめりこみ、互い違いに引っ張られるとクリトリスが遠慮なくこすられる。





 一歩間違えれば痛みを伴う行為だが、彰浩の手が尻に触れた時からずっと、膣口からは濃密な愛液がたっぷりと溢れ出し続けている。滑りが良くなり、彰浩が好き放題にショーツで弄べば弄ぶほど、愛は強烈な快楽と幸福感に溺れていった。





(何これ、気持ち良すぎて訳わかんない……やだ、知らない人に囲まれてるのに、今のわたし、絶対エッチな顔してる……っ)





 愛はショーツでこすられる快感に頭の中を攪拌されながら、ぼんやりと路線表を見る。時間通りに進んでも愛の会社の最寄り駅までは一時間以上かかる上に、今日は度々細かな遅延が起こっていて、どれくらい時間がかかるのか見当もつかない。





 それ以前に、自分は彰浩の誘いに乗って遅刻する気でいる。それが愛にとって幸運なのか不運なのか、愛自身にさえ分からなかった。





 電車が遅延で数分止まっている間は、苛々して舌打ちしたり会社に電話をする人の声が聞こえていた。彰浩の手はその中でも動きを止めず、愛のショーツはたっぷりといやらしい愛液を吸って濡れた雑巾のようになっていた。





 濃密な牝の臭いはジャケットに閉じこめられて、辺りには漏れていない。それでも愛は、臭いの強いものを食べた時に胃の中に感じる臭いのように、下腹部にこもった強烈な牝の匂いを感じていた。





「愛さん、気持ち良い?」





 愛が気持ちを張りつめては弛緩するのを繰り返す中、耳元で些か拍子抜けするくらいの優しくて気さくな声がした。愛は心臓をばくつかせながらもこくこくと頷く。





「良かった。もっと気持ち良くしてあげるから」

「え……っ!?」





 愛が戸惑う間に、彰浩は愛のショーツの食い込みを戻し、ずぶ濡れになった下着を太股の中程まで一気に下ろした。





 愛は羞恥心で悲鳴を上げて屈み込みそうになったが、半歩動くことさえままならないすし詰め状態の車内が愛の反射行動を許してくれない。愛はただ、泣きそうな顔で唇を震わせた。





 彰浩の右手が愛の下腹部の前側に、左手が尻に添えられる。





「え……っ」





 尻の谷間と恥丘を撫でられていたかと思うと――両手の中指が、それぞれ膣口とアナルにずぶりと挿入された。





(あぐ……っ!? うそ、前はまだしも、後ろもだなんて……やっ、こんなの……立ってられな……っ!」





 彰浩の左手は尻の谷間を撫でながら、膣から滴る愛液を菊孔に塗りたくっていた。そのため愛が心の準備をしていなくとも、快感にひくついた尻穴に中指の根本まで侵入するのを許していた。





「……ひ……はひ……っ」





 今までの人生で、こんなに情けない声を出したことがあっただろうか。性器と排泄孔をごつごつした指に貫かれて、愛は生まれたての子鹿のように下半身をがくつかせる。





(な、に、これ……っ、指が、わたしの中、好き勝手に動きまわってる……っ)





 彰浩は愛の肩に顎を乗せ、時折小さな耳に息を吹きかけながら一方的な蹂躙を続ける。膣道のざらざらした部分を指の腹で丁寧にこすると愛が崩れ落ちそうになるが、アナルに挿入した中指が愛を無理やり支える。





「あ……か、へぁ……っ」





 気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い。





 脳内が焼かれる。快楽の炎に焼き尽くされる。ついさっきまで考え込んでいた様々な悩み事がいとも簡単に雲散霧消する。気が狂いそうなほどの快感は、愛の顔を他人から見られてはいけないくらいだらしない表情へと変貌させていた。





「愛さん、気持ち良い?」

「……は、ひっ、ひぐぅ……っ」





 彰浩が問い掛けるついでに耳に舌を挿し入れてくる。くちゅくちゅと音を立てて己の耳を舐られた愛は、言葉にならない声を上げてこくこくと頷いた。





 頷いた拍子に、ぐっしょりとかいた汗で透けたワイシャツによだれが垂れ落ちる。ボタンを緩めていたために豊満な胸の谷間によだれが流れ込み、淫猥な水たまりを作った。





(あ、れ……ここ、今、どこだっけ……)





「ひっ、はぐぅっ、はへっ、ひんっ」





(なんでわたし、こんなエッチな声出してるの?)





「ひっ、ひぃんっ、んふぅぅ……っ」





(ちがう、今どこにいるか思い出そうとしてたでしょ、わたし)





「うぅぅっ、ひっ、んはぁぁ……くふぅぅぅ……っ」





(だめ、だめ、だめ、もう何も考えられない、イク、イク、イ――)





「……え?」





 彰浩の指が愛の体内をもう二~三度抉れば容易く絶頂に達すると愛が自覚した瞬間――自分を蹂躙していた指が一気に引き抜かれて、愛は呆然とした。何が起こったのかと振り向こうとすると、





「……ひ……っ!?」





――愛のむちむちとした尻肉の割れ目に、牝を蹂躙するためにぎちぎちに勃起した肉竿が宛がわれた。見なくても愛には感触で分かった。今自分の尻に押し付けられているのが、ほんの三日前に自分をめちゃくちゃにして、人生を変えた牡の性器だということを。





「だ、だめ、何してるの……っ?」

「まだ愛さんはイってないでしょ?」

「指でイキそうだった。指でイけたから……っ」

「でも、欲しくないの?」

「……ぁ……っ」





 割れ目を擦るようにしていきり立った肉槍が前後して、愛の思考から常識や理性がぼろぼろと零れて落ちていく。





「人目も気にせず、ぎっちぎちに硬くなったこいつを突っ込まれて、頭の中にばちばちと火花を散らして、好き放題イキたくないの?」

「……ぅ……ぁ……、……たい……っ」





 自分は今、どんな表情をしているのか。





「え?」

「……イ、キ、たい……っ」





 今なら、わざわざ鏡で見なくても分かる。





「もっとはっきり」

「……あ、彰浩くんのちんちん突っ込まれて、声も出せないままめちゃくちゃにされたい……かき回されたい」





――きっと、とても嬉しそうに笑っている。





「オーケー」

「うぐ……っ!?」





 彰浩は自らの腰を下げると、愛の腰骨を押さえて引っ張り、ぐっしょりと濡れそぼった肉厚な大陰唇を赤々と腫れ上がった亀頭でこじ開け、一気に最奥まで貫いた。





「……あ……か……っ」





 たった一度の挿入で、愛はおとがいを上げて静かに絶頂に達した。身体をぶるぶると戦慄かせ、折れ曲がりそうになる身体を彰浩が抱きかかえる。逞しい腕に腹部を支えられ、きつきつになった膣内が更に締まる。





「うあ、すご……っ。……やっぱり最高だよ、愛さんの中」

「……ぅ……あぅ……ひぁ……っ」





「本当ならめちゃくちゃにかき回したいけど、場所が場所だからね……ゆっくり動いてあげる。電車の揺れも一緒に楽しもう」

「……あ、う、ぁぁ……っ」





 彰浩の言葉に、愛は緩慢な動作で振り向く。身体を真っ二つに裂くような強烈な快感は愛の脳神経を焼き尽くしていて、まともな思考を形成する余力など全く残っていない。





 彰浩と目が合った愛は、自分が彰浩の言葉に対して頷いたのか、何かしらの返事をしたのか、或いは全くの無反応だったのか――それさえも、分からなかった。





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『第6話 電車内でのまぐわいに溺れる。』





 電車のすし詰めは続き、人口密度が上がれば一人一人の密着度も高まる。





「あぐ……はう……っ、んっ、ひぃっ、んはぁぁ……うぅぅぅ……っ」





 彰浩の陰毛の感触まで分かるほど研ぎ澄まされた触感と性感は、じっとしていてもがちがちに隆起した肉槍を深く味わってしまう。肉襞が蠢く度に肉槍が反応して、それに合わせて愛の膣肉が更に反応して蠢く。





「ひっ、んふぅぅ……っ!?」





 時折電車が大きく揺れると、風に揺られる麦畑のように灰色の人波が傾く。ぴったりと密着している二人の下腹部がぐいと動き、揺れの度に異なる角度と強さで濡れそぼった淫肉が抉られる。





(だめ、こんなの、声、我慢出来ない……絶対バレちゃ――)

「ひぐぅ……っ!?」





 彰浩が愛の腹に腕を回して強く抱きしめ、密着を強めた。子宮口に膨れ上がった亀頭がぐりぐりと押し当てられ、気が狂いそうな快感に思わず声が漏れる。





 愛は焦って周りを見渡したがみんなイヤホンをしたり疲れきった顔をしていて、誰も愛と彰浩のことなど気にしていなかった。時折愛の身体に不躾な視線を感じるが、顔まで覗き込む度胸は無いのか、悦楽に染まった愛の蕩け顔に気付く人はいない。





「ほら、割とバレないもんでしょ?」

「ひ……っ、あぁ……っ!? でも、ひぐっ、だからって、んふぁぁっ、そんなに、動かさないで……っ!」





 彰浩の腰がゆっくりと前後し始めて、愛は慌てる。人波に生じた僅かな隙間を使って、彰浩は緩慢ながらも確実に愛を絶頂へと追いやる抽送を始めた。





 肉槍が突き入れられると、愛の思考が割れた風船のように弾け飛ぶ。

 肉槍が引き抜かれると、内臓が引きずり出されるような背徳的な快楽が身体中を焼き焦がす。





「あひっ、ひぁっ、やめ、だめ、これ……あぁぁ……あぁぁぁ……っ」

「かき回してほしいって言ったのは愛さんだよ? それに、そんな蕩けた顔で言っても説得力無いって。……ほら」

「……え……? ……あ……っ」





 愛の肩にあごを乗せた彰浩が、電車のドアの窓ガラスを指差す。ぼうっとしたまま顔を上げた愛の目には、理性が完全に溶け切って肉欲に溺れる牝と化した己の顔が映っていた。





「うあ……うぁぁ……やっ、わたし、こんな、こんな……っ」

「えっ、ちょっと、愛さん……っ?」





 泣きそうな表情を浮かべた愛の腰が、ゆっくりと前後し始める。言動と挙動の明確な不一致に、彰浩は慌てた。





(うわ、愛さん、完全にスイッチ入ってる……っ)





 彰浩は、自分が腰を止めているにも関わらず震えながら腰を振り立てる愛の痴態に驚いていた。





――愛を痴漢しようというのは、初めは完全に自分の欲求不満を癒すためだった。何を馬鹿なことをと、初めこそ自分の私欲に満ちたアイディアを脳内で却下していた。





 しかし、よくよく考えてみれば、愛の今の精神的・身体的状態を考えるとリフレッシュという意味では意外と悪くはないのではと思えた。





 いざ実行してみると、彰浩の思っていた以上に愛はノってくれた。

 完全に他人のフリをして痴漢を始めた時に愛が嫌悪にまみれた反応をした時は、自分の悪ノリに心底後悔したものの……自分の身体を触っているのが彰浩だと気付いた時に愛が浮かべた心底安心した表情は、彰浩の心の中にたまらぬ幸福感と劣情を抱かせた。





 そんな中で、こうして電車内での挿入という非常識極まる行為に溺れている訳だが……。





「あっ、はぁぁっ、ふっ、んふぅぅ……ふぅぅん……っ」

(やば……っ、愛さん、どんどん積極的になってる……っ!)





 彰浩は、本気で慌てていた。

 愛はいつの間にか彰浩の両手を握り、艶めかしく指を絡めていた。腰も前後に一定の速度で動くだけでなく、速度を変え、左右に動き、時にポールダンサーのように妖しくくねるような動きをする。





 その上振り向いて彰浩の顔をじっと見つめており、傍から見れば恋人がベッドで仲睦まじく絡み合っているようにしか見えない表情をしている。





「んっ、彰浩くんもっ、はぁんっ、動かして……ね、動かして? ほら、もっと、もっと……んはぁぁぁ……っ」

(やばいやばいやばい、もうめちゃくちゃにしたい、この人の中に精液ぶちまけたい……っ!)





 あまりにも可愛らしいおねだりに彰浩の思考がショートしかけるが、今ここで自分が理性を投げ出して腰を振り立ててしまえば周りにバレるのは言うまでもない。バレるのも構わず突き入れて次の駅で逃げれば……とも考えたが、生憎次の駅までは最低でも五分はかかる。今すぐ行動を起こすには早すぎた。





(くそ……ええい、応急処置だ……っ!)





 彰浩は愛と繋いでいた右手を離し、スラックスのポケットに手を突っ込んだ。そして中からハンカチを取り出すと――濡れそぼった結合部にぐじゅりと浸した。





「ふぁ……んはぁぁぁ……っ!?」





 正方形の布地に突然結合部と肉豆をこすり立てられて、愛の腰ががくんと折れ曲がる。彰浩は左手で愛の身体を抱き起こすと、一瞬でびしょ濡れになった卑猥な匂いを放つハンカチを愛の口に突っ込んだ。





「むぐ……っ」





 むせ返る淫靡な匂いと呼吸の苦しさに愛は呻いた。けれどその表情にはどこか喜悦も混じっていて、それが益々彰浩の欲情を駆り立てる。





「愛さん……次の駅で降りよう。それまでに、出すよ」

「おご……ふぐぅぅ……っ」





 彰浩の言葉に愛がぶるりと震えて、膣肉がきゅむきゅむと締めつけてきた。





(苦しい……ぼうっとする……彰浩くん、わざわざハンカチにエッチな汁を付けたんだ……っ)





 朦朧とする意識の中で、愛は何とか現状を把握する。ガラス越しに自分の表情を見た瞬間、愛は気付いたら自分から腰を振っていた。彰浩が驚いて腰を止めているにも関わらず、一心不乱に腰を振る。





 ここまで散々攻勢に回っていた彰浩が慌てるのが何だか妙に可愛くて、愛はどんどん腰を動かすことに遠慮が無くなってきた。





 彰浩によって口に突っ込まれたハンカチは、愛の大量の愛液と彰浩の先走りの汁が混じりあっていて、なんともいかがわしい匂いを発していた。





 初めこそ鼻腔を貫く痛烈な性臭に嗚咽を漏らしたものの、十秒としない内に卑猥な味に毒されて意識が朦朧として、布地にたっぷりと唾液を垂らすようになっていた。





「うぐ……うぐぅぅ……っ!?」





 彰浩が、速度こそ変わらないものの、先程までよりも明らかに力強く腰を突き出してくる。ズンッと突き上げられる度に全身が雷に打たれたように痺れ、両足が情けないほど内股になり、溢れ出した大量の蜜液が太ももを伝っていく。





「もう……止めないから」

「ふぐぅぅ……っ!」





 彰浩は愛の耳元でそっと囁くと、だらしなさの残る横腹をがしりと掴んで腰を振り立てる。周りには僅かな衣擦れの音しか聞こえないが、愛は己の中がぐちゃぐちゃにかき回される感触に溺れていた。





(あっ、だめ、これ、もう、イク、イクイク、出されちゃう、注がれちゃう、彰浩くんの白くて濃いのが、わたしの一番奥に、奥に、奥に……っ!)





 愛はドアに手を付いて、己の思考を抉り削る肉槍がどんどん硬く張り詰めていくのを感じながら絶頂に備える。ハンカチを咥えていても、きっとこのままでは悲鳴じみた嬌声を上げてしまう。





「う……あ……そろそろ、出るよ……っ」

「ふぐぅぅっ!? うぐっ、んぐふぅっ、んふぅぅぅ……っ!!」





 彰浩の右手が愛の口を塞ぎ、左手が腹を押さえる。

 まるで敵陣を蹂躙する破城槌のように、硬く膨れた肉槍の切っ先が子宮口を抉る。

 彰浩の腰がぶるりと戦慄いた次の瞬間――愛の視界と脳内が白く爆ぜた。





「おぐ……っ」





 あまりの衝撃に、愛の言葉と呼吸が止まった。

 灼熱の白濁が、子宮口に叩き付けられて一番大事なところを犯していく。

 鉄砲水のような勢いで何の遠慮も無しに吐き出される牡の欲求は、愛の思考をあっという間に蕩けさせ、破壊していく。

 快感で惚けていた目は見開かれ、まるで壮絶な今わの際を迎えたような表情で愛が震える。

 内股になっていた足はみっともなく広げられ、電気を流されているかのようにびくびくと痙攣している。





 気持ち良すぎる、気持ち良すぎる。

 苦しい、苦しい、苦しい。

 死ぬ、死ぬ、死ぬ。





 でも、こんなに気持ち良くて死んじゃうなら、それも良いかもしれない。

 死んじゃう、死んじゃう、死んじゃう。

 彰浩くんに犯されて、精子注がれて、死んじゃう、殺されちゃう。





 愛の表情が、理性が、快楽に染まり、苦悶に喘ぎ、喜悦に歪み、崩壊していく。





「う……ぐぁ……愛さん、愛さん……っ」





 彰浩は小さく呻きながら、愛の耳元で何度も熱っぽく名前を呼んでくる。やっていることは鬼畜そのものなのに、言葉で接するときの態度が少し幼くてとても可愛い。

 夥しいほどの絶頂の中、愛は他愛も無いことを考えて――





「……あれ、愛さん? ……愛さん?」





 彰浩が呼び掛ける声に心地良さを感じながら、ゆらりと意識を手放した。





『第7話 会社をサボってショッピングモールで……。』





「ん……っ」





 愛が目を開けると、先程までと比べると随分と空いた駅のホームが目に入った。





「……ここは……?」

「よかった、起きたんだね」





 愛が緩慢な動作で視界を巡らせると、すぐ隣で彰浩がほっと肩を撫で下ろしていた。

 愛は今、自分が駅のホームのベンチに座っていることに気付く。





 ほんのついさっきまではホームも電車の中もすし詰め状態だったというのに、今は大きな波が去って、人の数こそまだまだ多いもののどこか安寧とした空気が流れていた。





「わたし、もしかしてあの後……」

「うん、気絶しちゃったんだよ。びっくりした」

「……ごめんなさい」

「大丈夫、ここに運ぶのにちょっと苦労したくらいだから」





 彰浩の言葉を聞いて、愛は自分の身体をちらりと見る。むちむちと牝らしく膨れた身体は、太っているとまでは言わなくていいだろうが……。





「わたし重いでしょ? こんな身体だし」





 愛としては「ううん、軽かったよ?」と返してほしかったのだけれど。





「ん、確かにちょっとだけ重かった。だけどほんとに少しくらいしか重くないし、この重みがあるからこそ愛さんのいやらしい身体つきが出来上がってるんだと思うとなんだか嬉しくなったな」

「…………」





 予想の斜め上を行く回答に、愛は彰浩の頬をつねった。顔が真っ赤になった愛のつねりは、彰浩が思わずにやけてしまうほど力が入っていない。





「……彰浩くん、よくそれだけいやらしいこと言えるね。聞いててまたすぐに変な気分になっちゃう」





 手を離した愛が、太ももの上に手を重ねてもじもじとしながら、上目遣いで彰浩を見つめる。彰浩がごくりと喉を鳴らす様を見て、愛は自分の身体の奥がぐっと熱くなるのを感じた。





「……こんな風にストレートに思ったことを言ったことなんて、女の子相手どころか男同士でも無かったよ。愛さんだと、なんか言いたくなるんだよね……」

「……もう。……ん、あれ……?」





 頬を掻きながら呟く彰浩の言葉に愛が頬を緩めていると、不意に下腹部の違和感に気付いた。起き抜けでぼうっとしていたためか、気付くまでに時間差が生じていた。





「あれ、なんか変な感じがする……」





 下腹部を見ながら内ももをこすり合わせる愛を見て、彰浩は気まずそうに頬を掻いた。





「あー……ごめん、愛さん。先に謝っとく」

「……なに?」

「愛さんの中に思いっきり出したでしょ? それで、その後すぐに下着を履いてもらおうとしたんだけど、その、中のが垂れてきちゃって……。だから、……ね? その……」

「……はっきり言って。何かしたの?」

「……畳んだハンカチを、愛さんの中に入れました」

「……な……っ」





 愛の顔が一気に茹で上がる。愛が素早く立ち上がると、彰浩だけでなく周りを歩いていた人々まで驚いた。彰浩を一顧だにせず、ふらつきながらも向かった先は――トイレだった。





 愛が戻ってくるまで彰浩はコーヒーを飲んでくつろいでいた。飲み干した頃に、愛が戻って来た。歩き方はまだ少しぎこちない。





「いてっ」





 愛は戻ってくると、彰浩の頭をぺちっとはたいた。





「……発想がひどすぎ」

「……ごめんなさい」

「……あのハンカチ、流石に捨てちゃった。……ごめんね?」

「……そんなことわざわざ言わなくていいのに。愛さん優しい。可愛い。好き」

「へぇ……っ!?」





 視線を泳がせながら謝る愛に、彰浩は真面目な顔で求愛した。

 そ、そういうのはいいから……と裏返りそうな声で言って、愛はベンチに腰を下ろす。





「なんで一つ開けて座るの?」

「…………」





 彰浩の隣に座り直した。





「それで、どうしようか」





 愛の言葉を聞いて、彰浩は時計をちらりと見る。

 元々、会社が遠い愛に合わせて彰浩は動いていた。淫猥な行為も通勤時間中にしていた。





 電車を降りて愛が休んでいた時間も、まだまだ愛の通勤時間に含まれている。

 そのため、





「……始業まで、まだしばらく時間はあるね」





 彰浩は愛と同じ始業時間だったが、どちらもまだ、ほんの少しの遅刻で済む段階ではある。

 けれど、愛も彰浩も、一刻も早く会社に行こうなどという発想は全く無かった。





「愛さん、会社には午後から行くって言おうよ。それで、午前はもうちょっと遊ぼう?」

「……ん、いいよ。……どうせ、エッチなことするんでしょ?」

「うん、したい。愛さんの中に出したい」

「……んぐ……っ」





 彰浩のあけっぴろげな言葉に、愛は息を呑み、顔を真っ赤にして震えた。

 二人は一旦離れると、それぞれ電話をする。どちらも体調が優れず、駅の途中で降りてしまって……という内容のウソをついた。愛の場合はあながちウソとも言い切れないが。





「こっちは大丈夫。愛さんは?」

「ん、こっちも大丈夫。出たのが男の上司だからさらりと済んだわ。……まあ、周りの女の人から今頃ねちねちと陰口を叩かれてるでしょうけど」

「……その話、今度聞かせてよ。気が向いたらでいいから」

「……ん、ありがと」





 柔らかく微笑み、髪を梳いた愛の動作に――彰浩は、改めて惚れた。





「じゃあ、移動しよっか」

「どこに行くの?」

「ここの駅、たまに行くショッピングモールが近くにあるんだ。歩いて五分くらいなんだよ。そこに行こう」

「……ホテルじゃないの?」

「……愛さんも随分積極的になってきたね。正直たまんない」

「だ、だって、その……するんでしょう?」

「うん、するよ。でも今ホテルに行ったら……絶対明日の朝までしちゃうし」

「あ、朝まで……わたしと、セックスするの……?」

「うん、する。絶対しちゃう。絶対寝かさない。気絶しても犯す。絶対に」





 彰浩がさらりと言った言葉に、愛は歪な泣き笑いを浮かべる。

 だからね……と、彰浩は愛の表情を見てぞくぞくしながら言葉を続ける。





「抑えが効きつつ、刺激も楽しめる場所にしようと思って」

「え……?」

「だから、ショッピングモールに行こう」





 彰浩の言葉を聞いて、愛は得体の知れぬ期待にぶるりと震えた。





       ×  ×  ×





 六月に入って、梅雨入りも近付いているのか冴えない天気が続いていたが、彰浩と愛が駅から外に出ると、抜けるような青空が広がっていた。



 湿度を含んだ熱さが二人を包み、空の快活さとは裏腹にじっとりと汗をかいてしまう。

 彰浩が愛と手を繋ごうとすると、





「もう、やめてよ……お互い汗かいてて気持ち悪いでしょ」





 愛が言ったが、一瞬触れた愛の小さな手は、彰浩の手と比べると驚くほどサラサラしていた。





「あそこだよ、行こう」





 大きな交差点の向こうにあるショッピングモールを指差した彰浩が、愛の言葉に構わず手を握る。どう反応されるか気が気でなかったが、愛はぽそりと「……もう」と呟くだけだった。





 初めこそもじもじしていたが、横断歩道を渡っていると、愛の方から指を絡めてきた。

 ショッピングモールの正面玄関から中に入る。郊外の立地を生かして、視線が行き渡らないくらいの広さを誇っていた。





 愛はまるで、田舎から初めて出てきた生娘のように顔をきょろきょろとさせている。その原因はこれから及ぶ行為にあるのだと思うと、彰浩は愛の反応が愛おしくてたまらない。





「……あんまり人はいないわね」

「まあ、平日の朝イチだしね」





 愛の言葉に彰浩は頷く。開店してまだ十分程度しか経っていない屋内はほとんど客がおらず、パタパタと準備をしている店のスタッフがそのほとんどを占めている。ワイシャツとはいえスーツ姿で、しかも手を繋いでいる彰浩と愛は明らかに浮いていた。





「良い場所探そうか。行こう」

「……うん」





 彰浩が歩き出すのに合わせて、愛もとことこと小刻みな歩幅で付いてくる。

 普段の会話だと彰浩が甘え気味で愛がお姉さんのような立ち位置に回ることが多いが、行為に及ぶ時――と言ってもまだ二回しかないが――は、その関係が綺麗に逆転している。





 彰浩が甘えるような態度をとることもあるが、大抵は彰浩が優位に立つ。性行為時の彰浩には、愛に有無を言わさない凄みがあった。今は、自然と彰浩がリードして愛がそれに付いていっている。





 公衆の面前で一緒に歩くという行為が、この後の淫らな交わりに繋がることを二人とも深く自覚するが故の振る舞いだった。





「あ、あそこ良いかも」

「え……?」





 彰浩が指差したのは、店が設置されていない湾曲した通路の凹んだ部分だった。何かの業務で使うのか、人が数人は入れるような空間がぽっかり空いていて、メインの通りから離れた通路の中でも更に隔離された印象を受ける。





「あの……彰浩くん? ここでっていうのはいくらなんでも……っ!?」





 愛が戸惑いながら振り返った瞬間、彰浩は愛の頭に手を回して唇を奪った。





『第8話 ショッピングモールの通路で。』





「んむ……ふっ、んんん……っ!?」





 遠慮無しにねじこまれた舌を愛はなされるがままに受け入れ、理解の追い付いていない瞳が切れ掛けの蛍光灯のようにばちばちと瞬く。彰浩の腕は愛を壁に押しやり、身体を密着させて愛の口内を、艶めかしい肢体を貪る。





「うっ、ふぅ……んっ、ちゅぴっ、ちゅくっ、……ごくっ、んくっ、ごくっ、ごく……っ」

(なに!? なんでこんな場所で……せめてトイレとかじゃ……だめ、こんなの、何も考えられない……頭……おかしく……っ)





 彰浩が流し込んでくる唾液を飲み込むごとに、愛の顔がとろとろに蕩けていく。ひと気の無い場所だからと言って誰も通らないとは限らない。数メートル先では店員が客を呼び込む声が聞こえ始めている。それでも、愛は彰浩の背中に腕を回し、本能に従い始めた。





 彰浩が左手で愛の豊満な乳房を揉みしだきながら、硬く閉じられた両脚に自らの膝をねじ込む。愛は初めこそ抵抗したが、彰浩に舌を咥えられ、ずずずと啜られると力無く脚を開いた。





 彰浩の太ももが愛の脚の根本に触れる。既にぐっしょりと濡れそぼっているショーツは、彰浩のスラックスに容易く卑猥な染みを作った。





「んくふぅぅ……っ!!」





彰浩が太ももをぐりぐりと動かしてこすり立てると、背筋を駆け抜ける電流のような快感に何度も貫かれた。





 彰浩が唇を離すと、愛は蕩けきった表情で彰浩をぼうっと見つめ、無意識にちろちろと舌を出した。卑猥なやりとりをした直後にも関わらず欲求不満であることを晒す愛の反応を見て、彰浩の瞳に嗜虐の火が灯る。





「……愛さん。頭の後ろで両手を組んで」

「え……こ、こう?」





 愛は、草むらに寝そべるかのように両手を組んで枕にした。





「うん、そう。それで、脚も開いて。カエルみたいに」

「……え……な、何を……言ってるの……?」

「大丈夫だから、ほら」

「……ぁ……っ」





 彰浩の表情は優しい。なのに、声音はどこまでも底冷えしている。





 だめだ、逆らえない。

 むしろ、逆らいたくない。



 愛の中に、今まで芽生えたことの無い痛烈な被虐心が芽生えた。





 数秒の逡巡の後、愛はごくりと息を呑んで、頭の後ろで手を組んだまま脚を◇型に開いた。ムチムチとした身体付きの愛がとった挑発的なポーズに、彰浩は嬉しそうに喉を鳴らす。





「……愛さん、エロすぎ」

「こんなの恥ずかし……んぐ……っ!?」





 彰浩が再び身体を密着させてきたかと思うと、再び唇を奪ってきた。それと同時に左手は愛の豊満な乳房を揉みしだき、右手は無遠慮にショーツの中に突っ込まれ、濡れそぼった蜜壺に溜まった淫液を掻き出される。





「おぐ……おご……んぐぅっ!? ふぐ……うぐぅぅ……っ!」





 みっともない格好で三点を同時に嬲られ、愛は半分白目になりながら涙を流し、むっちりした身体を何度も波打たせる。彰浩に求められた体勢のままでは抵抗も出来ず、みっともない姿を晒したまま汗だくになって愛液を垂れ流した。





 彰浩の指の動きはさして激しくないが、それが却って愛の脳内に痛みの無い快楽を叩き込み、苦しいほどの絶頂を生み出す。





(だめ、こんなの頭おかしくなるっ! イク、イク、イク……っ!!)

「ふぐぅぅっ! うぐっ、んぐぅぅ……うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ!!」





 口内を蹂躙されたまま、愛の視界が白く爆ぜた。口の端から二人分の唾液をだらだらと垂らしながら、床を汚すこともいとわず大量の愛液をぶちまける。彰浩は口付けをしたまま、愛の壮絶な絶頂を嬉々として見ている。





「……ぷはっ!? あっ、だめ、ひぐぅっ!? まだイってる……まだイってるからぁ……っ、口塞いでないと……っ!」





 愛の言葉に、彰浩は乳房を揉みしだいていた左手を離すと愛の口を塞いだ。右手は変わらず膣肉を抉り続け、蜜壺からは壊れた蛇口のように愛液が噴き出し続ける。





「うぶ……ふぐぅぅっ!! あぐっ、うぐっ、うぅぅぅっ!! うぅぅぅぅっ!!」

(死ぬ、死ぬ、死ぬ!! 気持ち良すぎて死ぬ!! これじゃ出会った時みたいに襲われてるようにしか……違う、出会った時よりも強引で、気持ち良くて……っ!)





 愛の思考がぐちゃぐちゃになり、彰浩の手のひらで押さえられた口からは獣じみた嬌声が絶え間なく漏れ、床には愛の足を伝って流れ落ちた愛液と、吸水限界を超えたショーツから垂れ落ちた蜜液が大きな水溜りを作っている。





 愛の視界が何度も爆ぜる。

 その度に、愛液が噴き出して同時に愛の思考を削り取る。





 彰浩は愛おしそうに、それでいて嗜虐心に満ちた顔で何度も愛の膣肉を抉る。動きは激しくないが、指が波打つ度に愛の身体は玩具のように跳ねた。

 愛はみっともない格好で、誰も見ていない場所で、静かに、何度も、何度も跳ねた。





「……ふぅ、そろそろ良いかな」

「……ぁ……ぁ……っ」





 十分ほど経った頃、ようやく彰浩が愛を解放する。少し汗ばんだ程度の彰浩とは対照的に、愛は汗と愛液で全身がぐっしょりと濡れていて、ワイシャツは肌にべったりと貼り付いて中のブラジャーが透けて見えていた。





「タオルを持ってきておいて良かった。後始末しないとね」





 愛が絶え間ない絶頂の余韻に浸り、嬲られていた時のままの体勢でいると――タオルで床を拭いていた彰浩が、ふと愛の下半身を見つめてきた。





「…………」





 一通り床を拭き終えると、跪いて愛の内ももを手で押さえ、空いた手でびしょ濡れのショーツを捲る。





「……何……して……もう……むり……あぁぁぁ……っ」





 彰浩の口が淫部にちゅっと口付けをした瞬間、途切れかけていた愛の意識は強制的に目覚めさせられた。けれど疲弊しきっているため全く動けず、腰をへこへこと前後に動かすだけのみっともない行動しかとれない。





 愛が視線を下ろすと、彰浩がまるで乳房に吸い付く赤ん坊のように安心した表情で自分の性器をしゃぶっている。あれだけ嗜虐的なことをしておきながらも母性本能をくすぐってくる仕草に、愛は朦朧とした意識の中でときめいてしまう。





(……あ、だめだ……わたし、この人とずっとエッチしてたい……めちゃくちゃにされたい……っ)





 溢れ出す本能を自覚しながら、愛は静かに、もう三回果てた。





       ×  ×  ×





「ばか、ばか、ばか……っ」





 腰が抜けて立てなくなってしまった愛が、隣に座った彰浩の肩をてしてしと叩いてくる。

 流石にすぐには動けないということで、すぐ近くにあったベンチで二人は休んでいた。人目には絶妙につかない場所で、彰浩は頬を緩めながら愛の可愛らしい拗ね方を眺めていた。





「そろそろ歩けそう?」

「……ん、何とか」





 膝に手を乗せて少しだけ腰を上げた愛が、身体の具合を確かめながら頷く。





「よし、じゃあ移動しよっか」

「ん、わかった……って、やっ、え……っ? ちょ、ちょっと……っ」





 言葉とは裏腹に腰を上げようとしない彰浩が、愛の豊満な尻をすりすりと撫で始める。愛は目を剥いて慌てるが、もぞもぞと動くだけで決して逃げようとはしない。ポーズとしか思えない愛の抵抗が、彰浩の中の嗜虐心を静かに育てていく。





「愛さん。腰、浮かせて」

「う、うん……」





 言われるがままに愛が腰を浮かすと、むっちりとした肌とベンチの間にぬちりと糸が引いた。ショーツが濡れ雑巾同然になってしまって既に脱いでいたため、夥しい快感の余韻がはっきりと表れている。自らの痴態に愛は頬を朱に染めた。





「腰、下ろしていいよ」

「え? でも、彰浩くんの手が……」





 彰浩の手は愛の滑らかな尻をたっぷりと撫でながら移動し、淫裂に触れていた。このまま腰を下ろせば彰浩の手を自分の尻が下敷きにしてしまう……と愛は心配したのだけれど。





「いいから、ほら」

「う、うん……」





 彰浩は躊躇うことなく腰を下ろすことを促してくる。仕方なく腰を下ろすと、彰浩の手の感触が一気に生々しさを帯びた。





「あ~……愛さんのお尻、すげぇ柔らかい……極楽……」

「ば、ばか、変なこと言わないで……あ、やぁ……っ」





 豊満な肉尻に下敷きにされながら、彰浩の手がゆっくりと割れ目をなぞる。膣口に中指が近付くと、まるで砂浜に開けた穴に海水が流れ込むように、ずるりと指が滑り込む。愛の身体が妖しく波打って、くぐもった声が漏れて愛液が溢れ出た。





「愛さん、エロすぎでしょ……ここがどこだか分かってる?」

「き、君ねぇ……どれだけ自分のことを棚上げして……ンぁぁ……ふっ、んくぅん……やぁぁん……っ」





 彰浩の手の動きに翻弄されて、座ったまま愛の腰が艶めかしく前後にスライドする。吊り目がちの瞳をきつく瞑り、両手をベンチに添えて、彰浩の愛撫に神経を集中させている。





「……え? ……あ、うぁっ、彰浩、くん……? さっきから、どこに触って……やっ、はぁぁっ、うぁぁぁぁ……っ!?」





 彰浩の愛撫の動きの変化に、愛は戸惑いながらも小さく喘ぎ続ける。

 濡れそぼった淫裂をなぞる手は、愛の膣口でたっぷりと纏った愛液を、尻穴に丁寧に塗り付けていた。





 初めはきゅっと閉じられていた尻穴に潤滑液を塗りながら、徐々に指をめり込ませていく。愛が身を捩って抵抗すると膣に指を挿入して封じ、力が抜けたところでまたアナルを弄る。愛は戸惑いを露わにしながらも、己の排泄孔に徐々にめり込んでくる指に抵抗出来ないでいた。





「やぁっ、どんどん入って……んっく、変な、感じ、するのぉ……やぁっ、やぁぁぁ……っ」

(すげ……愛さんのアナル、どんどん吸い付いてくる……。エロすぎだろ……)





 愛の声が蕩けてくるのに比例して、徐々に中指を奥まで咥え込んで締め付けてくる感触に彰浩は陶然とする。第一関節まで挿入するのを何回、何十回と繰り返し、次に第二関節まで挿入するのを百回以上繰り返す。





 愛は彰浩の粘っこい愛撫に蹂躙されて、目を虚ろにして正面の壁を見つめながら腰をひくひくと動かし続けた。





「あ……やぁぁ……入って、くる……止めてぇ……お、おぁ……そんなに、奥まで、挿れないでぇ……あぐぅぅ……っ!」





 中指を根元までめり込ませると、愛は脂汗をたっぷりと浮かべて縋るような目で彰浩を見た。





「愛さん、大丈夫? 苦しくない?」

「く、苦しい、わ、よぉ……ばか、もう、ほんとに何考えて……」

「でも、気持ち良いでしょ?」

「……ぁ……っ」





 彰浩が投げかけた質問に、愛は言葉を失った。





「何の説明も無しにいきなりアナル弄られて、めちゃくちゃに感じてたでしょ? 愛さん、気付いてた? 最初は前の穴の汁を塗りながらやってたのに、途中からアナルしか弄ってなかったんだよ? 愛さんの尻穴がぬるぬるし始めたから要らなくなったんだ」

「やっ、そんな……あんっ!? いっ、うぐっ、動かさないで、苦し……っ!」





 彰浩の言葉に耳まで赤くした愛が、喋りながらも直腸粘膜を抉る彰浩の指に苦悶の声を上げた。実際、彰浩も愛の反応によってはこの行為はすぐやめる気でいた。しかし愛の排泄孔の感度は彰浩の予想を遥かに超えて良く、結果として彰浩の嗜虐心を燃え上がらせる結果となっていた。





「あ、ごめん、動かし過ぎるのはきついか。加減するね」





――だから、彰浩はつい先程思いついたことを実行に移すことを密かに心の内で決めた。





「そ、そういう問題じゃ……あっ、ああんっ……も、もう、こんなことして、この後どうする、気、なの……?」





 言葉に詰まりながらも何とか疑問を絞り出した愛に、彰浩はけろりとした顔で答えた。





「このまま散歩しようかと思って」

「……え?」





 愛の目が見開き、白い喉がこくりと鳴る。戸惑いが溢れた表情とは裏腹に、彰浩の中指がにちりと締め付けられた。感情と身体がまるで噛み合っていない反応に、彰浩の心臓が大きく脈打った。





       ×  ×  ×





「む、無理、歩けない、歩けないから……っ」

「大丈夫だって、行ける行ける」





 対照的な二人の声が、人通りの増えたショッピングモール内で静かに交わされる。愛の声は震えていて、彰浩の声は至極楽し気だ。





(やだ、やだ、わたしのお尻に、彰浩くんの指、入っちゃってるのに……っ)





 ふらつきながら歩くとつい内股になりそうになるが、そんなことをしては周りに怪しまれてしまう。愛は泣きそうになりながら必死で歩を進めた。





――彰浩は一度指を引き抜くと、電車内で痴漢をしたときと同じようにジャケットを愛の腰に巻いた。そしてショルダータイプの自分の通勤鞄を愛のいる右側に寄せ、半歩後ろを歩いて周りからは彰浩の手がどんな動きをしているか見えないようにした。





(それでも、こんなの、わたしの反応でバレちゃうよぉ……っ)





 堂々と通りの真ん中を歩く彰浩に、愛は付いていかざるを得ない。彰浩が気まぐれに「次はあの店を見てみよう」「次はこっちかな」などと言って進路を変える度に、愛の腸内粘膜がぐりぐりと抉られる。





 ごく普通の会話をしてくる彰浩に愛は精一杯平静を装って答えるが、反応を具に見ながら慎重に指を抜き挿ししたり、折り曲げたりしてくる彰浩の腸内愛撫に、愛の表情は苦悶と喜悦で妖しく歪んでいく。





「愛さん、お昼も後で食べよっか。パスタで良い?」

「……ぅ……ぁ……え……? う、うん、だ、大丈夫……っ」

「……今俺が何て言ったか答えられる?」

「……ぁ……ごめん、なさい……何かもう、気持ち、良すぎて、わけわかんなくて……っ」





 愛がほとんど無意識に返した言葉に、彰浩が目を見開く。

 あ、やっちゃった……と愛は思った。





 愛が鈍った頭で次に何をするのが最善か考えている内に、彰浩は愛の尻穴を愛撫している右手の残った指で豊満な肉尻を強く掴み、すぐ近くにある男子トイレに向かう。





「んぐ……あっ、ひっ、ぅぐ……だめ、そんな、速く、歩かないでぇ……っ!」





 愛が必死で抵抗の言葉を紡いでも、彰浩は愛の腸内粘膜をかき回すばかりで答えない。

 不意に彰浩の指がアナルから抜ける。魂が抜けたような心地で愛が壁に背を付くと、彰浩が男子トイレに一人で駆け込んだ。ものの数秒で戻ってきたため、誰かがいないのかを確認したのだと愛は気付く。





「行こう。ほんとはもっと歩きたかったけど、あんな言葉を聞いたら我慢なんて出来ないよ」

「え、あ……んはぁぅぅぅ……っ!」





 有無を言わさず再びアナルを中指で貫かれて、愛は返事をする間も無く男子トイレの一番奥の個室に連れ込まれた。





『第9話 再びトイレで……。』





 彰浩は個室に愛を連れていき、ドアを閉めるなり鞄を空いている棚に放り、愛の身体をドアに押しつけ抱きしめた。





「あ……んむぅっ!? ふっ、んっく、んんん……っ!」





 愛の嬌声が脳内に直接染み込んでいくような感覚に覆われながら、愛の腰に巻き付けていたジャケットをはぎ取る。





 動きを止めることなく今度はタイトスカートをめくり上げ、ぐっしょりと濡れそぼった、恥毛が少し濃い陰部を晒す。

 愛は顔を真っ赤にして身をよじるが、舌を啜り上げると艶めかしい身体から抵抗の力が抜けた。





「……ぷはっ、ぅあっ、あっく、んふぅぅ……やっ、あっ、あっ、あぁ……っ」





 唇を離し、表情を蕩けさせた愛の首筋に吸いつく。左手で乳房を掬うように揉み、右手をいやらしい尻に這わせる。汗をじっとりとかいた尻に手のひらが吸いつき、彰浩の官能がじりじりと高まっていく。

 割れ目に指を這わせて、やがて先に行き着いたアナルにためらいなく指をねじ込んだ。





「はぁうぅぅぅ……っ、だめ、だめぇ……っ」





 愛は口でこそ拒絶するものの、彰浩の首に腕を絡めていやらしく腰をくねらせていた。目の前の欲求に存分に溺れている様は、どこまでも卑猥で美しい。





 ワイシャツの上から豊満な乳房の感触を楽しんでいた手を離し、淫猥な熱のこもる下腹部に差し込む。ぷっくりと膨れた淫核をこすると、愛は目を見開いて身体を痙攣させた。





「くひぃんっ!? だめ、声出ちゃう……外まで聞こえちゃう……っ!」





 愛がいやいやと首を振り、自分の口を塞ごうとキスしようとしてくる。しかし彰浩は近付いてきた唇をかわして、にこりと微笑んだ。





「だめだよ、愛さん。ちゃんと声聞かせて?」

「やっ、そんな……はぁうんんんっ!? やっ、ひんっ、んはぁぁっ!!」





 アナルを指で貫いたまま、クリトリスを手のひらでこすりつつ膣内を蹂躙する。愛は声を殺そうと必死で唇を引き結び、我慢しきれなくなると半開きにした口から情欲に染まった喘ぎ声をまき散らす。床には大量の愛液が滴り、個室内に卑猥な匂いが満ち満ちていく。





「だめぇ……っ、声、ほんとに、我慢出来ないからぁ……っ、だめ……だめぇ……っ」





 とろりと甘ったるく蕩けた声を漏らして、愛の顔が泣きそうに歪む。可愛らしい懇願をしながらも、愛の手はいつの間にか彰浩のがちがちに張りつめた股間を撫でていた。





 愛の卑猥な行動に彰浩は更に興奮して、膣肉と腸内粘膜をねちっこく愛撫する。愛の膝がみっともなく開き、彰浩の手淫を際限なく受け入れていく。





「あぁぁぁ……だめ、イク、だめ、我慢できな……ひっ、うんん……っ!」

「……っ」





 愛の厚めの唇が、不意に彰浩の耳に押しつけられる。こぼれ出た唾液で湿った熱い唇の感触に、彰浩はぞくりとした。





「ね、ここなら大丈夫でしょ? 彰浩くんにわたしの声、聞こえるでしょ? ね? ね? イクよ? わたし、このままイク、イクから、ね? ……あっ……あふぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!」





 耳元でとろとろに蕩けた声で甘えられ、彰浩の指が愛撫を加速させると――愛の身体が弾けた。彰浩を力いっぱい抱きしめて身体を密着させ、大量の愛液と腸液を床にまき散らす。





 腰を前に突き出せば膣内の指が更に深く入りこみ、かと言って後ろに突き出せば腸内粘膜をより深く貫かれる。にも関わらず、愛の腰はより深い絶頂を目指すかのように、激しく戦慄きながらも必死で前後に動いていた。





「イぐ……イぐぅぅ……あき、ひろ、くん……ね、わたし、イってる、イってるのぉ……はぁぁぁぁ……っ」

(やばい、やばい、やばい、何だこれ……っ!)





 耳にぴったりとくっつけられた唇から紡がれる媚熱混じりの吐息と発情しきった声に、彰浩は肉竿に何も触れていなくとも射精してしまいそうだった。





 ようやく痙攣が収まった愛の身体を抱きしめると、彰浩は汗と愛液と腸液でぐっしょりと濡れた陰部を撫で回す。





「……愛さん、向かいの壁に手をついて、お尻をこっちに突きだして」

「……へぁ……っ? こ、こう……?」





 愛は彰浩に支えられながらよろよろと歩き、便座を跨いで壁に手をつき、彰浩に向けて挑発するように腰を突き出した。陰部が外気によりはっきりと晒されたことで、個室の外にさえ漏れ出そうなほど濃密な牝の匂いが彰浩の肉竿に狂気じみた興奮を送り込む。





「そう、そんな感じ。……じゃあ、行くよ」

「え……あぁぁぁ……っ!?」





 じっとりと汗をかいた豊満な肉尻を掴み、鋭く勃起した肉槍で割れ目をこじ開けて貫いた。牡の性器を待ち望んでいた性愛器官が激しくざわめき、肉竿を食いちぎらんばかりに締め上げてくる。





「うっ……愛さんの中、やば……っ」

「あっ、くっ、はぁぁ……はぁぁぁぁ……っ!!」





 白く濁った液体がにちゃりと泡立つ結合部を見ながら、彰浩はゆっくりと腰を動かし始める。愛の尻を掴んで微妙に角度を変え、愛の反応が大きいところをねちっこく何度も小突く。





「あっ、あぐっ、ひっ、へぁ……っ、はぁぁぁ……っ」





 彰浩の腰が前後し、左右に揺れ、円を描く度に、愛の背中が何度も波打つ。その度に尻肉が跳ね、自ら肉竿を味わってしまう。あまりの感度の良さに彰浩は一突きごとに予期しない快感に襲われ、先走り汁が滲み出るのをはっきり感じながら何度も何度も抽送する。





「愛さん……エロすぎ……っ」





 熱に浮かされた声で彰浩が囁き、愛のワイシャツのボタンを外していく。全て開けるとむっちりと実った乳房がぶるりと垂れ下がり、だらしなさの伴ったひどくいやらしい身体が露わになる。ワイシャツを脱がせ、ワイシャツに合わせたベージュのブラのホックを外す。





「ひぃんっ!? だめっ、そこ、つまんじゃ……やぁん……だめぇぇ……っ!」





 下を向いて張り詰めた乳首を両手の人差し指と親指で挟み、押しつぶすように中指の腹で撫でこする。彰浩は汗ばんだ艶めかしい肢体の背中に密着して、首筋の匂いを嗅ぎながら乳房を弄ぶのに夢中になる。張り詰めた乳首を弄る度に、愛は可愛らしい声を上げて、膣肉をきゅむきゅむと締め付けてくる。





視覚も、触覚も、嗅覚も、聴覚も、たまらなかった。





「はぁんっ、やんっ、だめっ、こえっ、でるから……声でるからぁ……っ」

「出していいよ、この時間帯ならそうそう人は来な――」





 愛の喘ぎ声をもっと聞きたい一心で彰浩が促そうとした瞬間――男子トイレのドアががちゃりと開く音がした。





『……っ』





 彰浩は咄嗟に愛の口を押さえ、空いた手でお腹を抱きしめた。

 入ってきた人の足音に二人が耳を澄ませていると、すぐ隣の個室に入った。





(やばいな、これはしばらく動けないんじゃ……んんっ?)

「ん……ふぅっ、んん……っ」





 手のひらに当たる熱い息と、ざわざわと蠢く膣肉の感触に彰浩が首を傾げる。二人の身体はぴたりと密着したまま止まっているが、愛は声を殺しながらも静かに肉竿を味わい、精液を搾り尽くそうと腰をもぞもぞと動かしていた。





 彰浩は少しばかり呆れて、それ以上に劣情が心の中に湧いた。





「……なに、この状況で続きしたいの? ……愛さんは変態だね」

「……っ! ……っ、…………っ!」





 耳元で囁くと、愛は涙目で首を振った。しかしその間も膣肉は肉竿を締めつけて、彰浩の下半身を一気に限界へと追い詰める。

 身体をぶるりと震わせて、彰浩はため息交じりに宣言する。





「……一回出すね」

「んむ……んふぅぅぅぅ…………っ!?」





 身体を密着させたまま、彰浩は愛の中に音も無く大量の白濁を打ち付けた。子宮口にぴったりと亀頭を押し付けて、脈動の度にゼリーのような粘度の精液を注ぎ、子宮と膣道を浸していく。愛は必死で声を殺しながらも腰をくねらせ、尿道に残った精液を余すことなく搾り出し、膣肉に染み込ませた。





「ふぅぅぅ……ふぅぅぅ……っ」





 少しでも隣にばれないように、愛は荒げた息を長く伸ばすことで何とか音を押さえる。その緊張感が膣内に伝わり、愛が息を吸う度にきゅっ、きゅっと締まり、息を吐く度に緩む。緩慢な快感の波は彰浩にとって天国でしかなく、大量の射精の後でもまるで硬度が衰えることが無い。





『あー、もしもし? どうした急に? 今? トイレだけど。ははは、別に気にしなくていいだろ』





 隣の個室にいる男が、どうやら電話を始めたようだった。しばらく出そうにないことを察したのか、愛ががっくりとうなだれる。しかし愛の表向きの反応とは裏腹に、今も膣肉は艶めかしく蠢き、肉竿をしゃぶり続けている。





「愛さん、自分で口押さえて。ゆっくり動くから」

「……っ!? ……っ!」





 彰浩が耳元で囁くと、愛は再び首をぶんぶんと振った。彰浩は愛の抵抗を気にせず口から手を離し、肉尻をがしりと掴んでゆっくりと腰を引く。





「んふぅぅ……っ!」





 愛は咄嗟に自分の手で口を塞いだが、ふと彰浩を振り向いた。切なげに歪んだ顔が心底いやらしくて、それでいてとても可愛らしい。彰浩がもう一度腰を前後に動かすと、愛は甘美な快楽に更に眉をひそませ、のろのろと身体を起こした。振り向き、繋がったまま彰浩にキスをせがんでくる。





「んむ……ふぅん……ちゅるっ、ちゅっ、ちゅぴっ、ふぅん……っ」





 愛の瞳の光が霞み、むっちりとした尻がいやらしくくねる。彰浩も腰を動かしながら抽送しているため、緩慢な動作とはいえ突き入れるときも抜くときも毎回違う快感が押し寄せて、彰浩は何度も歯を食いしばった。





(ああもう、エロすぎだろ愛さん……っ)





 そろそろ限界が……と彰浩が思っていると。





『あー、最近女とヤってねえんだよなー、彼女もセフレもいねえし……。ってかなんかさっきからよー、隣の個室からエロい匂いすんだよな。誰かヤってたりして。羨ましい限りだわーははは!』

「……んんん……っ!」





 隣の個室から聞こえる男の声に、愛は悩ましい声を漏らして腰をくねらせ始めた。





「んむ……んぐ……っ!?」





 突然スイッチが入った愛の動きに彰浩は悶絶するが、唇が交わったままであるため言葉で諫めることも出来ない。愛の腰の動きはどんどん激しくなり、腰を打ち付ける音だけはしないように気を遣っているようだった。





 愛の腰が離れてカリが膣道を抉る度に、一度目の射精による精液と白く濁った本気汁とが混ざり合った卑猥な液体が結合部からごぶごぶと流れ出る。





(やば……これ、もう……出る……っ!)





 彰浩は愛の乳房をがしりと掴み、ぴんと張り詰めた乳首をにちりとつまんだ。





「んふぅ……ふぅんんんん……っ!!」





 口の中に直接嬌声を流し込まれ、膣肉の締めつけが最大限に高まる。

 彰浩は最後は自分から腰を引き、一度だけ音を気にせず腰を打ち付けた。





「んくぅぅ……んふぅぅぅううぅぅぅぅぅぅ……っ!!」





 口内粘膜を絡ませ合ったまま、二度目の射精をする。二度目とは思えぬ粘度を持った白濁液が、子宮に再び注がれ膣道を蹂躙し、あっと言う間に氾濫させる。愛は彰浩の口内で何度も鳴き喘ぎ、むっちりとした肉体を何度も波打たせて牡の子種を喜んで受け入れた。





『あー、そろそろ出るわ。んじゃな。……なんかほんとに匂うな……。関わるのもアレだし、さっさと出るか……』





 おぞましいほどの絶頂の余韻に二人が浸っていると、隣にいた男がトイレを出る音が聞こえた。二人きりになった空間には、荒い息遣いと無機質な換気扇の音、そしてむせかえるような性臭が満ち満ちていた。





「……彰浩くん……ねえ、もっとしよ?」

「だめだよ……これ以上したら絶対それしか考えられなくなるから……。お昼食べたら会社行こう。ね?」

「……うん……分かった。……夜、彰浩くんの家に行っていい?」

「……絶対朝までしちゃうって分かってるでしょ。だめだよ」

「うぅ……さっきまでは彰浩くんのがよっぽどけだものだったのに……」

「はは……。……俺も、愛さんとはずっと一緒にいたいよ。でも、今はお互い大変でしょ? 仕事面できちんと今後の身の振り方を考えてから一緒になりたい」

「……っ。……わかっ、た……」

「うん、ありがとう。時間を気にせず出来るようになったら……愛さんの気が狂うまでヤろうね」

「……っ、うん、する、わたし、彰浩くんといっぱいする……っ」





 彰浩の言葉に愛は目を輝かせて、繋がったままもう一度キスをした。





『第10話 会社での二人。』





「おお、豊瀬くん。具合は大丈夫なのかい?」

「はい、出社出来る程度には回復しました。ご迷惑をかけてしまい申し訳ありません」

「構わん構わん。あまり無理はしないでくれよ。せいぜいあと四時間程度しかないのだから、出来ることだけ片付けてくれ」





 男性上司の言葉に愛想笑いを浮かべて、愛は大きすぎず小さすぎない声で返事をした。紳士を装って女性の身体を上から下まで舐め回すように見る下衆な視線は、若い男よりも中年の男の方が遠回しでねちっこい。愛は内心吐き捨てるような気持ちで自分のデスクに座った。





 時刻は一四時。

 彰浩との行為の後、フードコートで食事をして別れ、それぞれ出社していた。





 会社に着く直前、彰浩からLINEが来て『もう着いた? 無理はせずに頑張ろう』というメッセージと共に変なスタンプが送られてきていた。画面越しのテンプレートな言葉なのに、目の前で上司にかけられた言葉の何倍も心に沁みた。





 残りの時間で出来ることを計算して、今日元々やる予定だった仕事から急ぎのものだけピックアップする。他の人の手伝い等のイレギュラーを想定して、ノルマは低めに設定した。





(あー、彰浩くんにもう会いたい……どうしよう)





 キーボードを心地良く鳴らしながら、愛は彰浩のことを思い浮かべる。付き合っている訳ではない。それでも、きっともっと深い関係になれる。そんな淡くて濃密な幸せが愛の心の中を満たしていた。





「あら、豊瀬さん。遅れてきた割に随分と調子良さそうね」

「……お疲れ様です。ご迷惑をおかけしました」





 聞き慣れた、甲高くて耳障りな声に顔を上げると、愛を陰でも表でもイジメている三十代の先輩社員がいた。独身で、常に男日照りであることをアピールしている。給湯室で女性だけで話す際、よく「この会社にはろくな男がいやしない」と高笑いしていた。





 ああ、いやだな……面倒だなあと愛は思う。先程オフィス内の社員には一通り挨拶をしたが、目の前にいる先輩社員は席を外していた。わざわざ乗り込んできた顔は悪意に満ちていて、両隣にいる男性社員は画面に集中するフリをしているのが手に取るように分かる。





「なあに、彼氏とでもイチャついていたのかしら? まったく良いご身分ねえ。羨ましい限りだわ」

「そんなことは……」





 ああ、また始まった……と思った瞬間、愛は二つのことに気が付いた。





 一つは、先輩社員の言葉に対して「『はい、そうなんです』って言える関係になりたいなあ……」と、今の緊迫した状況とはまるで別の、のほほんとした希望を抱いていたこと。





 そしてもう一つは、先輩社員の羨ましいという言葉を聞いた瞬間、両隣にいる男性社員の一人が俯き、もう一人が手で口を押さえたこと。





 二つ目のことに気付いたとき、愛はまた別のことを思い出した。

 数日前に愛が自販機前を通りかかったとき、この二人が話していた内容についてだ。





「あの人いるじゃん、あの人」

「ああ、例の人な」

「そうそう。俺ら男に対してぐだぐだ言ってんなーとか思ってたけど……この間あの人が『この会社にはろくな男がいやしない』って言ってんのが聞こえてよ。いやもうほんと笑っちゃったわ」

「マジで? そこまで図太いのかあの人、もはや尊敬するわ」

「だよな。俺、自分がかっこいいとは思わないけど、そんでもこっちにも選ぶ権利があるっつのって思う」

「ほんとそうだわ。アレはない、アレは」

「ははは」





 そんな会話を、通りがかった愛が聞いていたのは二人とも気付いていた。けれど名前は出していないのだから、愛には分からないと踏んだのだろう。二人は愛に会釈をしただけで何も言ってこなかった。





 そういえばあの時の話題に出てた人って……ああ、この人か。

 目の前で今もねちねちと仕事にまるで関係の無いただの悪口を並べ立てる先輩社員を見て、愛はふと思う。





 ああ、この人も大変なんだな。世の中を呪うのに忙しいんだ。

 人を呪わば穴二つ。





 誰かの悪口を言っている人は、周りにも悪口を言われているのだ。

 そう思った瞬間、愛の心がふっと軽くなった。





 わたしも――この人や、他の女性社員に対して悪感情ばかり抱いていても疲れるだけだ。

 それなら、もっと幸せなこと――彰浩くんのことを考えていよう。

 きっと今頃自分の会社で頑張っているであろう彰浩の顔を思い浮かべた瞬間、愛は思わず頬を緩めた。





「……あなた、人の話聞いてる? 何笑ってるのよ!」

「……すみません」





 しまったしまった、つい微笑んでしまった。先輩社員が眦を吊り上げて怒り始めたところで――不意に、目の前に書類が差し出された。





「え……?」

「お話し中すみません。ちょっと豊瀬さんに相談したいことがあるので……よろしいですか?」





 さっきまでどころか、今までずっと見て見ぬフリをしてきた男性社員が丁寧な物言いをしながら先輩社員に微笑んだ。明らかな愛想笑いで、先輩社員に対して堂々と「うるさいからさっさと出ていけ」と言っているような笑みだった。





「……はいはい、分かったわよ」





 半ばヤケになったような口調で、先輩社員が離れる。ヒールの音がかつかつと神経質に鳴って、彼女の上司に当たる人たちが眉をひそめる。わざわざ自分で評判を落とさなくても……と愛はまるでテレビの中の人を見ているような気持ちで先輩社員の背中を見送った。





「ごめんね豊瀬さん、今まで見て見ぬフリしてた」

「俺も……ごめん」





 書類を差し出してきた男性が頭を下げると、逆隣にいた男性も頭を下げる。





「え、いいですよそんな。……実際、立ち向かおうとしたら色々と面倒でしょうし」





 愛の言葉に、二人が顔を上げて「……だよね」と破顔した。そして二人が愛を挟んでしきりに視線を交わし、ごほんごほんと大仰に咳払いをする。





「あ、あのさ、豊瀬さん。もし良かったら、今日の夜さ、俺たちと……」

「ごめんなさい……今日の夜は用事があって……」

「そ、そっか。ごめんね? 急に……」

「いえ、わたしこそごめんなさい」





 食い気味に二人の誘いを切って捨てて、愛は申し訳なさそうに頭を下げた。丁寧な対応が却って二人の心を抉るというのは、ある程度分かっていながらやっていた。





 別に、具体的な用は無い。

 けれど、直接は会えなくても――愛は彰浩と話したかった。

 出来れば電話が良いな……スカイプとかやってるかな……。





 両隣にいる二人は、きっと前々から愛を助け、あわよくば食事に行こうと考えていたのだろう。それくらい愛にも分かる。その気持ちは嬉しいし、もし数日前までに同じことをしていたら、愛の心の在りようはかなり違っていたかもしれない。





 それでも、今は。

 愛の頭の中は、彰浩のことで埋まっていた。





       ×  ×  ×





 一七時半。終業三〇分前。

 六月に入り、日が没するまでまだまだ時間があるこの時間。

 彰浩は、猛烈な速度で仕事をこなしていた。





 身体は疲れてはいるものの、幸せで刺激に満ちた午前を過ごすことが出来たからだろうか、頭の中は驚くほど澄みきっていた。





 一四時手前に会社に着くと、彰浩は方々に謝りながら今日何をするべきかを考えていた。今日中に絶対に仕留めなければいけない仕事はそこまで多くはない。





 いつもだったら「これを残すと明日に響くし……」と考えて嫌々こなしていた仕事もあるが、今日のクリアな思考で考えると「いや、これは明日以降にちょっとずつ進めれば問題無いな」とあっさり割り切ることが出来た。





 例え土日に泥のように眠ろうとクリアになることがなかった頭が、笑えるくらいに冴えている。何だか幸せな気分だった。





 時計をちらりと見て、今日は久しぶりに定時で帰ろうか……と思う。表向きの遅刻の理由は体調不良なので、言いやすい空気ではあるだろう。普段から信頼を得ている彰浩からすれば、他の社員に比べて比較的容易いことではあった。





「やあ、瀬口くん。調子はどうだい?」

「あ……社長。ご迷惑をおかけしました」





 鼻唄さえ口ずさめそうなほど上機嫌な彰浩に、分厚く不快成分の多い声がかけられる。社長がオフィスに顔を出していて、他の社員が一斉に挨拶をする。





 この、無駄に体育会系な雰囲気も彰浩は嫌いだった。社長に対してだけ、この空気が強制されるのだ。少しでも挨拶が小さい社員がいると、「君ねえ、強制はしないよ? しないけれど、それでは社会人としてねえ……」などとネチネチと説教をするのだ。





 優しい声を繕って、まったく目が笑っていない笑みを浮かべながら。彰浩は社長の顔を見る度にあの作り笑顔を思い出して、内心吐き気を覚えていた。





「身体はもう大丈夫なのかい?」

「はい、おかげさまで。なんとか仕事も出来ています」

「そうかいそうかい。それでねえ、忙しいところ悪いのだけど……」





 社長の言葉と、何やら書類を取り出すような仕草に彰浩は小さく舌打ちしそうになり――同時に、脳裏に愛の顔が浮かんだ。





 ああ、俺はまたかっこ悪いことをしようとしている。

 彰浩は癖になってしまった行為を、直前で強引に止めることが出来た。





 以前、尊敬している歌手がラジオで「かっこよくなるためには、自分がかっこ悪いと思うことをしないようにするのを積み重ねていくのが大事」ということを言っていた。俺は今、彼が言っていたことを実行出来たんだ……と、内心感動を覚えていた。同時に、これも愛さんのおかげだな、とも。





「今度の会議の資料なんだがね、悪いが明日までにまとめてくれると……」

「社長。会議はいつあるのでしょうか?」

「ん? 来週月曜だよ。早く準備するに越したことはないだろう?」

「私もそう思います。ですが申し訳ありません、今日は体調を考慮して早めに帰らせて頂きます。明日と明後日で準備を終わらせて一度お見せする形でもよろしいでしょうか?」

「……ふむ、それもそうか。では、明後日の……」

「一六時までに準備を済ませて報告致します。よろしいでしょうか」

「うむ、それでよろしく頼む。今日はゆっくりしてくれ」

「はい!」





 踵を返す社長を見送り、彰浩は誰にも見えない位置で小さくガッツポーズを決めた。社長のお墨付きで今日は帰れる……! と彰浩は天にも昇るような気持ちでいた。





 時計を見れば、一七時五五分。目の前の仕事は、数分もあればキリの良いところまで進む状態だ。

 ……愛さんと会いたいな……でも俺が制限しちゃったしな……電話くらいなら出来るかな?





 彰浩は、気が付けば会社への呪詛も忘れて、一歩大人になった自分へ素直な賞賛を送り、愛への恋慕の情を募らせていた。





『第11話 愛の家で……。』





 金曜日の夜。





 平日の夜は電話やスカイプで我慢していた二人だが、やはり週末くらいは会いたいということになり、彰浩は愛の家を訪れていた。彰浩が「着替え持って行っていいかな?」と聞いたとき、愛が「う、うん……いいよ」と頬を赤らめながら頷いた仕草は、彰浩を激しく悶えさせるものだった。





 夕食を外で済ませて部屋に入るなり、愛は「シャワー使っていいよ。早く着替えたいでしょ」と言ってきた。「え、あれ? 一緒に入ったりとかは……?」と彰浩がだだをこねる子どものような口調で言うと、顔を真っ赤にした愛に頬をつねられた。





「……すごく良い匂いがする……」





 シャワーから上がり、部屋着になった彰浩が改めて部屋を見渡してぽつりと呟く。聞こえてやしないかとバスルームの方をちらりと見たが、機嫌の良さそうな鼻唄が聞こえてくるだけだった。随分可愛らしい歌声だな……と彰浩はくすりと笑ってしまう。





 愛の部屋はさっぱりしていながらも、所々にぬいぐるみや可愛らしいインテリアがあり、「女の子してるなぁ……」と素朴な感想を抱かせた。





 ベッドに視線を向けて、愛が毎日寝ている場所から特に甘い匂いがすることにどぎまぎしていると……バスルームのドアが開く音がした。彰浩は視線を反対に逸らし、胸を押さえて心拍数が跳ね上がるのを必死で止めにかかる。





「お待たせ……」

「いや、全然大じょう……ぶ……っ」





 平静を装って振り返ると、彰浩は固まってしまった。





 胸元の開いた、ピンクのスカートタイプのナイトウェアが、愛のむっちりとした身体を頼りなげに覆っている。湯を浴びて上気した幼い顔と可愛らしい色の服に、小柄ながら強烈な胸と尻の膨らみ。下着は着けていないのだろう、双丘の頂に二つの突起がぷっくりと浮かんでいた。





「…………」

「……そ、そんなに見ないで……?」





 彰浩が思わず凝視していると、愛は恥ずかしそうに身じろぎをした。「ご、ごめん」と彰浩が目を逸らすと、愛が隣にクッションを持ってきて腰を下ろした。





「彰浩くん、土日って予定ある?」

「ん……無いよ、大丈夫」

「そっか、……外出はよくする方?」

「いや、何かしたいことが無い限りは出来るだけ家にいたいね」

「あはは、わたしもだよ」

「そっか。……近くにコンビニとかスーパーってある?」

「うん、あるよ。どっちも歩いて三分以内」

「へえ、いいね。……それならほとんど家にいられるね」

「……うん、そうだね……」





 彰浩の肩にしな垂れかかった愛が、いつの間にか股間の膨らみに手を添えて亀頭をかりかりと爪でこすっている。彰浩は甘ったるい快感に震えながら愛の肩を抱き寄せ、小さくて形の良い耳を指で撫でる。





 愛は平静を装って会話を続けながらも、二人の言葉の狭間で小さく鳴き、猫のようにすり寄ってくる。肉感のある身体が無防備に甘えてくるのは彰浩にとっては魅力的すぎて、抱きしめる手に力を込めすぎないようにするのに苦労した。





 本当は今すぐにでも繋がりたい。

 けれど、この焦れったさがたまらない。

 そう思ったのか、二人は取り留めの無い会話を続けながら互いの身体をゆっくりと愛撫する。





「彰浩くんはさ、休日は家で何してるの?」





 愛が彰浩の身体を横に向け、女の子座りで正面から向き合う。初めてデートをするような心持ちで輝く愛の表情があまりにも可愛らしくて、彰浩は押し倒すのを必死で抑える。





 彰浩に対する好奇心と愛情が溢れた表情をしているというのに、その手は彰浩の膨らみをいやらしく撫でさすり、前屈みになっているために上目遣いになる。愛の細い指の中で、肉竿がむくむくと硬度と大きさを増していく。





「ん、割と本を読んでることが多いかな」

「そうなんだ。どんな本?」

「ラノベが多い……かな。たまに直樹賞受賞作とか読んだりするけど、文芸作品を読んだ後は結局ラノベに戻るんだよね。愛さんは?」





 質問を返しながら、彰浩は愛のたっぷりと実った乳房に両手を添える。薄くてすべすべの生地の上から量感ある柔らかさに溺れていると、愛の表情が羞恥と甘い快感に染まった。





「ん……っ、わたしも……本を読むことが多いかな。文庫本が多いよ」

「へえ……あ、確かに。いっぱい本があるね」

「やん……見ないでよ」





 彰浩の視線は本棚に向けられ、両手は愛の胸元が開いたナイトウェアを少しずつずり下げていく。愛の言葉はどちらに向けられたものなんだろうな、と思いながら、彰浩はナイトウェアの胸元をずらし、ぷっくりと膨れた乳頭を外気に晒した。





「あん……っ」





 桜色の乳首を指でつまむと、愛の声が甘く上ずった。会話が止まり、二人はじっと見つめ合ったまま、彰浩の指先だけが動く。





「あっ、あんっ、ふっ、んんっ、あぁぁ……っ」





 彰浩の指がくにくにと乳頭をつまむ度に、愛の顔が切なげに歪む。もっとして、もっとして……とせがむ表情に彰浩の嗜虐心が一気に燃え広がりそうになるが――彰浩は乳頭から手を離し、ナイトウェアの胸元をずり上げて元に戻した。





「ベッドでだらだらしたいな。いいかな?」

「……うん、いいよ。いこ?」





 愛は残念そうにしながらも、今なお彰浩の手がナイトウェア越しに自分の乳房を揉みしだいているためかそこまで不満を露わにすることなく立ち上がる。





(可愛いしいやらしすぎるだろ……たまんない……!)





 我慢しきれず、ベッドまでのほんの数歩を歩こうとする愛の豊満な肉尻を掴むと、愛は震えながら振り向いた。





「あ……っ? ……もう」





 愛がお姉さんのように呆れ、彰浩の頬に手を添える。彰浩の手がいやらしく実った尻肉に指をうずめて、ゆっくりと割開いた。

 くち……っと言う水音が聞こえた瞬間、愛の顔が真っ赤に茹だる。





「……ベ、ベッド行こ? ね?」

「……うん」





 思わず笑いそうになるのを堪えながら、彰浩は頷く。短いスカートの中から溢れる甘酸っぱい匂いに、強烈に股間をいきり立たせながら。





 愛はベッドに上がるなり、布団にもぞもぞと潜り込んだ。うつ伏せになると彰浩に向けて布団を上げ、ちょいちょいと手招きする。まるで自慢の秘密基地を見せる子どものような表情なのに、艶めかしいナイトウェアが幼さと激しいギャップを作る。





「お邪魔します」





 やけに慇懃な彰浩の言葉に、愛は目をぱちくりとさせ、「どうぞ」と笑いながら言った。

 愛の体勢に合わせて、彰浩もうつ伏せになる。一人用の枕の端と端に二人の顎が乗って、お互いの二の腕がくにりとぶつかる。





「狭いね、二人だと」

「そうだね、どうする?」

「ん……っ」





 彰浩の質問に明確な返事をせず、愛が頬を朱に染めて身体を寄せてくる。昼ご飯の時に何が良いかを聞いて「何でもいいよ」と言われた時みたいだな……と思いながら、彰浩は右手を愛の背中に伸ばし、右肩を抱き寄せた。愛が満足げに目を細めたことで、彰浩は一安心する。





「なんか本読む? 漫画もあるけど」

「ん、愛さんがどんな漫画読むか興味あるな」

「わかった、じゃあね……」





 楽し気に呟きながら、愛が枕元の小さな引き戸を開ける。少女コミックや大人の女性向けコミックが何冊かずつある中、彰浩も読んだことのある男女共に読まれている雑誌のコミックが細い指に選ばれて枕元に運ばれてきた。





「こっち側持ってて? 読も」

「ん、わかった」





 彰浩が左手で漫画の左端を、愛が右手で漫画の右端を持つ。自然と二人の距離が近付くと、愛の左手が彰浩の股間に伸びてきた。今度は部屋着のズボンの中にするりと入り込み、パンツをかき分けて直接撫でてくる。ベッドと自分の身体の間で、すべすべで細い五本の指が静かに踊る。





「あ、これタイトルだけ知ってる」

「そうなんだ。わたし、主人公の女の子の性格が好きで……」





 取り留めのない会話をしながら、愛がページを進めていく。右手でページを捲る際に彰浩の左手とこつんと当たると、お互いの身体がぴくりと跳ねた。





 二人の初心な反応に連動するかのように、愛の左手はたっぷりと精子を蓄えた睾丸をやわやわと揉みほぐし、彰浩の右手は少しだらしなさのあるいやらしい尻肉をいっぱいに広げた五本指で楽しむ。





「うわ、このシーンエロいね」

「でしょ? わたしも初めて読んだときすごくドキドキしちゃった。ただのキスでもこんなにすごいことになるんだなって」

「うん……うわ、主人公の女の子、腰砕けになってるじゃん。これ絶対イキかけてるでしょ」

「やだ……もう」





 会話の内容が少し露骨になり、二人の手淫もいやらしさを増していく。愛の左手は張り詰めた亀頭をねっとりと舐め回し、甘ったるい快感に彰浩の腰が僅かに浮く。彰浩の右手は愛の淫裂をゆっくりとなぞっていて、中指の腹を割れ目に押し付けるとくちゅりといやらしい音がして愛の腰も浮いた。





「愛さん、ページ捲ってよ」

「うん……捲る……っ」





 淫猥に身体をくねらせながら、子供っぽい声を漏らして愛が震える手でページを捲る。主人公の女の子が大混乱に陥っているモノローグが濃密に書かれていて、淫靡なキスシーンはまだ続いている。強烈に抱きしめられ、全身を痙攣させていた。ほとんど白目を剥きかけていて、それでもキスを続けられている。





「うわ……すごいね、このシーンだけで抜けるよ」

「……そう……だね……っ」





 膣内に中指を侵入させて熱い蜜壺の感触を楽しんでいると、愛の言葉が熱を持ったまま途切れた。細指が肉竿から離れて、彰浩の右手首をそっと掴む。





 離してほしいという意思表示に、彰浩は口惜しく思いながら最後に子宮口をくにくにと押し込んでから指を離した。愛のむっちりした肉尻がびくりと跳ねて、熱く甘酸っぱい愛液がこぷりと溢れ出た。





 愛が無言で横向きになり、彰浩も横を向いて目を合わせる。他人や友人程度ならばとっくに目を離すくらいの時間が経っても、二人の視線は熱烈に噛み合っていた。





「……愛さんってさ、すげえ色っぽい顔してるよね」

「……そう、なのかな?」

「涙袋がエロい、左目の下のほくろがエロい、ぷっくりした唇がエロい。全部エロい。本当に好みなんだよ。可愛い、すげえ可愛い」

「……っ、そんな、はっきりと言われると……っ」





 至極真面目に褒めちぎられて、愛はたまらず目を逸らす。しかし嬉しいのか、ちらちらと流し目を送って彰浩との視線の交錯を求める。





「……ほんと、可愛い」

「……ん……っ」





 彰浩が左腕を愛の枕にして、そのまま引き寄せた。





『第12話 ベッドでだらだらと興じるまぐわい。』





 愛の厚めの唇に自分の唇を重ねて、静かに呼吸を繰り返す。愛は目を閉じていたが、時折彰浩を覗き見るように薄目を開けて、彰浩と目が合うとすぐに閉じるのを繰り返している。彰浩が舌を伸ばすと、愛は唇を引き結んだ。





「んん……っ?」





 彰浩が困惑して呻き声を漏らすと、愛が目を細めて悪戯っぽく笑う。彰浩は愛に対して呆れながらも更に愛おしさが湧いて、唇の合わせ目を丁寧に舌でなぞった。





「ん……ふぅっ、んっ、んっく、ふぅぅ……っ」





淫裂を愛撫するような丁寧でねちっこい舌の動きに、愛の細い喉がか弱げに震える。やがて舌をゆっくりと押し込むと、抵抗をやめて唇が結合をやめて彰浩を受け入れた。彰浩の舌が愛の歯列を上下表裏と丹念に舐め上げ、逃げ惑う舌に絡まる。





「んん……ふぅっ、んふぅん……っ」





 愛の表情が恍惚に染まり、彰浩の両足の間に愛の左足がするりと忍び込んだ。むっちりとした太ももが部屋着越しに彰浩の怒張をこすり上げ、緩やかながらもたまらない快感が彰浩を包み込む。愛は積極的に舌を絡めるようになり、ナイトウェアの肩紐を外した。





 たっぷりとした乳房が重力で下に垂れ、若さのある張りと少しばかりのだらしなさが混在した卑猥さを存分に醸し出す。彰浩は愛の頭を撫でながら更に引き寄せて密着度を高め、たわわな双丘を自分の胸板に押し当てながら右手を愛の尻に伸ばした。





 薄いスカート部分を捲って白くすべすべの肉尻を撫で回すと、愛のくぐもった喘ぎ声が口内から頭蓋へと悩ましく染み渡る。





「ふぅっ、んふぅっ、ふっ、んふぅぅぅ……っ」





 愛の声が震え、瞳が発情の色にどんどん染まってゆく。愛が左手を彰浩の股間に伸ばし、ズボンをずり下ろす。パンツごとずり下ろすと先端にぷっくりと先走りの汁を浮かばせた肉槍が顔を出した。愛のへそに突き刺さるように勃起した肉竿に、愛の細い喉がこくりとなる。





「ん……はぁぁっ、やんっ、かたぁい……すごく、おっきくなってるよ……っ?」





 唇を離すと、愛がとろとろに蕩けた声で卑猥な言葉を囁く。ひどく緩慢な動きで、握力もさして込めていないというのに、愛の手のひらがほんの少し竿を撫でるだけで身体全体がおぞましいほどの興奮に震えてしまう。





 愛の右手はいつの間にか彰浩の乳首を部屋着越しにかりかりとこすっていて、全身で彰浩を気持ち良くしようとしていた。





「あっ、あんっ、指、入ってるぅ……っ」





 彰浩の手が愛の淫裂を後ろから撫で、中指を膣口ににゅぷりと挿入する。ぐちょぐちょに濡れそぼった蜜壺は更なる熱と粘度を生んでいて、中で指を動かす度にぐじゅぐじゅと下品でいやらしい音が鳴る。





 快楽の溶岩に浸った指は、温泉に浸かるよりも早くふやけてしまいそうだ。愛は淫らな音が大きくなればなるほど、可愛らしい声を上げて蠱惑的に腰をくねらせた。





 おでこをこつんとぶつけ、唇同士で触れ、舌でまぐわい、身体を密着させて、互いの性器を弄り合う。

 濃密で、けれど決して互いに深い満足には至らない行為に、二人は時間の経過も忘れて夢中で溺れた。





「はぁっ、ひっ、ひぁっ、あぁっ、あぁん……ふあぁぁ……っ」





 快楽に酔いしれた愛が、彰浩の愛撫で呼吸がおぼつかなる。深くゆっくりと息を吸えば良いものを、愛はどういう訳か彰浩の唇を吸い上げ、舌を目一杯啜った。まるで彰浩の口内にある僅かな酸素を掠めとろうとしているようだ。





 当然そんな行為で呼吸が落ち着くはずもなく、むしろ更に荒くなる。愛はシャワーを浴びた後だというのにぐっしょりと全身に汗をかいていて、下着を着けていないために淫猥な身体つきがはっきりと浮かんで見えた。





「……挿れていい?」





 愛の乳房をこねくり回しながら、彰浩がおもちゃをねだる大人しい子どものような口調で愛に尋ねる。愛は乳頭を彰浩の指の腹でこすられる度に身体を痙攣させながら、ちょっとだけ悪戯っぽく笑った。





「んー……どうしよっかな」

「え……」





 思わぬ返答に彰浩が驚いていると、愛が彰浩からぱっと身体を離す。そして枕を彰浩から奪い取り、うつ伏せになって枕に顔をうずめた。彰浩は横向きのまま一連の流れを呆然と見ていた。





「……挿れたいんだ?」





 愛が焦らすように質問をしながら、スカートが捲れて生尻を晒したままでふりふりと腰を振る。言動と挙動が一致しない妙な様に、彰浩は愛がどんなことを望んでいるかをそれとなく察する。





「……うん、挿れたい」





 言いながら、彰浩は起き上がり、愛の腰の上に跨る。少し肉の余った双丘の谷間に肉竿をこすりつけて、ゆっくりと動かして先走りの汁を塗りこめていく。





「あ……んん……っ。……彰浩くん、わたし……もう、何回かイってるんだよ?」

「……ん、知ってる」





 会話しながら、肉槍の切っ先を谷間の奥へとゆっくりと刺してゆく。愛の身体がぶるりと震えると一度引き抜き、またゆっくりと侵入していく。





「ひぁ……っ。……それなのに、そんな硬くておっきくて太いおちんちんを挿れようとしてるの?」

「……うん」





 肉尻をがっしりと掴み、亀頭の半分ほどが膣口に埋まる。





「あっ、あっ、うぁっ、あぁっ、あぁぁ……っ」





 少し苦し気で、それ以上に楽し気で、何より気持ち良さそうに、愛が喜悦に染まった声を漏らす。愛は肉槍の侵入を食い止めようと腰に力を込めるが、入りかけの亀頭が些細な抵抗に構わずに媚熱を帯びた沼にめり込んでいく。





 愛が日常会話を装って焦らす行為は、予想以上に興奮する。愛は抵抗するフリをしているが、時間をかけているだけで行為の内実は完全なるおねだりだった。





「……わたし、本当におかしくなっちゃうよ? まだ……日付も変わってないよ。金曜日だよ? 会社、月曜からだよ?」

「……そうだね。だから、愛さんのこと、何時間でも、何十時間でも犯せる」

「……っ、犯す、の? セックスするんじゃなくて、犯すの?」

「俺はどっちも楽しいからどっちでも良いよ。……愛さんはセックスがしたいの? 犯されたいの?」

「……っ、……今は、セックス、したいな……あふぁぁぁ……っ」





 愛の言葉を聞いて、彰浩がゆっくりと体重をかける。豊満な肉の谷間に肉竿がすっぽりと埋もれて、いきり立った牡の性器が熱く蠢く地獄のような天国に飲み込まれた。





       ×  ×  ×





 やばい、ずっと挿れてたい……。





 肉壺がもたらすあまりの快感と、互いに全裸で密着することによる溢れ出す安心感に、彰浩は一瞬で虜になった。外でするのもスリルがあって気持ちが良いが、人目も時間も気にすることなく目の前の女性をたっぷりと気持ち良くすることが出来るというのは何にも代えがたい喜びと悦びだった。





「ひっ、はひっ、ひぃん……ひぐぅぅ……っ」





 肉槍に最奥まで貫かれた愛は、彰浩が全く腰を動かしていないにも関わらずしきりに嬌声を漏らす。枕に顔をうずめたまま腰をくねらせ、肉襞が意思を持った獣と化して蠢き、牡の性器を美味しそうに咥え込む。彰浩は括約筋に力を挿れて射精を必死で堪えた。





「……愛さんってさ、ほんとМだよね」

「……そんな、こと……あっ、あっ、あぁぁぁ……っ!?」





 尻肉を掴み、ゆっくりと腰を引く。逃げて行く肉竿を留めようとして、肉襞が強烈に締め付けてカリ首が引っかかる。彰浩が力を込めて膣肉の締めつけに抵抗すると、膣道の締めつけは更に増し、快感に反応した肉竿が大きくなる。





 十センチにも満たない距離の帰り道が、まるで魂を削るような行程になっていることに気付き彰浩は動揺する。





「……ほんとだって。ほら、こんなことされても喜ぶでしょ?」

「え、なに……ふぁぁぁんっ!?」





 両手を離し、尻肉をばちんと叩き、ぎゅっと強く掴む。尻肉に十本の指が食い込むと同時に肉槍を一気に突き入れると、愛が遠吠えをするかのように枕から顔を上げて可愛らしく鳴いた。全身が激しく痙攣し、結合部から白く濁った粘度のある愛液がごぷりと溢れ出す。





「ほら、痛がるどころか気持ち良くしかなってないじゃん。今すげえ締め付けてきたの気付いてる?」

「ち、ちがうのぉ……っ、今のは、彰浩くんのおちんちんが気持ち良かっただけ……ひぃんっ!?」





 さりげなく呟かれた淫語にぞわりときて、彰浩は愛の肉尻を右に左にとはたいた。ばちんっ、びちっと音がする度にたわわな双丘が左右に揺れて、その度に膣肉が食いちぎらんばかりに締め付けてくる。





「……うん、愛さんは変態だね」

「やぁぁ……っ、そんなこと……ないのぉ……っ」

「…………」





 あんまりイジめるのもよくないな……と思い、彰浩は前に倒れ込んで愛と身体を密着させる。





「ごめんごめん。……これから、ゆっくりと色んなことしてこうね?」

「……うん、する。いっぱいしたい。いっぱい……して?」





 愛が顔を向けて蕩けた笑みを浮かべる。淫靡でどこまでも愛らしい笑みに、彰浩は性欲が完全に尽きる日までこの子に精を注ぎ続けたいと思った。





 彰浩が愛の両手を握り、指を絡める。愛は枕に顎を乗せて、「んっ、ふぅん……っ」と安心したような、少し眠そうな声を漏らした。





「ゆっくりするから。いつでもイって良いからね」

「ん……わかった。彰浩くんも……いつでも出していいからね? あと……出してからも、抜かなくていいから」

「……っ、……いいの?」

「……うん、いいよ。わたしのお腹、膨らんで苦しくなるまで出して?」





 愛の言葉に、彰浩の心臓が媚薬の染み渡った糸できゅっと締め付けられた。もう、この子のことしか考えたくない。彰浩の思いが静かに硬く膨らんでいく。





「……あ、愛さん……今のはちょっと、マジでずるい……クるよ……っ」

「やぁん……っ、彰浩くん、またおっきくなった……っ」

「愛さんがそんなこと言うからだよ……じゃあ、トイレ行くまで抜かないからね」

「……トイレ……」

「……そのうち、この中とか口に出してみようか。飲める?」

「ちょ、ちょっと、何言ってるの!? そんなこと出来るわけ……っ!」

「でも、今ちょっと『飲んでみようかな』って思ったでしょ?」

「……………………」

「はは、ごめんごめん」





 愛が顔を真っ赤にして顔を枕にうずめてしまったので、彰浩は愛のうなじにキスをしてゆっくりと抽送を始めた。





「あ……んふぁぁぁ……っ」





 気の抜けた、けれど幸福感が染み渡ったような快感に愛が艶っぽく喘いだ。





『第13話 朝までの過ごし方。』





「ひっ、ひんっ、ひぐぅ……っ」

「んふぁぁっ!? ひっ、へぁぁ……っ、あ、ぐぅぅぅ……っ」

「イク、イク、また、イ、クぅぅぅぅ……っ!」





 気が付けば、カーテンの隙間から朝陽が差し込んでいた。





 初めはうつ伏せになっていた愛と繋がっていたが、時間の経過と共に正常位に戻ったり、対面座位で交わったりと様々な体位で快感と幸福を貪っていた。体位が一周して、今は愛が特に気に入っている対面座位でかれこれ一時間以上交わっている。





 愛は一度甘えだすと、完全にスイッチが入ったのか尋常でないほどに身体を密着させたがった。後背位のときは両手の指を絡ませて艶めかしく腰を突き出し、正常位や対面座位の時は細い足を彰浩の腰に絡み付け、両腕で彰浩の背中を掻き抱き、手のひらはぴたりと後頭部に添えられて、手のひらと唇とで挟み込むようにして激しく口付けを交わした。





 口付けの際は斜めに顔を傾げる形で彰浩の唇に吸い付き、ぴったりと合わせられた唇には一分の隙も無かった。舌を熱心に絡ませながらも、まるで奉仕するように口蓋や歯茎、歯の裏や舌の裏側までもが余すことなく舐られた。





 一度彰浩がトイレに立った時、戻ってきて肉竿が萎んでいるのを見て愛はだだをこねる子どものように抗議をした。そんなこと言われても……と彰浩が困惑していると、愛の提案でどちらかがトイレに行く際は、もう一人も付いていくことになった。彰浩はイエスと言うかはいと言うかの二択しか与えられなかった。気が強いのにやたらと可愛らしく要求されるものだから断るに断れない。





 そんなことしなくても……と彰浩は初めは思ったが、実際用を足すときに愛にじっと見られていると、出にくくはあるが興奮は維持しやすかった。おまけに用を足した直後のまだ尿が払われていない半勃ちの肉竿を、愛は愛おし気に咥え込みあっと言う間にがちがちに戻してしまう。二回目からは用を足した後の楽しみを思って勃起が衰えることが無くなった。その代わり出にくくなって愛にはからかわれたが。





 愛が用を足すときはもっと官能的な刺激に満ちていた。愛が裸のまま便器に跨り、普段一人でするときは間違いなくしないであろうほどに足を開き、目の前に立った彰浩の腰に両手を添えて肉槍を深々と咥えながら用を足した。





 彰浩が重力に少し負けて垂れた巨峰を手で弄ぶと、ちょろちょろと出ていた小水が何度か止まった。愛が快感により上手く用を足せない様子に彰浩は激しく興奮し、愛が用を足し終えるまでに大量の白濁を喉奥に噴き出した。愛が恍惚とした表情で頬をすぼめ、残り汁を吸い出しながらトイレットペーパーに手を伸ばすと、彰浩が細い手首を掴んで止めた。





「綺麗にするね」

「や……んくぅぅっ!? ひんっ、ひぐぅっ! あぁぁ、あぁぁぁあぁぁぁぁっ!!」





愛液と白濁と小水の混じったいやらしい匂いを漂わせる陰部に指を突っ込み、膣肉をかき混ぜる。残っていた小水が溢れ出す愛液に押し流され、愛は狂わんばかりの声を上げた。





「やぁぁぁ……彰浩くんのお汁がこぼれちゃうぅ……っ」

「……っ」





 愛が幾重もの絶頂に身を震わせながら呟いた言葉に息を呑んだ彰浩は、「じゃあ、すぐにまた注いであげる」と言って、愛を立たせ壁に手を付かせ、豊満な尻肉を突き出させて一気に貫いた。最奥にたっぷりと白濁を注ぐと、愛はほとんど白目を剥いて気をやってしまった。





 二人は、濃密で、卑猥で、至福の時間を過ごし続けた。





「あき、ひろ……くん……んふぅぅ……ふぅんっ、んっく、ふぅぅん……っ!」





 今はテレビで朝のニュースを見ながら、四つん這いの体勢になった愛を後ろから貫いていた。綺麗な女子アナに見惚れたことはかつて何度もあったが、目の前で汗まみれになって生々しく喘ぐ女性の魅力には到底敵わないな、と益体も無いことを考えながら彰浩はゆっくりと腰を振る。一晩中交わっていた気だるさと、それでも敏感な反応をし続ける愛を愛おしく思う念とに包まれた柔らかな時間。





「……これが終わったらさ、一回シャワー浴びて寝ようか」

「あっ、んあぁんっ! ……そう、だね……、ここで一回でしょ、浴室で二回でしょ、寝る前に二回、寝ながら……三回くらいかな」

「待って待って、何のカウントしてるの……」





 愛が絶頂する回数ならともかく、射精の回数として数えられていたら洒落にならない……と若干の危機感を抱いた彰浩は、一気に愛を追い詰めることにした。テレビを消し、愛の両手を引く。手綱のように持つと、今までの緩慢さからは考えられない速度で腰を突き出した。





「ひぃんっ!? あぐっ、あがっ、かはっ、ひっ、ひぃぃぃっ!?」





 愛の嬌声がほとんど悲鳴のようになり、腰を打ち付ける度に壊れたように背中を波打たせる。豊乳がぶるぶると暴れる度に、滴る汗がベッドに散った。愛は睾丸が肉芽にこすれると掠れた声で鳴いて潮を噴き、下りきった子宮口は彰浩の精液を待ち望んでいるようだった。





「それじゃ、思いっきり出すよ……っ!」

「あっ、あぐっ、ひぃんっ、だひ、てぇ……あぐっ、あがっ、ひぃぃっ! ひあぁぁぁぁっ!!」





 強姦と見間違えそうなほどの激しい抽送を繰り返し、彰浩は数えきれないほど射精したというのにまたしても粘度の高い白濁が尿道を伝うのを感じた。次の瞬間、歯を食いしばり、目一杯強く腰を打ち付けて――愛の中を、真っ白に染めた。





「あっ、あぁぁ……あぁぁぁあぁぁぁっ!! 熱い、死ぬ、死んじゃうぅ……あぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」





 獣性を帯びた断末魔を上げて、愛は彰浩の肉竿が脈打ち白濁が己の中に打ち込まれる度に激しく身体を震わせた。乾いた大地に水が染み渡るように、愛の子宮が許容量いっぱいまで彰浩の精子を飲み込み、溢れ返った分が結合部から漏れ出てくる。





「はぁ、はぁ、はぁ……っ」





 彰浩がずるりと肉竿を引き抜き、握っていた手の力を緩める。愛は糸の切れた操り人形のようにベッドの上に崩れ落ち、何十人にも強姦されたかのように脱力しきっていた。





「シャワー行こっか。……行ける?」





 ベッドから降りてふらふらとしながらも彰浩が声をかけると、愛が気だるげに顔を向けた。心底疲れ切っているのに、随分と気の抜けた幸せそうな顔をしている。





「うん……行く。でも、ちょっと疲れちゃってて……その、連れて行ってくれますか……」

「なんで敬語なのさ……無理しなくていいのに」

「だめぇ……彰浩くんと行きたいの……」

「……っ」





 愛が甘ったるい声音で言った言葉に、彰浩の股間に血液が集中してしまう。むくりと半分ほど起き上がった牡の性器に、愛はにへらっと笑みを浮かべた。





「彰浩くん……まだ出来るの?」

「これ以上やったら愛さんもやばいでしょ! ほら、行くよ」





 話を無理やり切り上げて、彰浩が仰向けになっていた愛の腕を引っ張る。愛が気だるげに顔を起こすと、彰浩に身体を向けた状態でベッドの上に女の子座りになった。半勃起した肉竿の目の前で、愛がこてんと首を傾げる。





「彰浩くん……ちょっとおっきくなってるよ?」

「……っ、愛さんにそんな顔して見られたら、そりゃ大きくなるって……っ」





 彰浩は羞恥で思わず顔を逸らした。愛はとろんとした表情で肉竿をじっと見つめていて、亀頭の目の前で二、三度口をぱくぱくと開け閉めしただけだ。たったそれだけの行為で、彰浩の肉竿はむくむくと起き上がり、あっと言う間に反り返ってしまう。





「お掃除、しよっか?」





 愛が蠱惑的な声で囁いて、彰浩の腰に手を添える。





「いや、これからシャワー行くんだし、そんなにしてもらわなくても……っ」





 言いながら、彰浩は愛の手に自分の手を重ねた。彰浩の行動と言動が一致しない様子を愛がぽかんと見つめて、くすりと楽しそうに笑う。





「そう? ……そっか、そうだよね」

「そうだよ、わざわざ……そんな……こと……っ」





 愛の口が、当然のように勃起した肉竿を咥え込み、呑み込んでいく。愛液と精液にまみれた肉茎がすぼまった頬に締めつけられて、彰浩は言葉を止めた。





「じゅぷ……じゅぷりゅっ、じゅくっ、じゅぷぷぷ……んっ、ふぅぅ……ふぅぅぅ……っ」





 愛の目が、慈母のように優しく、淫魔のように妖しく蕩ける。彰浩は静かに腰を震わせていた。





「愛……さん……っ」





 子どもだったら迷わず胸に飛び込みたくなるところだが、今の彰浩は己の性器をしゃぶられている。抱き付く代わりに、彰浩の手が愛の量感たっぷりの乳房に伸びた。下から掬い上げるように揉み込むと、愛の顔が喜悦に歪む。





「ん……っ? ふっ、んんん……っ、んっ、くふぅっ、ふっ、んんん……んふぅぅん……っ」





 乳肉に指を沈み込ませる度に、愛はいやらしく身体をくねらせる。情婦のような身のこなしは、彰浩の官能を天井知らずに高めていく。疲れたはずなのに、散々射精したはずなのに。目の前の女性は、一体どれだけの興奮を与えてくれるのか。彰浩はたまらない幸福感に包まれた。





「愛さん……そろそろ……出る……っ!」





 彰浩が腰をがくがくと震わせて限界を訴えると、愛の口が突然離れた。幾本もの銀の糸が肉竿とぷっくりとした唇の間に伸びる。彰浩は突然寂しくなってしまった肉竿の感触に呆然としていると、愛がくすりと笑った。





「彰浩くん、すっかりその気になっちゃったね」

「……愛さんがエロすぎるからだよ」

「そっか。……うん、嬉しいな。……どうする? ここで一回抜く? それともお風呂で今の分もいっぱい抜く?」

「どっちにしろ二回以上出す前提なんだね……わかったよ、じゃあ、お風呂でいっぱいしよう」

「はーい」





 ピクニックに行く少女のように明るい声を上げて、愛が肉竿を再びぱくりと咥える。彰浩はどきりとしたが、愛の口はすぐに離れて、今の行為はたっぷりと塗された唾液を拭うためだったのだと気付いた。





 愛が幾分元気を取り戻してベッドから降りる。彰浩はなんだか自分の元気が吸い取られたような気がした。サキュバスがいたら、本当にこんな感じなのかもしれないな……などと思いながらふらふらと歩き始めると……愛の手が、するりと彰浩の肉竿に伸びてきた。





「……っ!? ……ちょ……っ」





 彰浩が動揺していると、愛はするりと彰浩に身体を密着させてごつごつとした右手を掴んだ。そのまま自分の胸元まで手を引っ張ってきたところで、彰浩は愛の望みを察して目の前の乳房に指を沈みこませる。





「あっ、ぅあ……っ、えへへ……彰浩くん、どうしよう? まだ土曜日の朝だよ? ……いっぱい、しようね?」

「……っ」





 彰浩はここで、何もかも諦めた。

 この人に溺れないなんて、無理だ。絶対に無理だ。

 早く環境を変えないと。俺も、愛さんも。

 彰浩が一瞬思考を別の所に飛ばしている間も、愛は肉竿を愛おしそうに撫でさすっている。





「ほら、早く行こ? じゃないと廊下でびゅるるって出ちゃうよ?」

「擬音が生々しいよ……うん、行こう」





 お返しとばかりに愛の乳首をきゅっとつまむと、愛は蕩けた声で鳴いた。

次回は本日19時に投稿して、そこから19時投稿に戻ります。





『第14話 浴室で貪る肢体。』





「……広いね」





 彰浩は浴室に入ると、思わぬ空間の広さに呆然とした。流石に旅館のように、などとは言わないが、それでもマンションの浴室としてはかなり広い。愛と彰浩が入ってもさして狭さを感じないくらいには広かった。





「お風呂ではくつろぎたくて。なるべく広い所を選んだんだ」





 その分、部屋の広さの割に家賃が高いんだけど……と愛は苦笑する。愛が身体を屈めて浴槽の蛇口を捻ると、お湯が勢い良く溢れ出てきた。真っ白で肉感たっぷりの尻が彰浩の前で求愛行動のように揺れ、肉竿が更に鋭角にそそり立つ。





 愛は背を伸ばして彰浩に向かい合うと、悪戯成功とばかりに微笑んだ。彰浩は目の前の女性に無性に触れたくなり、思わず抱きしめた。





「あん……っ、ふふ、どうしたの?」





 抱きしめられ、首筋に顔をうずめられた愛がくすぐったそうに身を捩る。彰浩の右手が愛の背中をさすり、左手がむっちりとした尻肉を掴むと、愛の表情が一瞬にして艶を帯びた。





「ん……あっ、やんっ、んぅ……っ」





 愛も彰浩の背中に両手を回して、悩ましく撫でさする。彰浩は柔らかな首筋に夢中で吸い付いて、愛も彰浩の首筋に吸い付いた。





「ちゅっ、んんっ、ふぅっ、ちゅるっ、ちゅぴ、んん……あっ、はぁぁ……はぁぁぁ……っ」





 彰浩の両手が愛の尻肉をがっちりと掴み、陰部を割り開くようにして揉みしだく。ぎちぎちに勃起した肉槍の切っ先が愛のへそにうずまり、愛の腰ががくがくと戦慄いた。

 愛が欲情しきった顔で彰浩を見つめ、ふと何かに気付いて視線を落とす。





「……もう」





 愛のへそと亀頭との間に、銀の糸が引いていた。濃厚な先走り汁が、早く目の前の女性に精を注ぎたいと訴えかけているようだ。





「……身体、洗いっこしよ?」

「……うん、ぜひ。あれ? でもそういうのって椅子が一つだとやりづら……って、んん?」





 彰浩の視線が床に落ちると、怪訝な顔をして首を傾げた。

 風呂椅子は、何故か二つあった。





「……なんで?」





 一人暮らしならば、むしろ二人以上で住んでいたとしても、本来であれば風呂椅子は一つで十分だ。もしかして前の男と……? と彰浩は邪推したが、愛が恥ずかし気に頬を赤らめて彰浩に流し目を送ったことで、何か違う事情があると察する。





「……一昨日買ったの。……その、近い内に使うかもって……っ」

「……へえ……?」





 彰浩は、自分の頬が見た事もないくらい緩んでいるのに気が付いた。愛は彰浩の表情を見て、恥ずかしそうに目を逸らす。





「誰と? 何をするために買ったの?」

「し……知らない……っ」





 愛が泣きそうな顔をして、くるりと後ろを向いてしまう。彰浩は嗜虐心がむくむくと湧いて、後ろからきゅっと抱きしめた。





「あ……っ」

「……愛さんって、ほんとエロいよね」

「あっ、やっ、あんっ、んぅぅ……っ」





 量感たっぷりの乳鞠を揉みしだきながら、至極楽しそうな口調で彰浩が言う。





「……エッチな子は、きらい?」

「……ううん。正直、死ぬほど好み」

「やぁぁ……っ」





 彰浩の手が愛の陰部に伸び、くちゅくちゅといやらしい水音が浴室に響く。割れ目をこすられただけで愛の膝が生まれたての子鹿のように震え、被虐心をたっぷりと含んだ表情で眉をひそめた。





「待って、彰浩くん、待って。今はだめ、ちょっと感じすぎちゃうから……っ」

「…………」

「あ、彰浩くん……? ねえ、指、止めてよ、今ほんとにだめなの、だめ、あっ、やぁっ、うぁっ、んくっ、ふぅっ、あっ、うあっ、あぁぁぁ……っ」





 ごつごつした中指が愛の膣口を穿ち、ぐちゅぐちゅと卑猥な音をかき鳴らす。愛は強制的に濃密な快楽の波を脳に叩き込まれ、彰浩が本気で自分を追い込んできていると気付く。





「待って、待って、待って、だめ、だめ、だめだめだめだめイクイクイクイク……あぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」





 愛の身体がどくんと脈打ち、激しく痙攣して崩れ落ちる。彰浩は左腕で愛の乳房を下から掬うようにして抱き止めると――止まることなく膣肉を抉り続けた。





「ひぐっ!? 待って、待って、イってる、イってるからぁっ!? いっ、あぐっ、うぐぅ……だめだめだめだめおかしくなるおかしくなるおかしくなる……あああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!?」





 膣口から大量の熱い液体を断続的に噴き出し、電流を流されたかのように豊満な肉体が幾度も脈打つ。

 ……うわ……エロ……っ。

おとがいを上げ、虚ろな目で天井を仰ぎながら快感に打ち震える姿は、彰浩が息を呑むほど卑猥で美しかった。





「……それじゃ、身体洗おっか」

「うぅ……ばかぁ……っ」





 愛がくるりと振り返り、彰浩をぎゅっと抱きしめた。柔らかな身体を押し当てられ天国のような心地に浸っていると、勃起した肉竿がきゅっと握られる。





「……ばかぁ……っ」





 同じ言葉を繰り返して、愛の手がすりすりと肉茎を撫でさする。五本の指が別々の生き物のように蠢く度に、鈴口から期待の汁が零れ出た。

 彰浩が二つの風呂椅子を向かい合わせになるように置いて、腰を下ろす。





「……なんで二つともスケベ椅子なの……」





 風俗で何度か見た事のある形状に気付き、彰浩は呆れ笑いを浮かべた。愛は徹底的に色欲に溺れたかったのだと気付く。愛は顔を真っ赤にして逸らしていた。





「ほ、ほら、座ろ?」





 誤魔化すように愛が笑い、先に椅子に腰を下ろして彰浩を促す。向かい合って座り、互いの身体をまじまじと眺めると、お互いの顔に心地良い緊張が走った。





 愛がボディソープを二人の足元に置いて、自分の手に塗りたくる。彰浩もそれに習ってボディソープを手に取り、どちらから言うでもなく互いの身体に手を伸ばした。

 首筋を洗い、耳の後ろを洗い、肩を洗う。





「あっ、あんっ、ふぁっ、やあんっ、ふふ……っ、もう……」





 腋を洗うときは、焦れったいくすぐったさにお互いくすくすと笑っていた。

 相手の胸に手を当てると、二人の間の空気が妖しく歪む。彰浩は愛の柔らかな丘の外縁をゆっくりとなぞり、徐々に円の半径を狭めていく。愛は彰浩の胸板を均すように手のひらでなぞる。互いの指が乳頭を押さえると、二人同時にぴくりと震えた。





「愛さん、気持ち良い?」

「あっ、やぁん……うん、気持ち良いよ……? 彰浩くんは?」

「……俺も、やばい……っ」





 彰浩の声が震え、愛の視線が肉竿に向けられる。乳首を弄る度にぴくぴくと反応する肉竿を見て、愛はたまらぬほど嬉しくなった。





 彰浩も愛が内股をこすり合わせて感じている様に興奮して、中指と親指の腹で桜色の乳頭を何度もこすり合わせる。ボディソープの甘い匂いに混じって、淫らで濃厚な女の匂いが立ち上ってきた。





「……愛さんのエッチな汁ってさ、ものすごくやらしい匂いするよね」

「……ちょ、なにいきなりそんな恥ずかしいこと……っ?」

「ごめんごめん、結構濃い匂いなんだけど、正直すごく股間にくる」

「……そう、なの……?」





 彰浩のストレートな物言いに、愛は顔を真っ赤にしながらもちらちらと彰浩に流し目を送り、ぴたりと閉じていた脚を恐る恐る開いた。むわりと湯気が立ち込めそうなほどぐっしょりと濡れた秘部に、比較的濃いめの陰毛がぺったりと貼り付いている。





「……この匂いが、好きなの……?」

「……うん、好き。ほんと好き。今すぐ挿れたいくらい」

「やぁん……っ、だめだよ、今は洗いっこしてるんだから……あっ、んぁ……っ」





 愛の身体を椅子ごと引き寄せてへそに肉竿の切っ先をぐりぐりと押し付けると、愛は楽しそうに身体をくねらせながら、ボディソープをまぶした手で肉茎を撫で始めた。ぬるりとした感触とふわりとした泡の感触が戸惑いと共に快感を運んできて、彰浩の身体がびくりと反応する。





「ここは水洗いで十分だから……彰浩くんは手を洗って?」





 愛が視線で促し、彰浩はシャワーヘッドを手に取りお湯で手についたボディソープを洗い流す。その間も愛は肉竿を十本の指で舐り続けていて、油断すれば射精してしまいそうだった。





「あ……っ、んっ、んくっ、ふぅぅ……あふぁぁ……っ」





 彰浩の指が匂い立つ淫裂に触れると、愛の表情が淫蕩なものへと変わった。二人の身体が自然と近付き、唇が重なり、舌が絡まる。





「んちゅっ、ふぅっ、はむっ、ちゅっ、んふぅ……っ」





 彰浩は空いた左手で愛の乳房を揉みしだき、熱くて柔らかい女体を堪能した。





「あっ、うぁっ、はぁっ、んっく、うぅぅ……あぁぁぁっ!」





 彰浩が射精衝動を何とか堪えていると、愛が先に限界を迎えた。腰を前に突き出して身体を痙攣させたため、彰浩の肉竿に透明な液体が勢い良く噴きかけられ、ボディソープが洗い落とされる。





「愛さん、ほんとにエロいよ」

「んん……っ、なんでだろ、彰浩くんといるときだけなんだよ? こんな風になっちゃうのって。わたし、こんなにエッチだったんだってびっくりしてるんだから……」





 彰浩の理性がぐらりと揺れる。愛はさらりと言ったつもりであろうが、彰浩にとって今の愛の言葉は強烈極まりない媚薬だった。





「……あっ、やっ、そっちは、あぁ……っ」





 彰浩の手が淫裂から蟻の戸渡へと滑り、ひくひくと蠢くアナルに伸びた。すぼまった排泄孔を中指がくにくにを弄ると、愛は子どもをたしなめるような笑みを浮かべるものの嫌がる素振りは見せない。





「……愛さん。もっとここ弄っていい?」





 彰浩の言葉に、愛の細い喉がこくりと鳴る。浴室の中に泳がせた視線を彰浩に向けると、小さく頷いた。





『第15話 アナルで繋がる。』





 シャワーヘッドを愛が掴み、お互いの身体に付いた泡を綺麗に流す。足元の滑りやすさが減ったのを確認すると、愛は腰を上げて身体を反転させて座り、彰浩に向けてぐっと尻を突き出した。





「……う……わ……っ」





 濃いめの陰毛が生えている恥部とは対照的に、毛の一本も無く綺麗な放射状の皴の中心で、美味しそうな穴がひくひくと蠢いていた。仄暗い穴は未知の快感が詰まっていそうで、彰浩の視線が排泄孔に吸い寄せられてごくりと喉を鳴らす。





「それじゃ、触るよ?」

「あ、待って? これを……」

「え……?」





 愛が沢山のシャンプーが並んでいる一角から透明な液体の入った容器を持ってくる。彰浩は容器を手渡されて液体を手にかけてみると、ひんやりとした液体がいやらしくぬめっていた。





「……なんでこれがお風呂場にあるの?」

「……それも、一昨日買ったの」

「……愛さん、底なしだね……。あ、でも、お尻を弄るときってアレかな、洗浄とかした方が良いのかな」

「あ、それは大丈夫……だと思う。さっき……」

「ん、さっき?」





 愛が急にもじもじとし出して、彰浩は訝し気に愛が呟いた言葉を繰り返す。





「その……一回だけ、わたしがトイレ行くときに付いてこなくていいよって言ったときがあったでしょ?」

「ああ、あったねそういえば」





 てっきり、自分の体力面を慮ってくれていると思っていたんだけど……? と彰浩は内心で首を傾げる。





「……その時、一応、……洗ってみました……」

「…………」





 彰浩は、呆れとその何倍もの興奮を抱きながら、愛の柔らかな頬をぷにぷにと突いた。愛は真っ赤になった顔を逸らしたままなされるがままになっている。





「まあ……愛さんがアナルでやる気満々なら俺も遠慮しないよ?」

「ちょ、ちょっと、そんなにはっきり言わないで……っ」

「いや、愛さんの行動の方がよっぽど露骨だよ……」





 彰浩は呆れながら、ローションを塗した手で愛の尻に触れると――自然と、喉が鳴った。ぬめりを帯びた人差し指は先程よりも遥かに容易くアナルへと滑り込み、第一関節がぬぷりと埋まる。





「はぁぁ……っ、うっ、んぅぅ……っ」





 愛の白い背中ががくがくと戦慄く様に見惚れながら、指を徐々に埋め込んでいく。第二関節まで指が埋まり、ぐりぐりと指を押し込んで最終的に根本まで埋まる。





「うぅぅぅ……うぅぅぅ……っ」





 愛が壁に手を付き、獣のような声で呻く。膣とは違う、満遍なく圧迫してくる万力のような締め付けは、異物への深い抵抗をまだまだ示していた。





「愛さん、大丈夫?」

「うっ、ぅあ……っ、う、うん、まだ……うぅぅ……大丈夫、かも……っ」





 愛の声音からして全く大丈夫ではないな……と思った彰浩は、人差し指をずるりと引き抜いた。「あぁぁっ!?」と愛が激しく嬌声を上げたのも気にせず、今度は中指を膣に、そして親指をアナルにねじ込んだ。





「あぐ……あふぁぁぁ……っ!?」





 苦しさと快感がごちゃ混ぜになった感覚に、愛はどう反応したらいいから分かっていないというような声を漏らした。





「ごめんね、親指はきついと思うけど……慣れてる方と一緒にした方が、愛さんも気持ち良くなりやすいかと思って」

「あっ、うんん……言ってることは、わかるけど……彰浩くん、エッチすぎるよぉ……っ、……やぁんっ!?」





 どの口が言ってるんだ、と反論するつもりで、彰浩が右手の動きを速める。元々ぐっしょりと濡れていた上に、ローションを塗られた指で愛撫された膣は彰浩の指を容易く受け入れた。まだまだ不慣れなアナルも、膣の快感により幾分リラックス出来たのか、先程よりも強張りが抜けた状態で親指を受け入れる。





「アナルでまだイケなくても、こっちでならイケるでしょ」

「あぐ……っ!? ひんっ、だめっ、そんなかき回さないで……あぁぁあぁぁぁっ!?」





 彰浩の中指と親指がぐにぐにと折れ曲がり、膣とアナルを思う存分に抉る。慣れない快楽に喘ぐ愛の様子を背中から眺める感覚が新鮮で、彰浩は愛の身体を気遣いながらも夢中で愛撫した。





「んっ、だめっ、変なのぉっ、どっちでイキそうなのかわかんな……あふぁぁぁあぁぁっ!!」





 愛の身体がびくりと跳ねて、椅子の谷間に大量の液体が噴きかけられる。二つの穴がそれぞれ違った形で急激に締まり、彰浩は指を挿入しているだけにも関わらず肉茎の先端から先走りの汁が溢れたことに驚いた。





「あっ……あぁぁ……っ」





 彰浩が指を抜くと、愛は前屈みになって壁に手を付き、絶頂の余韻でいやらしく震える尻を後ろにぐいと突き出した。透明な粘液を帯びたアナルは美味しそうに収縮を繰り返し、仄暗い穴から淫猥な誘惑をしてくる。





「…………」





 彰浩は愛に聞こえないようにごくりと喉を鳴らすと、青筋立った肉竿にローションをとろりと垂らした。亀頭から根本までたっぷりと潤滑液を塗すと、愛の腰を掴み、椅子ごとぐっと前に進む。今なお震えている排泄孔にぬめった切っ先を宛がうと、愛の身体がびくりと震えた。





「え、彰浩くん……うそ、ほんとに……?」

「……行くよ。ほんとに無理だったら言って」

「そん……な……おぁ……んぐぅぅぅ……っ!?」





 亀頭をアナルにずぶりと侵入させると、愛の口から苦悶に満ちた声が漏れた。





(やば……すげぇきつい……っ!)





 どちらにもローションを塗っているため比較的スムーズに挿入が進むが、それでも膣内とは違って肉竿に対して一様に万力の様な締め付けがかかる。男を悦ばせるためではない、純粋に異物を外に押し出そうとする締め付けに――彰浩は強い背徳感と興奮を覚えた。





「お……ご……む、無理、おっきすぎるよぉ……っ」





 愛は苦しそうに訴えるが、言葉以外の抵抗はしてこない。





「ほら、愛さん。力抜いて」

「ひ……あふぁぁっ!? やっ、そこは今は……くひぃんっ!」





 椅子にぽっかり空いている空間を生かし、ぷっくりと充血したクリトリスを指で丁寧に撫でる。愛の身体ががくがくと波打ち、肛門が激しく締め付けきた。





(やばい、ちぎれそう……こんなの、我慢出来ない……っ)

「ごめん、愛さん……一回出すよ」

「はぁ……はぁ……え? 今なんて……んはぁぁんっ!?」





 彰浩がきつく目を瞑り歯を食いしばると、苦悶と快楽の末に大量の白濁を肛門の中に吐き出した。膣と違って行き止まりの無い穴は、大量の白濁を奥の奥まで飲み込んでいく。





「はぁぁぁ……あ……あぁ……っ」





 愛は壁についた手を震わせて、未知の感覚に打ち震えていた。まるで極太の注射器で浣腸されたかのような感覚に戸惑ってはいるものの、僅かながら確実に快感が芽生えてきていた。





「どうしよう、愛さんのアナル、ハマりそう……」

「やぁっ、もう、そんなこと……って、彰浩くん……? なんでまだ動いてるの……っ?」





 射精直後の肉茎がゆっくりと抽送を再開したことで、愛の顔がさっと青ざめる。彰浩は前屈みになって愛の背中にぴとりとくっつき、肛門を穿ちながらも豊満な乳房を十本の指で舐り始めた。





「やぁ……っ!? な、何して……あっ、あんっ、くひぃんっ!?」





 人差し指でぷっくりと膨れた乳頭を弄りながら、精液で滑りの良くなったアナルの中をゆっくりと肉竿で味わう。風呂の湯が溜まってきたために浴室内は温度と湿度が上がり、触れ合っている二人の肌は熱を帯びて、結合部からは生々しく卑猥な匂いが溢れ出ていた。彰浩は愛が背中にかいている汗を何とはなしにぺろりと舐めた。





「あっ、あんっ!? やぁっ、もう、何してるの……よ……あ……あぁぁ……っ」





 首筋や背中にちろちろと這ってくる舌を、愛は戸惑いながらもさして抵抗せずに受け入れる。

 愛が悩ましく身をよじらせるのを見て激しく興奮しながら、彰浩はゆっくりと腰を動かした。





『第16話 アナルに溺れる。』





(こんなおっきいので何度もかき回されたら……おかしくなる……っ!)





 愛は、排泄孔を襲う強烈な異物感と、ゼリーのような濃い粘度の白濁が己の中を揺蕩う感覚に戸惑いながら、少しずつ悦楽を覚え始めていた。





 自分でアナルを弄ったことは今まで何度もあったが、それも精々ローションを塗った指を入れる程度だった。ぞわぞわとする感覚は楽しめたものの、いまいち気持ち良いとまでは思わなかった。





 それなのに、彰浩に愛撫されるとまるで違う電気が愛の中で爆ぜた。アナルにだけ指を入れられている時は若干の快楽を覚え始めた程度で終わったが、膣と菊孔を同時に弄られると強烈に感じてしまい、まるでパブロフの犬のように「アナルは気持ち良いもの」と刷り込まれた。





 そして、彰浩のとびきり大きく勃起した肉竿に貫かれたとき――愛が戸惑いよりも苦悶よりも強く感じたのは、嬉しさだった。





 まだ出会って間もない、けれどどうしようもないくらい恋い焦がれてしまっている男性に初めての穴を捧げられたことが、とてつもなく嬉しかった。彰浩があっと言う間に射精してしまったのは、自分で感じてくれているのだと思えて尚更嬉しくなる。





「やぁ……変な音してるぅ……っ」





 愛が顔を真っ赤にして囁くと、排泄孔を貫く肉槍の硬度が更に増した。白濁が菊孔と肉竿の間を伝って結合部から溢れ出し、ぶちゅぶちゅとはしたない水音を鳴らしている。その音を聞くと、彰浩だけでなく愛も官能が高まった。





「愛さん、後ろってどんな感じなの?」





 彰浩が悪戯っぽい声で聞いてくる。愛が「そんなの言えない……っ」と焦れったく答えて大きな肉尻を求愛行動のように振ると、彰浩の指がクリトリスをきゅっとつまみ、甘美な電流が愛の脳を焼いた。





 まただ。アナルが気持ち良いもの、という刷り込みが更に深まっていく。もう既に、彰浩に排泄孔を貫かれるという行為に溺れかけていると気付いて、それが嫌でも何でもなくなっている自分に驚いた。





「……なんか……彰浩くんのおちんちんが抜ける度に、内臓が引っこ抜かれるような……んはぁぁぁ……っ!? い、意地悪ぅ……あぁぁぁっ!? ……かはっ、はぇ……っ、へぁぁ……っ」





 痺れた脳を何とか回転させて言葉を紡いでいると、愛の言葉に連動するように肉竿が引き抜かれ、愛の腸内が抉られる。カリ首が入口に引っかかっているだけの状態で止まったかと思うと、再び睾丸が淫裂に当たるまでねじ込まれる。





「はぇぁ……ひぁっ、はぁぁぁ……っ」





 ぐじゅり、ぬぷっ、ぷじゅり……っと。





 椅子をくっつけて行われる性行為はひどく緩慢で、ベッドの上と比べたら激しさがまるで違う。しかし初めての排泄孔での結合をこれだけじっくりとされることで、愛は真綿で首を絞められたり、少しずつ水責めされたりしているようにも、快楽漬けになって洗脳されているようにも思えた。





 彰浩の腰が引く度に、内臓が持って行かれる。腰を打ち込まれると、無くなったと思っていた内臓が戻ってくる。何回も、何十回も、それどころか何百回も行われる抽送は、二人に時間の概念を忘れさせて、ただただ性行為に溺れさせていく。





「愛さん、鏡……見てみなよ」

「へぁ……? ……あ……っ」





 彰浩に言われて顔を上げると、丁度愛の目の前に鏡があった。





 そこに映った自分の顔は、自分でないようだった。





 淫靡、妖艶、淫猥。





 一晩中彰浩の肉竿と白濁を受け入れ続けて、更に今まさに排泄孔を肉槍に穿たれているのだ。疲労が濃くにじみ出ていて、化粧もしていない顔はひどくみすぼらしい。





 なのに、なのに、なのに。





(あれ……わたし、化粧しているときより……)





「愛さん……綺麗だよ」

「……っ」





 自分が思っていたことを、彰浩がその通りに口にした。





 愛の世界がぐらりと揺らぐ。

 身も、心も。

 この人に溶かされてしまいたい。





(あ、だめだ、わたし……)





「彰浩、くん……っ」





 愛が振り向くと、彰浩は目を見開いた。

 愛は笑う。自分が今、どんな笑みを浮かべているのかは分からない。けれど、肉竿がむくむくと大きくなったことで、彰浩が自分の表情で興奮したのだと思った。





「……わたし、もう、彰浩くんがいないとだめみたい。後ろの穴も、どうしよう、もう……気持ち良さしか感じないんだよ? 彰浩くんのおちんちんの形、覚えちゃったよ。……お願い、もっとして?」

「……っ」





 愛は、思うがままに言ったが――しまった、とも思った。





「愛さん、そんなこと言われたら、俺……っ!」





 彰浩が普段の優しい表情からは考えられないほど獣欲に滾った顔で肉竿を引き抜き、立ち上がって椅子をどける。愛の身体を後ろから抱えて愛が座っていた椅子もどかすと、愛の身体を浴室の床に四つん這いにさせ、ためらうことなく菊孔に肉竿をねじ込んだ。





「あぐ……っ!? ぅぐっ、ひっ、あぐぁぁっ!? はひっ、おぐっ、おぉぉぉ……んぐうぅっ! ひぃっ! ひぃぃっ!!」





 彰浩が容赦なく腰を打ち付けてきて、愛の声から人間味が見る間に薄れていく。





「何だよその声……エロすぎだろ!?」





 四つん這いになり獣のような声を上げる愛に興奮して、彰浩の声音も荒くなる。肉茎を引き抜くたびに肛門が捲れるのがひどくいやらしくて、腰を叩きつけながら目の前の尻が快感に喘ぐのを夢中になって見つめる。





「あへぁぁ……へぁぁっ、あぐっ、ひぐぅぅっ、はぉぉぉ……あふぁぁっ!」





 愛は顔を上げて、快感に蕩けきった自分の顔に一瞬驚き、肉槍を突き入れられてまたすぐに蕩けさせられる。理性に対して本能が徐々に競り勝っていく様を見るのは恐ろしいほどの背徳感と興奮を伴った。





(うぐ……っ、もう、やばい……っ!)





 彰浩は二度目の限界を悟り、床についていた愛の両手首を掴んで引っ張った。同時に力強く腰を打ち付けると、結合部から白濁が溢れ出した。





「愛さん、愛さん……っ!」

「ひぐぅぅっ!? おぐっ、そんな強く……あぁぁぁっ! あぁぁぁぁっ!!」





 愛が言葉を発する余裕を無くし、獣の断末魔のような声を上げる。彰浩は湧き上がる射精感をぎりぎりまで堪えながら目一杯腰を打ち付け――





「愛さん……出る……っ!」





――肉竿の先端から白濁が噴き出した。





「あ――――あぁぁぁっ!? あつっ、あついぃぃ……ひぐぅぅっ!?」





 始まった脈動に打ち震える愛の手を離し四つん這いに戻すと、左手で愛の尖りきった乳首をきゅっと摘まみ、右手でクリトリスを押しつぶすようにしながら、射精で意識が飛びそうな快感に打ちのめされながらも腰を動かす。





「はぐぅっ!? いやっ、だめっ、乳首とクリさわんないで……今触られたら死んじゃ……死んじゃうよぉぉっ! やぁぁっ、おちんちん動かさないでぇっ! あぁぁっ! あぁぁぁぁっ!!」





 愛が泣き叫び、彰浩の身体を振りほどこうとする。しかし二本の手と肉竿に楔を打ち込まれて、どこに身をよじっても三ヶ所の内どこかの快感が増してしまう。通電の拷問にあっているかのように身体を不自然なほど痙攣させて、愛は直腸内に先程よりも濃い白濁をなみなみと受け入れた。





「あへ……ぁぁぁ……っ」





 永遠にも思えた脈動を終えて彰浩が肉棒を引き抜くと、愛は腕をくしゃりと折り曲げて、彰浩に腰を突き出したまま床に突っ伏した。





「……っ」





 彰浩の前では、アナルが肉竿の太さそのままの穴を開けたままひくつき、愛が身体を痙攣させる度に白濁がごぷりと溢れ出ていた。





「やぁぁ……見ないでぇ……っ」





 彰浩が肛門を両手で割り開いてまじまじと見つめていると、愛は恥ずかしそうに腰をふりふりと振った。その様子がまた妖艶で、彰浩はまたしても勃起してしまい自分の性欲に呆れる。





「……愛さん、どうしよう。毎日愛さんとセックスしたい。お尻もゆるゆるになるまでしたい」

「やぁん……そんなことしたら……わたし、もう彰浩くんとセックスすることしか考えられなくなっちゃうよぉ……っ。自重するように言ったのは彰浩くんなのにぃ……っ」





 愛が甘ったるい声で言いながら、彰浩の手に自分の手を重ねる。しっとりと熱を帯びた手は優しいと同時にどこか官能的で、彰浩はもう我慢出来なくなった。





「……もう一回してしていい?」





 彰浩が腰を上げて、今尚大きく穴を開けてひくつく菊孔に肉槍の切っ先を宛がう。彰浩の言葉に、愛が弱々しく振り向いて目を剥いた。





「……え? ウソでしょ……やぁぁ……だめぇぇ……っ」





 ずぶずぶと侵入してくる男性器に、愛は形ばかりの抵抗を試みた。





 結局この後、彰浩はもう二回腸内に射精した。お腹が妊婦のように膨らんできた愛が「流石にこれは限界!」と言ってトイレに駆け込んだが、彰浩は自分の肉竿を洗ってトイレに乱入し、呆れ顔をした愛にたっぷりとフェラをしてもらった。





 まったくもう、しょうがないなあ……と呆れていた愛だったが、肉茎を舐めしゃぶっている内に興が乗ったのか、用を足し終えた後も彰浩の肉茎をしゃぶり続け、彰浩がもう無理と言うのも構わず二回搾り取った。





「はぁ……気持ち良い」





 彰浩に後ろから抱きしめられた状態で湯船に浸かった愛が、おとがいを上げてのんびりとした声を上げた。





 あの後、流石にやり過ぎたねと二人で苦笑し、もう一度軽く身体を洗ってから湯に浸かった。上がったら愛の髪を彰浩が洗う約束をしている。





「そうだね……。……愛さん」

「ん、なあに?」





 愛がお姉さんのような口調で返事をして、柔らかな笑みを浮かべて振り返る。





「俺、今、人生で一番幸せだよ……。今までのストレスは何だったんだろうって思ってる」





 彰浩が心から口にした言葉に、愛は心底愛おしそうに目を細めた。





「ん、奇遇だね。わたしもそう思ってた。ほんと、幸せ……」





 二人揃って心地良さげな息を吐き、ふと沈黙が訪れる。





「……これから、どうしようかな」

「……そうだね」





 愛が独り言のように話して、彰浩も独り言のように返す。

 お互いの仕事のこと、そして、二人の関係のこと。

 様々な意味を含んだ会話が、これ以上続くことはなく――





「取り敢えずさ、この後はどうする?」

「ん、流石に寝ようよ。彰浩くんにギュッとしてもらいたい」

「……愛さん、可愛すぎ……っ」

「やぁん……彰浩くん、また硬くなってる……っ」





 まだ丸二日間残っている休日を、たっぷりと味わうことに決めた。





『第17話 先に進むためには。』





 翌週の月曜日。





「うーん……」





 彰浩は、昼休みを会社の屋上で過ごしていた。愛が日曜の夜にいつの間にか作ってくれていた弁当をオフィスで食べたかったが、からかわれるのも煩わしいし、社長の空気を読まない仕事の話にも付き合う気は無かったからだ。





 愛が作った出汁巻き玉子に舌鼓を打ちながら、彰浩は今後のことを考えていた。





 俺は幸運だったよなぁ……。





 よく晴れた青空を見上げて思う。少し前までなら、「この青空を見て爽やかな気持ちになっている人がいることが何だか腹立たしい」とさえ思っていたが、愛と出会ったことで今ではまるで子供の頃に見た空と同じような心地良さを覚えている。





 愛とはどうなりたいのか?

 それは、もう答えが出ていた。

 一緒にいたい。それも、ずっとだ。





 きっと愛もそう思ってくれているはず――彰浩は、そう思っている。

 けれど、二人が出会ったのは……互いの荒んだ環境が故のことだった。





 今すぐ一緒になっても、きっと今の環境のままでは足をとられてしまう。縛られて、前に進めない。そんな、確信にも似た予感が彰浩の中にあった。





 考えろ、考えろ、考えろ。





「……からあげ美味いな……」





 愛がわざわざ揚げてくれたからあげの美味しさにびっくりして、思考が一旦中断された。こんな中断ならいくらでも……と思い、彰浩は再び考え出す。





 今一番優先したいことは?

 決まっている。愛と一緒になることだ。





 その目的を達する為の一番の障害は?

 今の会社。効率の悪すぎるシステムを変えようと思ったら、今すぐ社長を更迭して更にそこから十年くらい頑張らないと変わらない。





 そんな努力をするほど今の会社が好きか?

 同僚たちは好きだが、システムが終わっている。そこまでする気にはまずならない。





それなら――





「……うん、辞めよう」





 愛の手作り弁当を食べ終えた彰浩が、流れゆく雲を見上げながら呟いた言葉は、近付いてきた夏の陽気に溶けて消えた。





 彰浩の顔には、清々しい笑みが浮かんでいた。





       ×  ×  ×





「と、豊瀬さん。良かったらお昼一緒にどう?」

「ごめんなさい、お昼は一緒に食べる約束をしてる人がいるので……」

「あ、そうか、ごめんね?」

「いえいえ、こちらこそごめんなさい……」





 女上司との一件以来、何かと愛を食事に誘ってくる同僚に嘘の約束がバレないように、愛は屋上で弁当を食べていた。彰浩と基本的には同じメニューだが、カロリーを幾分抑えた弁当だ。





「どうしようかなあ……」





 自分で作った弁当を食べながら、今後のことを思う。見上げれば青い空が視界いっぱいに広がっていて、彰浩と出会う前に比べると随分と清々しい気持ちで見ることが出来るようになった。





 ちょっと前までなら、青空を見るとまるで「ほら、晴れてやったんだから気持ち良いと感じろよ」と強制されているような気がしていた。





 今後のことを考えると、どうしたらいいか迷ってしまう。

 彰浩とはどうなりたいのか?





 問う前から答えは出ている。

 一緒になりたいに決まっている。





 出会ったきっかけこそ普通ではないけれど、彼の普段の優しさを思えばあの時どれだけ追い詰められていたかは分かる。自分だって泣きだしてしまうほど追い込まれていたのだから。





 あんなに優しくて、一緒にいると安心して、それなのに行為に及べば自分を激しく弄んでくれる……自分の理想が詰まったような、いや、「本当は自分はこんな人を望んでいた」と気付かせてくれたような人だ。おこがましいかもしれないが、きっと彰浩もそう思ってくれているはずだ。





 でも、仕事は?

 彰浩と今の関係に至った理由でもある今の職場環境をどうするべきだろうか。





 彰浩と一緒になるなら、今すぐ転職する他に無い。この場所は、自分の心と身体を縛る枷でしかない。

 でも、新卒時代からずるずると続けてしまっていて、正直この職場を――このビルを出て、新たな環境に飛び込む自分がまるで想像出来ない。





 どうしよう、どうしよう、どうしよう――

 せっかく作った出汁巻き玉子も、考え事のせいでまるで味がしない。





 泣きそうな気持ちになっていると、LINEでメッセージが来た。憂鬱な気持ちのままスマホの画面を見た愛が目を見開く。





『弁当、すごく美味かった。出汁巻き玉子たまんない……。俺としてはからあげが一番のヒットでした。ほんとありがとうね』

「……もう」





 彰浩の無邪気な言葉に、愛の心が優しく解れていく。





『どういたしまして。あれくらいならいつでも作ってあげるよ』

『マジで! ……ああ、もう、出来るなら毎日作ってもらいたいくらいだ……』

『作ろっか?』

『……ほんとに?』

『うん……彰浩くんが喜んでくれるなら、いくらでも』





 ここで、愛の返事に既読がついたものの一旦返信が途絶える。十秒ほどすると、返信が来た。





『今ね、文字でしかやりとりしてないから伝わらないんだけどね、嬉し過ぎて会社の屋上でじたばたしてた』

「……彰浩くん、可愛すぎでしょ」





 彰浩の返信が僅かに遅れたのは、きっと悶絶していたのだろう――そう思うと、愛の口がもにゅもにゅと緩んだ。





『ねえ、今日の夜は会える?』

『もちろん。……三回に抑えとくかな』

『二人で三回して、わたしが口でもう三回ってこと?』

『……愛さん、分かって言ってるよね? 言っとくけど、俺今勃っちゃったからね?』





 彰浩のあけすけな言葉に愛はごくりと喉を鳴らした。





『彰浩くん。……おっきくなったの、見せてくれない?』





 既読がついて、しばらく待つ。今度は一分ほど待っていると、二件のメッセージが届いた。『はい、これ』というメッセージと、写真が添付されていた。





「あ……っ」





 愛は惚けた声を漏らし、身体の奥が燃えるように熱くなった。

 物陰にでも移動したのか、日陰でやや暗いところでぎちぎちにそそり立った肉茎を横から撮った写真だった。





 こんな大きくて凶悪なものが、自分の口や性器、排泄孔まで何度も犯して、抉って、めちゃくちゃにしてるんだ……そう思うと、何もせずとも愛のショーツに染みが出来た。





 愛は急いで物陰を探して駆け込んだ。





『ありがとう。はい、お返し』





 短いメッセージと共に、スカートを捲ってショーツをずり下ろし、薄紅色の襞を広げて見せた写真を送った。

 彰浩からの返事はすぐに来た。





『やばい、エロすぎ。一回抜いていい?』

『だーめ、夜までとっておいて? いっぱいしよ』

『……三回で我慢出来るかな……』

『激しくして、その分短い時間ですればいいんじゃない?』

『あ、なるほど。じゃあいっぱい道具買ってくるね』

『……わたし、色々持ってるから多分それで足りるよ』

『……愛さん、俺を煽りたくて言ってるでしょ。めちゃくちゃにするから』

『わかった、楽しみにしてる。それじゃあそろそろ、ね?』

『うん、わかった。犬みたいに鳴かせてあげるからね。それじゃ』





 彰浩の最後の言葉に、愛の喉が震えた。

 多分、午後からは周りの人がどんな陰口を叩こうと気にならないと思えた。





 彰浩くんに、わたしの身体全部めちゃくちゃにしてもらえる……。

 そう思っただけで、愛の唇は戦慄き、子宮が疼き、菊孔がひくついた。





 彰浩専用となった身体の三つの穴を、唇は直接、他二つはスカートの上から撫でて――愛は、こくりと喉を鳴らした。





       ×  ×  ×





 月曜日、火曜日、水曜日と、二人は毎晩会って、身体を重ねた。





 行為の前後に、彰浩は仕事をどうするのかについて、愛にそれとなく尋ねていた。





 しかし愛は答えを中々出せず、そんなことよりもっとしようよ、などと言って身体を重ねてきた。愛が甘えてくる様はどうしようもないほど可愛らしく、彰浩はそれ以上追及出来ずに愛を何度も抱いた。





 そんな日々が、三週間ほど続いた。





『第18話 愛を陥落させる。』





 金曜日の夕方。





「うん、このままじゃダメだな」





 帰ってからずっと続けていた作業の手を止め、彰浩は独りごちた。





 彰浩は密かに転職の準備を進めていた。大学の友人へ久々に連絡をとりどこか良い職場は無いかを聞き、転職サイトで自分の興味がある業種を定期的にチェックし、既にいくつかは面接の日程を調整している。まだまだ始めたばかりだが、新たな歯車が回り出したという実感はあった。





――でも、愛さんは?





 ふと湧いた疑問により、彰浩の心に薄い靄がかかった。愛は話を聞いている限り、恐らくまだ何もしていない。辞めること自体迷っているのだから、行動に踏み出せないのも分かる。





「でも、だからってあんなどうでも良い付き合いに巻き込まれるんだったら、やっぱり辞めた方が良いと思うんだよなあ……」





 すっかり日が長くなって、まだ夜が訪れるには早い空を見上げる。先日政府が言い渡したプレミアムフライデーなどという酔狂な制度を、彰浩の会社では体裁を気にして無理矢理に取り入れていた。





 本来の終業時刻は一八時で、今日退勤したのは一五時。会社からの通達も今週に入ってからで、業務の前倒しや分担など大して進まないままに金曜日を迎えてしまった。





 来週以降の残業代が丸三時間増えるばかりだろう、と彰浩は心底呆れていた。終業時間を早めるなどというのは、システム上夢物語でしかない。





 それなのに無理に取り入れるのは、一体誰を幸せにするつもりなんだろうと思う。社長や重役が他社にくだらない自慢をするためならば今すぐに止めて、ついでに全員辞めてほしい。





 それでも、その分愛と早く会えるなら……とは思っていた。金曜の夕方から土日にかけてたっぷりと一緒に過ごすことが出来るのは魅力的だ。





 幸い愛の会社もプレミアムフライデーを採用していたが、愛に近付こうとする馬鹿な男どもと、それに群がる女たちの付き合いに無理矢理巻き込まれて早めの夕食を食べに行っているらしい。





 早めにもほどがあるから、恐らくだらだらと飲んで最低でも一八時くらいまでは続くのだろう。『早く来ないと、今日はエッチ無しだよ』と念入りに釘を刺したから、愛は無理やりにでも帰ってくるとは思うが。





 断り下手な愛には、これくらいのことをさせておかないと今後に響く……と彰浩は思っていた。このままではまずい、とも。





 時計をちらりと見ると、一八時を回ったところだった。愛が夕食をとっているなら、自分も食べておかないと行動が噛み合わないな……と遅れて思い至り、何か買ってこようかと考えていると、LINEに着信が入った。画面に表示された『豊瀬愛』の文字に、彰浩の頬が緩む。





『もしもし』

『もしもし、彰浩くん? ごめんね、さっき抜け出して、もう彰浩くんの最寄りの駅についたところ』

『そっか、よかった。あ、でも、俺まだ晩ご飯食べてないから外に行こうとしてたんだよね。最初は隣で俺だけ何か食べてる感じになるけど……それでもいい?』

『あ、そうだったんだ。よかった……』

『ん? どういうこと?』

『え、えっとね? 言うのが遅すぎたんだけど……会社の人たちと行った場所で、私飲み物しか飲んでないの。ずっとお茶だけ飲んでて……。それでね? さらっとだけと今から材料を買って……彰浩くんの家で作っていいかな? 全部合わせて三〇分くらいで着くと思うの』

『……っ、い、いいけど……ていうか大歓迎だけど、怪しまれなかった?』

『えへへ、からかわれたりしたけど、そこは何となくでごまかしておいたから。多分大丈夫かな? 彰浩くんとの時間が最優先なんだから、これくらいはしないとって思って』

『……そっか。うん、ありがと。よろしくね』

『うん。じゃ、また後で』

『うん、また後で』





 通話を切って、彰浩は口を手で覆った。触れている頬が冗談のように熱い。





「あー、どうしよう、一秒でも早く会いたい……」





 独り言を呟きながら、彰浩の足は既に玄関へと向いていた。

 この後、小走りで駆けつけてきた彰浩に愛は驚き、すぐに嬉しそうに笑った。

 一緒に買い物をして、愛が料理するのを手伝って、ローテーブルに並んだ沢山の料理を二人で平らげた。





       ×  ×  ×





 食事を終えて、歯磨きもした二人はソファに深く腰を下ろし、身体をぴったりと寄せ合っていた。愛は緩めの部屋着を着ていて、生活感が溢れている中に感じる強烈な色香がたまらない。





 互いの太ももをゆっくりと撫であっている時間は、この後に訪れる狂ったようなまぐわいへの準備運動だった。愛の眼は伏せられていて、長い睫毛が妖しく揺れる。





 時折彰浩をちらりと横目で見ては、唇をちろりと舐め、細い喉をこくりと鳴らしていた。愛の感情が昂ぶっているのを感じる度に、彰浩の股間はむくむくと膨らんでいく。





(それでも、今日はやらなきゃいけないことがある……!)





 いつもなら、このあとたっぷり三〇分くらい焦らす時間を作り、その後は徐々に互いの身体をまさぐって、あらゆる場所を舐め回して、肉槍を挿入しただけで愛がイってしまうほど官能を高めていく。





 その過程は今まで体験したあらゆる行為に勝るほど楽しいが、今日は明確な目的がある。いつも通りのワクワクは残念ながら味わえそうにない。





「愛さん。俺、会社辞めるよ。来週初めに辞職届を出す」

「え……?」





 愛の手がぴたりと止まるが、彰浩は手を止めない。柔らかな内ももを撫でながら言葉を続ける。





「今転職活動をしてるけどさ、たまってる有給を使ったりも出来るし、そもそも辞めるまでの期間もある程度はっきり言っておけば後に引けなくなるからもっと動けるようになるかなって」

「で、でも、それならすぐに辞めるって言わなくても……っ」





 愛の声が震える。彰浩の言葉に動揺しながらも、徐々に身体の中心部に迫ってくるごつごつした手の感触に悩ましい快感を覚えていた。





「ううん、それだとずるずる続けちゃいそうでさ。今までも、『こんな会社、いつでも辞めてやる!』って思いながら仕事してたんだ。でもそれでも段々給料に見合わない責任ばかり押し付けられて、負担ばかりが重くなっていったから。だから、もうはっきり言っておくつもり」





 彰浩はふっと優しく笑い、愛の肩を抱き寄せた。





「愛さんも、もう辞めよう?」

「……え……っ」





 愛の身体が強張るが、彰浩は抱きしめる力を強める。





「今の会社に未練はある?」

「……ない……」

「すぐに言えちゃうくらいの状況なんでしょ? あとはもう、辞職届を出すっていう意志表示をするだけだよ」

「……でも、でも……っ」

「……愛さんはきっと、躊躇しちゃうよなって思ってたよ」





 だからね、と優しい声で囁いて、彰浩は愛の両肩を掴んで向き直らせた。





「愛さんが『辞める』って言うまで、今日は徹底的に虐めます」

「……へ?」





 彰浩の言葉に、愛は今までの人生で一番間の抜けた声を上げた。





       ×  ×  ×





「ふっ、うぅっ、ふぅぅ……っ」





 ベッドの上で、一糸纏わぬ姿になった愛がくぐもった呻き声を漏らす。

 口にはボールギャグをはめられ、腕を頭の上で重ねて縛られ、足はМ字に開かれた状態で膝周りを拘束されていた。恥ずかしい場所を何一つ隠すことが出来ない状態で、愛は耳まで真っ赤にして身体をよじっている。





(なに、何するつもりなの……!?)





 ほんの数分前。彰浩が濃厚な口付けをしてきたかと思うと、既にたっぷりと濡れそぼっていた膣肉を指で抉り、クリトリスをしごいてきた。穏やかながらも確実に愛の弱いところを突いた愛撫に愛は泣きながら何度も絶頂に達して、身動き一つとれないほど弱ったところで拘束された。





(スース―するし……それに、彰浩くんの視線が……っ)





 彰浩は愛の身体を、一切躊躇することなく――正確に言えば、敢えてあけすけに視線で犯すように見ていた。普段は温和な彰浩が、劣情に滾った目で愛の顔や乳房、白い肌や赤らんでひくつく恥部に視線を注いでいる。





 何も守るものが無い状態で視線に晒されると、乳頭から細い糸が挿し込まれて、身体の奥まで快感が染み込んでくるような気がする。痛みさえ感じるほどの強い視線に、愛の身体はずくずくと疼き、膣口から煮えたぎった愛液が零れ出た。





「愛さんが会社を辞めるって言うまで、今から徹底的に虐めるから。……絶対にイカせないようにしながら、ね」

「……っ」





 彰浩の言葉に、愛の喉奥がぐっと締め付けられた。こんな発情しきった状態では、彰浩の手にかかれば下手をすれば十秒とかからずイカされてしまいそうなのに。





 ……イカせて、くれないの……っ?





 愛が眉をひそませて物欲しげな瞳を彰浩に向けると、彰浩の目が見開き、喉仏の出ているごつごつとした喉がごくりと鳴った。





 彰浩が鞄に手を伸ばし、ごそごそと中を漁り始める。使うと言いつつも、翌日会社があるのにハマったらまずいということで使わずにいた、愛の道具が詰まった鞄だった。





「これがいいな」





 彰浩の手には、細い筆が握られていた。





(あ、やばい……っ)





 愛の身体がぶるりと震えた。

 自分で持っている道具だが、自慰の際に使っても快感が焦れったすぎてすぐに使わなくなったものだった。自分がそんな理由で使うのをやめたということは、彰浩の目的にはぴったりだということになる。





「……愛さん、濡れすぎじゃない?」





 筆を愛に近付けた彰浩が、視線を下ろすと少し呆れたように笑った。今からいつ終わるとも知れぬ拷問のような愛撫を受けると思っただけで、愛の膣からはたっぷりと愛液が溢れ出し、ベッドに染みを作っている。





(……や……っ、わたし、こんな……っ)





 弁解したくても、口を塞がれている為にぶんぶんと首を振ることしか出来ない。





「……じゃ、行くよ」





 彰浩の手が近付いてきた時、愛はあることに気付く。





――辞める、って言うまで止めてくれない?





 ……口が塞がれてるのに、どうやって言えばいいの?





 彰浩が行おうとしている行為は、自分の身体を拘束していることも含めてとてつもなく一方的で、嗜虐的であることに気付いた愛は――こんもりと膨らんだ恥丘を、ぶるりと震わせた。





『第19話 どろどろに蕩けていく。』





 彰浩が筆で真っ先に責めたのは、愛の耳だった。





「ふっ、んんん……っ!」





 細い筆先がそろりと耳の中に入り込んでいくと、愛は切なげに眉をひそめて身体を震わせた。彰浩が筆を持った指をくにくにと曲げる度に毛先が生き物のようにうねり、愛の耳介を犯していく。





「うぅ……うぅぅぅ……っ」





 愛はおとがいを上げてぶるぶると震え、身体を紅潮させていく。どんどんいやらしくなっている乳房の頂はぷっくりと朱く腫れていて、膣口からはまるで直接淫裂を愛撫されているかのように愛液が溢れ出している。今与えられている快感だけでなく、これから襲い来る快感まで前借りして興奮しているかのような痴態だ。





 片耳を散々嬲ったあと、もう片方の耳も犯す。今度は左手で愛の頭をくしくしと撫でながら愛撫をすると、頭を撫でられることによる安心と耳に与えられる快感とで思い切り混乱している様子が手に取るように分かった。





「うぅぅ……うぅぅぅ……っ」





 愛は身体を小刻みに震えさせ、涙目になって喘ぐ。責めようと思えば筆で絶頂に追いやることも容易いが、彰浩は敢えてそうしなかった。





「ほら、愛さん。辞めたくなった?」

「うぅぅ……うぅぅぅ……っ」





 彰浩の言葉に、愛はじっと見つめ返すばかりで何も応じようとしない。





――愛は単に、踏ん切りがつかないでいるだけだ。彰浩はそう思っていた。だから、理由を付けて、「わたしは辞めていいんだ」と思わせてしまう。





 それで良い、と彰浩は考えている。肉体に刻み込んだ快楽を原因とした発言であっても、辞める、辞めていいんだ、と本人が思うことが重要なのだと。





(愛さんを落とすまで絶対イカせない。そして、落ちたら……もう、何も考えられなくなるくらいめちゃくちゃにする)





 彰浩はこれからのことを思い、激しく下腹部を滾らせた。愛の視線が彰浩の膨らみに向けられて、頬が赤らむ。愛の反応に気付いた彰浩は、思わず口角が吊り上がりそうになるのを堪えた。





「残念だな……。愛さんが辞めるって言ってくれれば、いくらでも味わってもらいたいんだけど」

「うぅ……うぅぅ……っ」





 彰浩の煽るような言葉に、愛は可愛らしい顔をくしゃりと歪める。筆がするりと首を撫で始めると、じっとりと汗ばんだ肢体が艶めかしく跳ねた。





       ×  ×  ×





(おかしくなる……おかしくなる……やだぁ……っ)





 時計が見えないから正確には分からないが、愛の感覚では恐らく一時間は経過していた。

 彰浩は徹底していた。

 愛の耳から始まった筆での愛撫は、喉、肩、鎖骨、腋、腹、脇腹、へそ、尻、太もも、ふくらはぎ、足の裏まで来た後、そこまで来た道を綺麗に辿っていく――という流れを繰り返していた。





(なんでぇ……なんで触れてくれないの……っ!?)





 彰浩の筆は決して乳房や陰部に触れず、毛先に愛液が纏わりつくことがない。汗ばかりを吸い込んだ毛先がひたすらに愛の柔肌を撫でていく。





 もっと、気持ち良いところに触れてほしい。

 何より、彰浩に触れてほしい。





「うぅぅ~~……うぅぅぅ~~……っ」





 これまで当たり前のように触れてきた彰浩が、目の前にいるのに、とてつもなく遠い。





(やだ、やだ、やだぁ……っ)





 悩まし気に身を捩りながら、愛はぽろぽろと涙をこぼす。彰浩がごくりと喉を鳴らしたが、愛には気付く余裕も無かった。





「愛さん……っ」





 彰浩が微かに上ずった声を上げ、筆を置く。徹底的に焦らされてぐったりとした愛に覆いかぶさってくると、愛は歓喜に身を震わせた。愛の口にずっと噛ませていたボールギャグを外すと、ねっとりとした銀の糸が伸びる。





「彰浩くん、彰浩くん、彰浩くん……っ」





 解放された口で愛が真っ先に言葉にしたのは、愛おしい人の名を呼ぶことだった。彰浩がすっと唇を近づけてきて、愛は餌をもらうひな鳥のように必死で唇を近付けて従う。





「ん……っ」





 唇を重ねて熱を交わし合うと、愛の身体の中に泣きたくなるほど温かい熱が染み渡ってくる。もっと、もっと……と欲しがって舌を伸ばすと、彰浩は僅かに舌を絡めただけですぐに離してしまった。





「……なんでぇ……っ?」





 愛が顔をくしゃくしゃにして、おねだりするように唇を突き出してくる。彰浩は目を見開いてごくりと喉を鳴らし、激しく勃起した亀頭から先走りの汁を溢れさせた。





「……愛さん、今だとキスだけでイっちゃいそうだからね。そこは徹底しないと」

「そんなぁ……っ」





 彰浩は言いながら、愛の四肢の拘束を解いた。





「流石に縛ってる時間が長すぎたね、ごめん。痛くなかった?」

「ううん、大丈夫。……彰浩くん、優しい……っ」





 少しだけ子どもっぽくなった声に、彰浩がくらりとよろめく。それでも今の愛には彰浩の反応の機微は気付けなかった。





「ほら、早く辞めるって言わないと……もっとつらくなっちゃうよ?」

「うぅぅ……うぅぅぅ……っ」





 彰浩の言葉が、愛の身体の表面から奥底まで残さず犯していく。





――早く言っちゃえ、言わないともう我慢出来ないでしょ?





(でも、でもぉ……っ)





 脳内に響く本能の言葉に、愛は未だに戸惑っていた。





 彰浩の両手が愛の豊満な乳房の縁に触れる。





「ひん……っ!?」





 乳房に触れたとは言いづらいが、それでも愛は反射的に喜悦の声を漏らした。

 彰浩が乳頭にキスをするように口を近付けると、愛の細い喉がこくりと鳴る。彰浩は口付けをすることなく、愛の乳頭にそっと息を吹きかけた。





「あふぁぁぁ……っ!?」





 拘束を解かれた両手がシーツを握りしめ、足をもじもじとこすり合わせる。もわりと牝の匂いが漂って、愛液が溢れ出したのだと分かった。





(息を吹きかけただけでこの反応か……もう限界だな)





 彰浩は考えつつも、時間の長さを変えながら繰り返し張り詰めた乳首に息を吹きかける。





「ひんっ、んふぅっ!? んっく、ひっ、あふぁぁっ! やぁ……やぁぁ……っ」





 身体を横に向けて逃げようとする愛を押さえこみ、更に口を近付けて息を吹きかける。





「うぅぅぅ……うぅぅぅ……っ」





 抵抗をやめてびくびくと身体を震わせる愛を見て、彰浩は服を全て脱いだ。





「……う……わ……っ」





 今まで見たことがないくらいに硬く張り詰め、先走りの汁が根本まで垂れている肉竿に、愛はごくりと喉を鳴らして魅入られた。媚熱を帯びた視線に肉竿が心地良く焼かれる感覚に浸りながら、彰浩は愛の手を肉竿に導く。





「……やぁん……っ」





 愛が上ずった声を漏らし、絹糸のような指を肉竿に絡ませる。皮で亀頭を包むようにするとくちゅくちゅといやらしい水音がして、愛の唇が震えた。





「愛さん、……舐めて」

「……うん……っ」





 愛の瞳が甘ったるく蕩けて、にへらっと気の抜けた笑みを浮かべる。淫蕩な表情を見ただけで、鈴口から更に先走りが溢れた。愛を焦らし続けた時間は、彰浩にとっても自分を焦らす時間に他ならなかったのだと今更ながらに気付く。足を広げて座った彰浩に、愛が四つん這いで近付いてきた。





「……ちゅっ、ちゅむっ、んふぅぅ……ちゅるるる……ちゅるるる……っ」

「……ぅ……おぉ……っ」





 愛はまず鈴口にキスをすると、溢れ出している先走りの汁を吸い始めた。根本まで垂れた汁を竿から睾丸まで唇を這わせて丁寧に舐めとり、再び溢れてきた汁を美味しそうに啜る。





「……んむ……ふぅぅぅ……っ」





 愛が喜悦で目を細めて、厚い唇で亀頭を呑み込んだ。カリ首をぴっちりと締め上げて鈴口に舌先を割り込ませると、彰浩はたまらない快感に背筋を反らせる。





「ふ……っ、ちゅぷ、ちゅぴ、んふぅ……んっ、んくぅぅ……ちゅぷりゅ……っ」





 艶めかしい唇が竿を締めつけ、熱くぬめった口内に肉竿が呑み込まれていく。自分の性器が、愛しい人に食べられている――そんな錯覚を覚えて、彰浩はぶるりと震えた。愛の表情がとろとろに蕩けて、瞳に喜悦が滲み始める。





「……っ? ……愛さん……?」





 肉竿をしゃぶる以外の音が、それもとびきりいやらしい水音が聞こえていることに気付く。彰浩は愛の手元に目をやった。





「んふぅぅ……っ?」





 愛は、淫裂を弄っていた手を止めると、悪戯が見付かった子どものような表情をした。申し訳無さそうな、それでいてとても可愛げがある表情。彰浩はぞくりとした。





「だめだよ……自分で弄っちゃあ」





 子どもをたしなめるような口調で言いながら、彰浩が愛の両手を取り、指を絡ませる。指の間に熱い愛液が垂れて、いやらしい匂いが鼻腔をくすぐった。





「ほら……舐めて?」

「んふぅぅぅ……っ」





 彰浩が愛の手ごと後ろに引っ張ったため、愛の口が青筋立った肉竿を根本まで飲み込んでいく。苦悶に目を細めているのに、その表情はどこまでもいやらしい。





「んっ、んぐっ、じゅぷっ、じゅぷりゅっ、ふぅんっ、んふぅぅ……っ」





 うっとりと目を細めてはしたない音を立てて肉竿を啜り、唇で締め上げ、汁を舐めとる。首を傾げるようにして角度を変えると、内頬が亀頭をぐりぐりとこすってたまらない愉悦が込み上げた。





「あ……やば……っ、愛さん、俺、もう……っ」





 彰浩が切なげな声を漏らすと、愛は三日月のように目を細めて頬をすぼませる。ぐじゅっ、じゅぼぼっ、じゅぶりゅりゅっと卑猥な音を立てながら吸うと、彰浩の下腹部の奥にあった白濁のマグマが一気に尿道を駆け上がった。





「うぐ……出る……っ!」





 彰浩は射精寸前の感覚に顔をしかめ、手をぐいと手前に引っ張った。愛の口が限界寸前の肉竿を根元まで飲み込み、亀頭が喉奥に当たると――下腹部が跳ねて、白濁が爆ぜた。





「んぶぐぅぅぅ……っ!? んぶぅっ、ぐぶっ、ごぶっ、おぶっ、ふぅぅ……ふぅぅぅ……っ!」





 愛はむせて嗚咽を漏らしながらも必死で精液を飲み込み、ゆっくりと口を前後させて僅かな残り汁も絡めとった。明らかにまともな呼吸が出来ていないというのに、自分の精液を余すことなく飲み干していく艶姿に、彰浩は瞬きを忘れて見入っていた。

あと数話で完結します。





『第20話 陥落。』





「……ぷはっ、……あぁ……っ?」





 彰浩に肩を掴まれると、愛は後ろに押され仰向けになった。手を頭の横に置き、足をだらしなく広げ、まるでひっくり返ったカエルのような格好になる。





「うぅ……うぅぅ……っ」





 彰浩が愛の柔らかな内ももを押さえ、淫裂を割り開く。口淫を通じて更にいやらしく愛液が溢れた淫裂が、彰浩に見つめられて更に濡れそぼっていく。





「……舐めただけでこうなったの? 愛さん、本当に変態だね」

「やぁぁ……言わないでぇ……っ」

「あ、また溢れてきた。なに、なじられて興奮してるの?」

「やぁぁ……ひっく、やぁぁぁ……っ」





 彰浩の手がゆっくりと内ももをさすると、愛の腰がいやらしくくねる。逃げるように見せかけておきながら、彰浩の手が淫裂に近付くように導いているのが彰浩には丸わかりだった。すんでのところで淫裂に触れないようにしながら、彰浩は発情しきった淫裂に肉槍を近付ける。





「これ、欲しい?」

「……っ、…………っ」





 彰浩の言葉に、愛は視線を泳がせ、首まで赤くしながらも、やがてゆっくりと頷いた。





「そっか。でも、会社を辞めるって言うまで挿れてあげないよ」

「……あ……やぁぁ……っ」

「もったいないなぁ、今の愛さんの中、死ぬほど気持ち良いんだろうなあ」

「あ、あ、あぁ……っ」

「もっと大きくなって、熱くてぬるぬるした中をぐちょぐちょ音を立てながらかき回せるんだろうな。あーああ、最高だと思うんだけどなぁ」





 彰浩の言葉に、愛は涙目で両手を肉竿の下へ伸ばす。彰浩は愛の両手首を掴んで動きを止めると、にこりと微笑んだ。





「どうする? 辞めるって言って、この場で頭がおかしくなるくらいセックスする? それとも、迷ったままでスッキリも出来ないまま今日は寝る?」

「……ぁ……っ」





 愛の瞳が、ぐらりと揺れる。

 彰浩は、一気に畳みかけることにした。





「どうする? 辞めて、死ぬほどイク? 辞めないで、悶々とする? さあ、どうする?」

「あ……あ……っ」





 愛の理性の皮を丁寧に、一枚ずつ剥いて、本能を露わにする。





「俺は愛さんとしたい。愛さんの口だけじゃなくて前の穴もアナルもめちゃくちゃにしたい。一晩中セックスして、寝たままセックスして、起きてもセックスして、愛さんが何も喋れなくなってもずっとセックスしたい。キスしながら何時間でもセックスしたい。愛さんは? 俺と、セックスしたくない?」

「うぅぅ……うぅぅ……っ」





 彰浩のあけすけな言葉が愛の心を抉り、本能に火を点け、決断を迫る。





「愛さん、一緒に辞めよう。細かいことは後で考えればいい。まずは、辞めるって決めて、いっぱいしよう」

「うぅ……あぁ……っ」

「愛さん。……俺、愛さんのこと、好きだよ。本当に好き。これだけは先に言っておくかな。仕事を辞めたら、一緒に暮らそう?」

「……っ」





 愛の瞳が潤み、眉が切なげにひそめられ、唇が震えた。





「……る……っ」

「ん?」

「……め、る……っ」

「もっと、はっきり言って?」

「……わたし、会社……辞める……。わたしも、好き……。彰浩くんのこと、好き、大好き……っ。一緒に暮らしたい……いっぱいセックスしたい……っ」





 愛の言葉に、今度は彰浩の瞳が潤んだ。愛が身体を起こして、彰浩の首にするりと腕を回す。





「彰浩くん……わたし、辞めるって、言ったよ?」





 だから……ね? と、今まで彰浩が見たことのない、とびきり素敵で、とびきり淫猥な笑みを浮かべた。





「わたしのこと、壊して?」





 劣情を煽るシンプルな言葉に、彰浩の世界がぐらりと揺らぐ。我慢に我慢を重ねてきた身体の奥底から湧き上がる欲望に歯止めを掛けていた壁が、いとも簡単に溶けて消えた。





「……愛さん……っ!」





 愛の名前を呼ぶのと同時に、彰浩は猛り狂った肉槍で愛の中を貫いた。





       ×  ×  ×





「ひぐぅ……っ!」

「うぉ……っ!?」





 肉竿を一気に最奥まで突き入れた瞬間、愛は顔の横のシーツを掴んでおとがいを上げ、腰を壊れたように跳ね上げた。大量の愛液が溢れ、結合部をぐっしょりと濡らしていく。





(なんだ……これ……っ!?)





 彰浩の性器を待ち望んでいた膣内の締めつけは尋常ではなく、何十本もの指が締めつけてくるように蠢いた。ある指は優しく撫で上げるように、またある指はきつく絞めあげるように。突き入れた後に彰浩が腰を動かすのを躊躇うほど、狂おしい快感が肉竿から全身へと伝播していく。





「へぁ……はぁぁぁ……っ」

「うっ、ちょ、ちょっと、愛さん……っ!?」





 一突きで絶頂に達した愛の眼は虚ろで、表情筋をだらしなく緩めて汗だくになっていた。てっきり絶頂の余韻に浸るかと思いきや、もっと快感を貪ろうとして腰を淫猥にくねらせ、肉竿を根本から鈴口まで味わってくる。





「彰浩、くんん……好き、好きなのぉ……もっと……して? イカせて? わらひ、だいじょうぶらからぁ……っ、ね? ね?」

「……っ」





 長時間の焦らしと盛大な絶頂により愛の体力はほぼ尽きかけているというのに、どこまでも穏やかで淫猥な笑みを浮かべてくる。





「……愛さん、もう、止めないから」





 彰浩が低い声で囁いて、愛の手を握る。指を絡めながら愛の顔の横に押し付け、逃げられないようにした。彰浩の意図を察した愛の顔が一瞬強張り、膣肉もきゅっと締めつけてくる。





「……うん。……いっぱい、しよ?」





 愛の言葉を合図にして、彰浩は自身の限界も考慮せず――一気に腰を引き、子宮口を再び突き上げた。強烈な絞めつけに構わず、一心不乱に腰を振る。





「んくぅぅ……あふぁぁぁっ!? あっ、あぐぅっ、ひぃっ!? はぁぁっ、んふぁぁぁっ!!」





 愛が目を見開き、ぶんぶんと首を振って喘ぎ狂う。目からは涙が零れ、まるで無理矢理襲われているような反応を見せた。それでも両脚はいつの間にか彰浩の腰に巻き付いていて、彰浩が腰を引く瞬間は脚を緩めて、突き入れる瞬間はぎゅっと力を込めてくる。





「愛さん、愛さん……一回、出すよ……っ!」

「へぁぁ……うん、いいよぉ……っ、いっ、はぐぅっ、ふぅん……はぁうぅっ!? あぁぁぁああああぁぁぁぁっ!? あつっ、熱いぃ……熱いのぉぉぉ……っ!」





 子宮口と亀頭をキスさせた状態で、彰浩が一度目の射精をする。濃厚でゼリーのような粘度を持った白濁がたっぷりと子宮に注がれて満たしていき、膣道にも溢れていく。





 己の中に精液が満ちていくことに悦ぶように、膣からはたっぷりと愛液が溢れ出してきた。下弦の月のように美しく背筋を反らせて絶頂に浸る愛の艶姿は、射精の苦悶にある彰浩の視線と意識を完全に射止めた。





「はぁぁぁ……はぁぁぁ……あひぃんっ!? 彰浩くん……んはぁぁっ!? すごいぃ……出したばっかりなのに、うご、けるのぉ……っ? かたいしおっきぃまんまだぁ……すごい、きもちいい……好き、すき、好きぃ……っ」





 射精で竿全体が剥き出しの神経のようになった状態で、彰浩が歯を食いしばりながら腰を振る。あまりにも可愛らしくていやらしい愛の肢体を、今この瞬間に意識が飛ぶまで味わわねば気が済まなかった。





 愛は舌ったらずな声で囁き、力のない笑みを浮かべてくる。一挙手一投足が彰浩を激しく興奮させ、官能を高め、勃起を促してくる。





「愛さん……愛さん……っ!」





 彰浩が両手を愛の腰に添えて僅かに持ち上げると、クリトリスの裏側、隘路のざらざらした部分が強烈にこすられた。





「あふぁぁっ!? ひっ、あぐっ、そこ、いっぱい突くの……だめぇっ! おかしく……いひぃんっ!? イク、イク、イク、イク、イっちゃうよぉ……またイっちゃ……うあぁぁぁぁぁぁっ!! うぁぁぁぁぁっ!!」





 愛が獣のような声を上げて、狂おしいほどに喘ぐ。抽送を繰り返したことにより白濁が結合部から溢れ出し、濃厚な牡と牝の匂いが混ざり合う。狂おしい本能を互いに満たし合うことで、ベッドの上は甘美な地獄と化していた。





「あひっ、ひぐぅ……っ! あきひろ、くん……わたし、イってるんだよ? ねえ、わたし、もう息するのもきつくて……あぐぅっ!? やらぁぁ……突かないでぇ……もう、おちんちんで中かき回さないでぇ……っ」





 限界を訴える言葉とは裏腹に愛の表情は蕩けきっていて、ぐったりと力が抜けた後も腰を懸命にくねらせ、互いの快感を助長しようとしてくる。挙動と言動が壊れたように一致しない様はどこまでも淫靡で、彰浩は恐ろしいほどの官能と幸福を感じる。





「愛さん、自分で胸とクリトリスを弄ってよ。もっと気持ち良くなりたいでしょ?」

「……っ!? 彰浩くん……っ? それは……流石に……っ」

「いいから、はやく」

「……ひぃぃんっ!? わ、わかったからぁ……っ! 一番奥、コツコツってしないで……あふぁぁぁっ!!」





 容易く絶頂に追い込まれ、愛は朦朧とした意識の中で彰浩の命令に従う。彰浩が腰を引いて愛しい人を見つめると、愛の左手が乳房に、右手がクリトリスに伸びていく。





 もじもじと上目遣いで彰浩を見つめると、乳頭と肉芽を二本の指できゅっとつまみ上げた。彰浩が腰を思い切り突き入れると――二人の身体が同時に跳ねた。





「あっ、あぁっ、あぁぁぁぁっ!? 熱い、彰浩くんのおちんちんの汁、あつっ、あひっ、ひぃぃんっ!! あふぁぁぁぁっ!!」

「うぐぅぅ……っ!! 愛さん、手でもっとこすって! 止めないで!」

「むり、無理だよぉ……ひぃんっ! ひぁぁぁっ!? 彰浩くん、腰振らないでっ! だめぇっ! おかしくなる、おかしくなるからぁ!! あぁぁぁっ! あぁぁぁぁっ!!」





 二度目の射精をしている間も彰浩は腰を振り続け、愛は無理と言いながらも乳頭とクリトリスを愛撫し続ける。二人の身体が通電したように激しく痙攣して、頭が真っ白になるような快感が何度も何度も駆け抜けた。





「あっ、だめっ、出ちゃう、漏れちゃう、やらぁぁ……っ」

「なに、おしっこ漏れそうなの? 愛さん、気持ち良すぎて漏らしちゃうんだ?」

「やぁぁぁっ、ひっ、あぐぅっ、言わないでぇ……言わないでぇ……あぁぁあぁぁぁぁ……っ!!」





 愛が顔を真っ赤にして、両手を離して顔を覆う。直後、結合部に生温かい感触が広がり、仄かにアンモニアの匂いが漂ってきた。





「……すごいね。本当におしっこ漏らしちゃったんだ」

「やぁぁぁ……ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ……っ」





 愛が叱られた子どものように必死で首を振る間も、シーツに染みが広がっていく。自分の匂いとは違うアンモニア臭が鼻腔をくすぐると、彰浩の背筋がざわざわと波打った。





「……ひぃん……っ」





 ゆっくりと肉竿を抜くと、彰浩が愛の小さな身体を抱きしめる。汗をたっぷりと吸った髪をくしくしと撫でると、愛の身体からくったりと力が抜けていく。





「愛さん、うつ伏せになろっか」

「……後ろから、犯したいの?」

「うん、犯したい。今度はアナルが良いな。今日も掃除してくれたんでしょ?」

「……そういうこと、言わないでよぉ……っ」





 甘ったるい声で言いながら、愛が甘えるように自分の頬を彰浩の頬にすり寄せ、それから首筋に啄むような口付けをした。

完結まであと2話です!





『第21話 愛し、壊し、慈しみ合う。』





 うつ伏せになって枕に顔をうずめた愛の腰の上に跨ると、彰浩は躊躇うことなく尻肉を割り広げた。牡と牝の匂いが入り混じった卑猥な香りが鼻腔を貫き、肉竿の硬度が増す。





 アナルの脇に指を置いて押し広げると、元の大きさに戻ろうと妖しくひくつく。美味しそうに蠢く排泄孔の誘いに、彰浩はごくりと喉を鳴らした。





「……行くよ」





 躊躇うことなく亀頭を宛がい、短く言葉をかけて体重を一気にかける。ずぶりと肉茎が呑み込まれると、たっぷりとした量感の尻肉も相俟って彰浩の肉竿が全く見えなくなった。





「あふぁぁぁぁ……っ」





 枕を掴んで愛がぶるぶると震える。背中が波打ち、肉竿を引きちぎらんばかりに絞め付けてくる。快感から逃れようと腰を引けば彰浩が追うように腰を突き出し、愛はその度に悩ましく呻いた。





 ずちゅ、じゅぐっと卑猥な音が室内に響く。ずっと独り暮らしをしていた部屋に、愛おしい人の嬌声が少しずつ染み込んで馴染んでいく気がして、彰浩の心の内にたまらない幸福感が湧き上がる。





「んふぅぅ……ふっ、んぐぅぅ……っ」





 膣に比べるとアナルによる性交に未だ慣れないのか、愛は枕に顔をうずめてぶるぶると震え、艶めかしい背中にじっとりと脂汗を浮かべている。





 尻肉をかき分けて結合部を見ながら抽送すると、肉茎を引き抜くときにアナルがめくれて、肉竿を離すまいとするのが恐ろしいほどにいやらしい。





「愛さん。アナルってどんな感じなの? 入れるときと抜くときってどっちが気持ち良い?」





 ゆっくりと肉竿を出し入れして菊孔の中を楽しみながら、彰浩は身を屈めて愛の耳元で囁いた。





「へぁぁ……っ? ん……入ってくるときは、前の穴よりも中をごりごりと分け入ってくる感覚がすごくて、怖いけどそれ以上に気持ち……んん……っ、……良い、かな。それで……はぅぅっ、抜くときは……なんだか用を足してるときみたいで……すごく、あふぁぁ……っ、ぞくぞく、して、んぐぅっ、気持ち……良い……っ」

「……へえ、そうなんだ」





 愛が悶えながらもきちんと答えたことにより、彰浩の嗜虐心が野火のように燃え広がった。





「じゃあ、こうするとどうなる?」





 彰浩が悪戯っぽく囁いて、力任せに肉槍を根本までねじ込んだ。





「おぐぅ……っ」





どずんっ、と重苦しい衝撃が愛の身体を貫き、まともな体機能が失われたかのようにぶるぶると震える。





「あ……ぐぅ……はぐぅっ!?」





 愛の腰を手で押さえ付けて、彰浩が抽送を開始する。先程までと違って優しさはなく、獣のように一心不乱に腰を振る。





「ひっ、はぐぅっ! だ、めぇ……お尻、きつすぎて……あぐぅっ! ひぎっ、はぁうぅぅぅっ!」





 愛が後ろに手を伸ばして必死に彰浩を止めようとするが、彰浩は愛の両手首を掴むと、まるで手綱のように引っ張って愛の顔を枕から浮き上がらせた。





「あぁぁぁっ! いっ、ひぃぃっ!! だめっ、死ぬ、死んじゃうぅっ!!」





 鐘をつくように重く肉槍を突き入れ、抜くときはぐりぐりと腰を回し腸内を抉る。愛が叫び声のような嬌声を上げる度に、アナルにはぬるりとした腸液が溢れ、膣口からは白く濁った愛液がこぷりと零れた。





「うぐ……愛さん、締めつけやばいよ……ほら、行くよ、出すよ? ほら、ほら、ほら……っ」

「ひぎぃっ、いっ、やめっ、だめっ、今出されたら絶対やばいから、だめ、おねがいまってまってまって……っ!!」





 愛が必死で首をぶんぶんと振るが、愛の抵抗が強まれば強まるほど彰浩の嗜虐心は鋭利に尖っていく。





「だめ、出すよ。愛さんのアナルにいっぱい精子出すから」

「ひぃぃっ!! まって、今出されたら、わたしのお尻、彰浩くんのおちんちんの大きさのまま戻らなくなっちゃうぅ……んくぅぅぅっ!!」





 悲鳴じみた嬌声を獣のように上げながら、愛は気が付けば尻を突きだし、上半身を浮かせて彰浩が突きやすいよう腰の角度を調節していた。本能のままにやっているとしたら淫乱にも程があるだろう……と彰浩は口内に溢れた唾液をごくりと飲み込む。





「ああ、それいいね、漏れちゃうなら常にアナルプラグを挿れておけばいいんだし」

「だめぇ……そんなの、どこも歩けなくなっちゃうぅ……あがぁっ!? ひっ、うくぅぅっ!!」

「そうだね、それなら在宅で仕事探そっか。それならいつでもハメられるでしょ?」

「そんな……簡単に……あぐぅぅっ! ひぃっ、ひぃぃっ!!」

「……俺は、愛さんを毎日犯すためなら何でもするよ」

「……っ」





 愛がこくりと喉を鳴らす音が聞こえ、抵抗の声が止んだ。





「……して……っ」

「……今、何て言ったの?」





 愛がゆっくりと振り向く。涙と涎で顔がぐしゃぐしゃになっているのに、どこまでも美しく卑猥な表情だった。





「……出して。わたしのお尻の穴に、彰浩くんの精子、いっぱい出して……っ! 口も、前の穴も、お尻の穴も、全部彰浩くんのおちんちん専用にして……っ!」

「――――――――っ」





 彰浩の理性が飛ぶ。

 絶頂を飛び越えた絶頂に向かうように、狂ったように腰を振り立てる。





「あぁぁぁっ!! あぁぁぁぁぁっ!!」





 愛は泣きながら、喜悦に染まった獣声を上げる。おとがいを上げて鳴く様は遠吠えをする狼のようでもあった。





「出すよ、出す、出す、愛さんの中に出すよ……っ!」

「出して、彰浩くん、出して、出して、出して……あぁぁっ、イク、わたしもイクイクイクイクイクイクイクイクぅぅ……っ!」

『―――――――――――――――っ』





 二人が目を瞬き、視界が白く爆ぜる。





「ぐぅ……っ」

「あが……っ」





 理性を削り取られ、恋慕と本能に埋め尽くされた声を二人が漏らし、どちらがどちらの声なのかさえ判別が付かない。

 獣欲のマグマの奔流が、彰浩の尿道を突き破らんばかりに駆け上る。





「あっ――――」





 愛の表情が、一瞬、ほんの一瞬だけ、凪いだように和らいだ。





 次の瞬間――





「――――あぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁっ!!」





 亀頭が膨れ上がり、爆発するように溢れ出した白濁。

 愛の身体が壊れた。





「ぐぅぅぅ……ぐぅぅぅぅ……っ!!」





 あまりの快感の奔流に苦悶を浮かべる彰浩の肉竿が脈動する度に、愛は狂ったように尻を打ち付け、ぐりぐりと悩ましく腰を振る。万力のような圧力に緩急が生まれ、彰浩は射精しながら気絶しそうなほどの快楽の波に脳内を犯された。





「おぉぉぉ……おぉぉぉ……っ」





 愛の手が彰浩の手を強く握り、絶頂の余韻に浸る。二人の痙攣が互いに伝播して、射精が終わっても二人はしばらくの間ぶるぶると震えていた。





「……愛さん、取り敢えず明日以降のことは明日考えよう。今日のところは……」





 肉竿を引き抜き、脱力しきって愛と添い寝をした彰浩が囁くと、愛は彰浩に身体を寄せてにこりと微笑んだ。





「……うん、そうだね。今日は……もうちょっと、しよう?」

「……ちょっと休んでからでいい?」

「ふふ……うん、わたしも腰が抜けちゃったから、それでいいよ」





 楽しそうに言いながら、愛は柔らかくなった肉竿をふにふにと触る。むずがゆい快感に浸りながら、彰浩は愛に腕枕をしてそっと抱き寄せた。

次が最終話です!





最終話です。あとがきで挨拶と宣伝をしておりますのでぜひ(^^)!





『最終話 月明かりの下で二人は微笑む。』





 三ヶ月後。とある日の夜。





 彰浩は、愛と出会った公園のベンチで休んでいた。夏が去りかけてもまだ夜は暑いが、公園は緑が多いためか会社のある場所よりも幾分涼しい。





「……ん……っ?」

「お疲れさま、彰浩くん」





 頬に冷たい感触がして振り向くと、愛が缶の飲み物を彰浩に当てて悪戯っぽく微笑んでいた。





「そっちもお疲れ、愛さん」





 答えながら彰浩が缶を受け取ると、愛は彰浩の隣に座る。

 風が吹き抜けた。

 静かに木々が鳴いて、二人は目を細める。





「そっちはどうだった? 愛さん」

「うん、ねちねち言われるかと思ったけど……割となんとかなったよ。というかもう、あんな人たちはどうでも良いなって思っちゃったから気にすることも忘れてたかな。彰浩くんは?」

「うん、俺も割とあっさりしてたよ……」





 短い報告を交わし合って、二人は缶を開ける。愛の飲み物はシンプルな炭酸で、彰浩はカフェオレ。汗をかいたときには炭酸を、甘いものがとりたい時は飲み物から……ということで、互いの好みを把握していた。彰浩が買ったとしても同じものになっているくらいには、二人は互いを知っている。





 それでも、まだ、きっと飲み物や食べ物の好みと――身体のことしか、知らない。

 だから、二人は互いをもっと知りたいと思った。





 二人は三ヶ月前の月曜日、それぞれの会社に辞職届を出した。きっちり三ヶ月後に辞めると告げて、上司や周りに何を言われようとも粛々と引き継ぎをした。





 そうして今、二人はそれぞれの送別会を終え、二次会まで参加し、歩きたい気分だからと言ってこの公園に来ていた。





 初めて出会った時は、彰浩も、愛も、陰鬱として先の見えない疲労に塗れていた。

 けれど今は、疲れてはいるけれど、二人とも清々しい表情をしていた。





「明日さ、引っ越す場所を見に行こうよ。今までは忙しかったし」

「そうだね……でも、引越しはゆっくりでいいよ?」

「え、いいの?」

「うん、その……お互いの家を行き来する関係、っていうのを夢見てたとこもあるから……」

「……愛さん、可愛い」

「ちょ、ちょっと、急に言わないで……っ」





 月明かりに照らされた愛の顔が、恥ずかしそうに逸らされた。彰浩は小さく笑って空を見上げる。強めの風が吹いて、彰浩の短い髪と愛の少し伸びた髪を揺らした。





「……愛さん」

「ん、なあに?」





 彰浩はそれ以上言葉を続けず、そっと愛の太ももを撫でる。愛の声が一瞬で蕩けた牝のものに変わった。





「彰浩くん、これは何でしょう?」

「え? 何……が……っ」





 愛がからかうような口調でバッグを開けると、ビニール袋が入っていた。中にあるものはどこか見覚えがあり、彰浩は目を凝らす。





「……下着? しかも上下?」

「正解。……彰浩くん」





 愛が彰浩の前に立ち、蠱惑的に微笑む。胸元に手を伸ばすと、出会った時よりも大きく張り詰めた乳房を閉じ込めているブラウスのボタンを、ゆっくりと外し始めた。





 彰浩は月明かりに照らされた妖艶な脱衣を呼吸も忘れて見入る。乳房が外気に晒されると、乳頭は牡を待ちかねたように張り詰めていた。



 彰浩が見惚れている内に、愛はタイトスカートをたくし上げると同時に足を開く。恥裂は既にぐっしょりと濡れそぼって、陰毛が大陰唇に貼り付いていた。





「ここで……しよっか」





 愛が小首を傾げて、うっすらと微笑む。月明かりに照らされて影のある顔が、人間離れした魅力を放っていた。





「……ああ」





彰浩はごくりと喉を鳴らし、上ずった声で返事をする。





「喜んで」

「……やった」





 愛が不意に子供っぽく笑い、彰浩が悶絶する。今のは反則だろう……と、思わず赤面した顔を手で覆った。





 愛が彰浩のチャックを下ろし、パンツをずらしてそそり立った肉茎を外気に晒す。





「あは……わたし、声抑えられるかな?」

「大丈夫、俺が口を塞ぐから」





 彰浩の言葉にぶるりと震えながら、愛はパンプスを脱いでベンチに上がる。彰浩の肩に手を置いて、脚をМ字にしながら膣口に亀頭を宛がった。





「……それなら、めちゃくちゃにされても大丈夫だね」

「……うん、大丈夫」

「……彰浩くん。好き、大好き。愛してる。……今日も、わたしのこといっぱい可愛がってね?」

「……今日と言わず、これからもずっと可愛がるよ。愛さん、好きだ、大好きだ、……愛してる」





 愛の瞳が潤み、顔がそっと近付いてくる。唇が軽く触れ合うと、愛の腰が落ちて熱くぬめった蜜壺が肉槍を呑み込んだ。





「はぁぁぁ……っ」





 愛の表情が恍惚に染まる。

 彰浩は、様々な色を見せる愛の顔を、ずっと見ていたいと思った。





 終わり。

3週間弱と短い期間ではありましたが、如何でしたでしょうか。





仕事で疲れて、疲れて、疲れ果てた中にも何か救いは無いかな……と考えていた時に今作のアイディアが浮かび、書き上げました。全て書いた後に分割して投稿していたので、連載終了を惜しんでくださる声が上がった時は「もっと延ばせないか!?」とも思ったのですが、あまりだらだら延ばしてもな、と思い予定通り完結させました。





彰浩と愛は幸せになりました。これからも二人で寄り添い合い、幸せに暮らします。





ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました(^^)!!





〈宣伝〉

①二次創作から入ったタチでして、ライトノベル「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の二次創作「俺ガイル 日常の何気ないエロス。」という作品を投稿サイトハーメルンにてかれこれ2年ほど連載しています。よろしければぜひ。

②少し間を置いて、今度は一般向けの作品を小説家になろうで投稿します。それもおよそ1ヶ月間に渡って連載します。更にその後も既に書き溜めている作品(こちらはノクターン)が2つほどありますので、引き続きもりもり投稿していこうと思います。その際は今作品のあらすじの項目でも宣伝していこうと思います。





①・②ともに言えるのは、全て「平和・甘々・エロ」がという要素が含まれているということです。「襲われて始まる恋もある。」をご覧頂いてこの世界観が気に入って頂けたのであれば、きっと他の作品も楽しんで頂けるかと思います。





今後とも、よろしくお願い致します。





それでは最後にもう一度。





ここまで読んで頂き、本当に、ありがとうございました(^^)!!





襲われて始まる恋もある。


著者

高橋徹

小説ページ

https://ncode.syosetu.com/n7211dw/


初回配信日

2017/03/25

最終更新日

2017/04/13

保存日

2022/07/20






Posted by 하얀라임
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